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石像ロボットとの戦闘

 古城の一階の奥の両壁には全長三メートルほどの石像が左右に二体、奥に一体、計五体あった。

 その石像が動くとはミカネル達は夢にも思っていなかった。

ラーシリア(ラーさん)! 早くぅぅ、早くこっちに来てぇぇ!」

ラーシリア(ラーさん)! 早くぅぅぅ!」

 私を呼ぶミカネルとイヴマリアの声が聞こえたが私がミカネル達のいる部屋に行く事は出来なかった。

 一階の入り口は狭く木製のドアで出来ていたし、吹き抜けの部分も私が余裕を持って通れるスペースはなく石と木材で出来ていた。

 木材に私が触れたら燃えしまうし、その火が屋上の鐘に移って燃えたら、この古城にいる妖精達だけでなくこの辺一体の生物が生き絶えてしまう。鐘がどのくらい燃えやすいかはわからないが、燃えたらとんでもない事になるのはわかっているのだから、どんなに小さな火の粉でも鐘に触れさせてはならなかった。

 私は一階まで飛んで行き、ミカネル達のいる部屋の前に降り立った。

「ミカネル、私はその扉や吹き抜けの部分が木で出来ているため入れない。屋上にある鐘に火が移ったらどうなるかわかるだろう? 何とかその部屋を脱出してこちらまで来てくれ。そうすれば後は私が戦う」

「それが難しいんだよ!」

 ミカネル達は入り口の反対側におり、入り口付近に石像ロボットの一体が陣取っていたのだ。

 この石像ロボットは賢く、一体は入り口から動こうとせず、他の四体がミカネル達を攻撃していた。

 ミカネルには新しいフェニックスリボルバーがあった。

 私の銀炎の槍はどんなものも貫く。

 そしてミカネルは射撃が正確だ。石像ロボットなどものともしないはずだった。だがこの石像ロボットはやっかいだった。

「ミカネル! 頭か胸を狙え!」

 吹き抜けの上から覗き込んでいるジンゴロが叫んだ。

「もう撃ったよ!」

 ミカネルは石像ロボットの頭や胸をフェニクスリボルバー(タイプⅡ)で撃ち抜いたが、石像ロボットは活動を停止しなかった。

「何で? 何で動き続けられるんだ?!」

 それ所か足を撃ち抜いても地面を這ってミカネル達に近づいてきた。

「キャアーーーーー!」

「気持ち悪いぃぃぃぃーーーーー!」

 ミカネルの左右の肩に乗っている、ホタルの悲鳴とイヴマリアの叫び声が聞こえた。

 両腕と片脚で地面を()って動く姿はゴキブリによく似ていた。そしてその動きに加えて石像ロボットの無表情さがホタルやイヴマリアを更に絶叫させた。

 ゴキブリはミカネルの前世の加藤頼路の時代よりもずっと以前から存在していたが、この時代にも存在していた。ミカネルの前世の時代では嫌われ者だったが、この時代でもやはり嫌われ者だった。

「ミカネル! そのロボットは背中が線みたいなものでつながってるか? こっからじゃ見えない!」

 ジンゴロが言った。

「つながってないよ!」

「背中に何か背負(しょ)ってるか?」

「背負ってないよ!」

「それなら、とにかく胴体を狙え! ロボットなら必ず動力があるはずだ! スペース的に胸か腹のどっちかにあるはずだ!」

「わかった!」

 ミカネルはゴキブリのような動きの石像ロボットから後ろに飛んで距離を取った。

 別の石像ロボットが這っている石像ロボットを追い抜いて、剣を振りかざして来た。

 ミカネルはさっき石像ロボットの胸の真ん中に撃った。それでも止まらなかった。右胸に紋章があったのでその紋章目掛けて撃った。突進は止まらなかったが、剣を持った右腕が振り上げたままになった。

 次に腹を撃った。

 そしたら足が動かなくなって突進が止まった。

 ジンゴロの指摘した通り石像ロボットの動力は胸にありそうだった。

 右胸や腹を撃って腕や脚が動かなくなったのは動力を伝える部分を撃ち抜いたからだろう。

 ミカネルは左胸を撃った。

 ロボットは動かなくなった。

「やっぱり胸に動力があるんだ。それがわかれば!」

 ミカネルはジャンプして、地面を()ってきたロボットの背中の左側を撃った。

 地面を這っていたロボットはそのまま動かなくなった。

 「ミカネル(ミカ)!」

 イヴマリアが叫んだ。

 別の石像ロボットが二体、左右から大剣を振りかざしてやってきた。

「大丈夫!」

 ミカネルは最初に右から来る石像ロボットの左胸を撃ち抜き、次に左からくる石像ロボットの左胸を撃ち抜いた。

 石像ロボットは大剣を振り上げたまま前のめり倒れた。

 左からくる石像ロボットを撃ち抜くのに時間が少しかかったのは、撃ち抜いた先に木の壁が見えたからだった。

 ミカネルは建物をフェニクスリボルバー(タイプⅡ)の火で燃やさないために撃ち抜いた先が石の壁になるように撃っていた。

 余裕があったからやれたのではなく、大惨事にさせないために必死でやっていたのだった。

 残りは一体。

 弱点はわかった。

 後は石の壁になった時を狙えば良いだけだった。

 ミカネルが出口を守るように残っていた最後の一体の方に目をやると、石像ロボットとミカネルの丁度真ん中くらいの位置に、ホタルが空中にたたずんでいた。

 ミカネルはホタルがイヴマリアのようにずっと自分の肩に乗っているものだと思っていたが、二体のロボットを相手に動きまわっている時に、置き去りにしてしまっていたようだった。

「ホタルさん! 早くこっちへ!」

 ホタルはミカネルを見つめたまま