二人(霊)組のフェニックス
俺とイヴマリアと長老様とラーシリアが妖精の森の入り口で世間話をしていた。
夕日が沈みかけて夜になりかけていた時だった。
「ん?・・・・・来る」
ラーシリアが東の空を向いてつぶやいた。
「来るって、ひょっとしてこの前みたくラーシリアの兄弟?」
「ああ、そうだ。どうやら今回は二霊らしい」
「二霊って・・・・二人で来てるって事?」
俺の左肩に乗っているイヴマリアが驚いて言った。
「ああ、そうだ。では行ってくる」
ラーシリアはそう言うと北の方向に飛び立って行った。
この前みたくフェニックス同士が戦い合っても妖精の森とかに被害が出ない土と岩がある所に行ったんだと思った。
「ミカネル、私達も行ってみようよ」
「うん」
俺とイヴマリアはラーシリアの後を追って行った。
やっぱりラーシリアはこの前と同じ所にいて、二人のフェニックスと空中で対峙していた。
日はもう完全に沈んでいて、三人のフェニックスの炎が煌々と輝いていた。
フェニックスは色んなタイプの色があるみたいだった。
この前のフェニックスは内炎は赤色、外炎は金色で、フェニックスと聞いて多くの人が思い浮かべる姿と色だったと思う。
でもラーシリアが内炎は灰色、外炎が銀色であるように、この二人のフェニックスも多くの人がイメージするフェニックス像とは違っていた。
一人は内炎が薄茶色、外炎が橙色の組み合わせのフェニックスで、もう一人は内炎が焦げ茶色、外炎が黄色のフェニックスだった。
この二人は尾が長く、しかも何本もあった。
内炎が薄茶色、外炎が橙色の組み合わせのフェニックスは細い尾が三本、内炎が焦げ茶色、外炎が黄色のフェニックスは中太の尾が五本あった。ラーシリアとこの前来た赤いフェニックスは鷹のような尾だった。
ラーシリアから聞いたんだけどフェニックスの決闘は夜に行われるんだそうだ。
太陽の光を浴びるとフェニックスは魔力や精気が回復する。銀炎の槍は無限に撃てるし、ダメージを受けても即座に回復する。フェニックス同士が昼間に決闘をしても勝負がつかないんだそうだ。
そういえばこの前来た赤いフェニックスも辺りが暗くなってからだった。
「おい、おまえ! オレたちは二人だぜ!」
「だぜ!」
薄茶色のフェニックスが言い、焦げ茶色のフェニックスが続いて言った。
二人は自信たっぷりの顔をしていた。
「ああ、そうだな」
「・・・・二人って事は、二人同時に攻撃出来るんだぜ?」
「だぜ!」
「そうだろうな」
二人のフェニックスは右の羽の先をすぼめてラーシリアを指したまま少しの間固まった。
どうもラーシリアのリアクションが想定外だったようだった。
「おい、あいつビビらねえぜ」
焦げ茶色のフェニックスが薄茶色のフェニックスを見て言った。
「いや、俺の読みだとあいつはビビってる。そうと思わせてねえだけだ」
「何でだ?」
「俺達をひるませたり、混乱させるためだ」
「ひるませる? 混乱?・・・・どういう意味だ?」
「・・・・後で説明するぜ。今は戦いに集中するんだ」
「おう、わかったぜ」
フェニックスはテレパシーを使って話しをする。
テレパシーは何も意識せずに使えば声と同じで周辺にいる全員に聞こえる。一対一というのは難しくはないけど意識しないと出来ないんだそうだ。
この二人のフェニックス達はどういうわけか全域に、それもかなり広範囲に聞こえるようにテレパシーを飛ばして話していた。
ラーシリアに話かける時はまだわかるけど、彼らが明らかに一対一で話すような内容でも広範囲でしていた。
だから俺たちや周りにいる動物にもさっきからすべて丸聞こえだった。
鳥やウサギなどの動物が何事かとびっくりしたり、不思議そうにフェニックス達を見上げていた。
音の感覚で例えると、この辺全体に響き渡る大声で会話している感じだった。
「おい、おまえ! 今から俺達と戦うぜ!」
薄茶色のフェニックスがラーシリアに右の羽を向けて言った。
「ああ、わかった」
ラーシリアが了承すると薄茶色のフェニックスはニヤリと笑った。
「よし! 作戦通りおまえは右から、俺は左からの挟み撃ちだ」
「おう!」
「・・・・いや、こっちは左だ。おまえは右の方に行くんだ」
「おう!」
何かよくわからないどこの二人はこの前来た赤いフェニックスと比べてずいぶん変わっていた。
でも二対一は卑怯だ。
俺はフェニクスリボルバー抜いて薄茶色のフェニックスに照準を合わせた。
フェニックスリボルバーはただの炎じゃない。ラーシリアの炎だ。だからフェニックスにも効くはずだった。
「ミカネル、大丈夫だ。手を出さないでくれ」
ラーシリアが視線を二人のフェニックスに向けたまま言った。
二人のように全域に渡ってのテレパシーではなく俺とイヴマリアに聞こえるテレパシーだった。
「でも・・・・」
「大丈夫だ」
ラーシリアがそう言ったので俺はフェニクスリボルバーをホルスターに戻した。
二人のフェニックスがラーシリアを真ん中にして両端についた。
「いくぜ!」
「オッシャ!」
二人が同時にラーシリアに羽で斬りかかった。
ラーシリアは上に飛んで、銀炎の爆破弾を投げた。
銀炎の爆破弾は薄茶色のフェニックスに当たると爆発した。
爆発は大きく焦げ茶色のフェニックスにもダメージを与えた。
二人は大きく弾け飛んだ。
二人共、目を大きく見開いてラーシリアを見上げた。
「おい! 何だ!? 今のは!?」
焦げ茶色のフェニックスが薄茶色のフェニックスに近づいて言った。
「わからねえ!」
銀炎の爆破弾は銀色の球状の炎だ。
銀炎の槍のような物を貫く力はないけど、物に当たると爆発する性質があった。
「でもビビる事はねえ! 飛び道具なら俺らにもあるよな! 今度は遠くからの同時攻撃だ! おまえは右に行け!」
「わかった!」
「だから、おまえはあっちだ。二人並んで撃つより離れて違う方向から撃った方がかわすのが難しいだろ?」
「おう! そうだな!」
二人がそれぞれの定位置に移動するまでラーシリアはその場を動かずに待っていた。
何だか楽しそうに見えた。
「おし! いいぞ! 準備OKだ!」
「オッシャー! 撃ちまくれ!」
二人はそれぞれ炎の弾をラーシリアに撃った。
炎の形はそれぞれ違っていて、薄茶色のフェニックスの炎の弾はナイフのような形で、焦げ茶色の炎の弾はスクリュー状だった。だが炎の色は内炎の色と同じだった。
それぞれの炎弾を双方から連発してラーシリアに浴びせた。
ラーシリアは、それらをすべてかわし、薄茶色のフェニックスに急接近して右肩から斜めに斬り、加勢しに来た焦げ茶色のフェニックスを振り向き様に胴を横に斬った。
二人のフェニックスは斬られてもすぐに回復した。
二人はダメージを受けるとそのたびに一旦距離をとり、また左右にわかれて遠距離や近距離攻撃で攻撃していたが、ラーシリアに一撃を加える事も出来なかった。
作戦は最初からだだ漏れだし、攻撃するタイミングまで言っているから、かわすのはそんなに難しくないみたいだった。炎弾撃つ時は必ず「そりゃ!」とか掛け声言ってから撃つしね。
「ク! 何でだ! 何で当たらねえんだ!」
薄茶色のフェニックスは当たらない原因が自分達にあると気づいていないようだった。
「こうなりゃ斬撃で勝負だ!」
薄茶色のフェニックスは意を決した表情でラーシリアに左右の羽で斬りかかった。
ラーシリアは薄茶色のフェニックスの斬撃をすべてかわし、薄茶色のフェニックスの右羽と下半身を斬った。
「クソ! ダメだあああ!」
薄茶色のフェニックスは地面に落ちて行った。
「ハアアアア!」
焦げ茶色のフェニックスもラーシリアに羽で斬りかかったけど逆に左羽と胴から下が斬られて、苦悶の表情を浮かべて地面に落ちて行った。
ラーシリアは狙ったわけではないと思うけど、薄茶色のフェニックスの近くに焦げ茶色のフェニックスが落ちて、二人は横に並んで仰向けになっていた。
二人がラーシリアから斬られた部分は再生しなかった。
「終ったな」
薄茶色のフェニックスが空を見上げたまま言った。
「ああ」
焦げ茶色のフェニックスも空を見上げたまま言った。
「・・・・あんなに作戦考えたのにな・・・・あんなに練習したのにな・・・・どれもダメだったな・・・・全部無駄だったぜ・・・・」
薄茶色のフェニックスが遠い目をして言った。
「・・・・・・・・・確かにうまくいかなかったけどよ、無駄じゃねえよ。お前の作戦じゃなきゃ俺もっと簡単にやられてた。お前の作戦があったからまだ戦えたんだ・・・・そんな事よりよ! 何だか良い気分だ!」
「はあ? お前何言ってんだ?」
「あいつに勝てなかったけどよ! 俺は思いっきりやった! だから良い気分だ!」
焦げ茶色のフェニックスはすっきりした顔をしていた。
「・・・・そうだな・・・・俺ら全力でやったよな、全部出し切ったよな! ・・・・あちこち痛えけど、悪い気分じゃねえな!」
二人は顔を見合わせると、
「「ハハハハ!」」
と笑い合った。
彼らは知っていた。
フェニックスがフェニックスに敗れたらどうなるか、という事を。
彼らは死を覚悟していた。
その覚悟で戦っていた。
彼らは賢い方ではないのだと思う。
でも真剣だった。
真剣にラーシリアにどうやって勝てるかを考えていた。
作戦はうまくいかなかったけど、それでも動けなくなるまで頑張った。最後の最後まであきらめなかった。彼らなりに出来る事をすべてやったのだった。
ラーシリアは彼らに背を向けたまま動かなかった。
ラーシリアは、この前の赤いフェニックスの時のように命を奪うつもりはないようだった。
俺にはラーシリアが何を考えているのか何となくわかった。
ラーシリアは二人にどう接したら良いかわからないのだと思う。
この前に来た赤いフェニックスはラーシリアにどこか似てた。だから何となくこう言えばこう返ってくるっていうのがわかったんだと思う。でも彼らは性格がまるで違っていたからどう接したら良いかわからなかったんだ。
彼らにもプライドはある。
命をかけて戦いを挑んだんだ。
君らの命を奪う事に興味はないとは言えなかった。
彼らは気づいていないようだけど、ラーシリアはちょっとずつ彼らから離れて行っていた。
二人はしばらく空を眺めていたけどさすがにおかしいと思ったようだった。
「おい、アイツずっと向こう見てるぜ」
薄茶色のフェニックスが言った。
「そうだな」
「・・・・・・・オレの読みだと、アイツ俺達が死んでると思ってるんじゃねえか?」
そうじゃないけど、そっちの方向で合ってるよ。
「マジか?・・・・・・いや、これだけ長い事後ろ向いたままって事はきっとそうだぜ! 俺達の事死んだと思ってるぜ!」
さっきからずっとだけど、彼らは二人だけで話しているつもりだけど、この周辺一帯にテレパシーを飛ばしているから、俺にも聞こえていたし当然ラーシリアにも聞こえていた。
「・・・・今なら脱出できんじゃねえか?」
「・・・・・・・いけそうだな!」
脱出って、誰も君達を捕らえてないよ。
「よし、三、二、一、の一で行くぞ!」
「わかった!」
タイミングは合わせなくて良いんだよ。
「三、二、一! それ今だ!」
一で脱出じゃなかったの?
「オッシャー! 脱出成功だぜ!」
「だな!」
二人はふらつきながら飛び立った。
速度も遅かった。真っすぐも飛べていなかった。
薄茶色のフェニックスは右の羽と下半身が、焦げ茶色のフェニックスは左の羽と下半身がなかった。これだけダメージを負っていたんだ、ちゃんと飛べなるわけがなかった。
薄茶色のフェニックスが言った。
「今思いついたんだけどよ、次はもう一人加えてよ、三人で戦うんだ。でもそいつを最初はアイツの後ろの、遠くに潜ませておくんだ。で、正面からは俺ら二人だけと思わせておいて、後ろからアイツを攻撃させるってのはどうだ?」
「おまえやっぱ、超~~頭良いな!」
「だろ! 絶対うまくいくぜ!」
何度も言うけど二人のやりとりはこの辺にいる全員に聞こえていた。
「そういやこの前、海の近くで会った奴いたよな? あいつまだあの辺にいるかな?」
焦げ茶色のフェニックスが言った。
「奴はダメだ・・・」
「何でだ? あいつ中々強そうだったぜ」
「お前あいつに何て言われたのか忘れたのかよ?」
「え? ああ・・・覚えてねえな。何て言ってたんだっけ?」
「お前らみたいなバカ共と組むわけねえだろって言ってたじゃねえか」
「ああ! 思い出した! 言ってた! あいつ言ってた! ・・・・ムカつくな! あいつ!」
「だろ? 違う奴探そうぜ! とにかく三人目だ! 三人目さえいれば絶対うまくいくんだ!」
「だな!」
彼らはずっと大きな声で喋りながら遠ざかって行った。
「あの人達、また来るね」
俺の右肩に乗っているイヴマリアが呆れ顔で言った。
「そうだな。賑やかな奴らだ。フフ・・・」
ラーシリアが楽しそうに言った。




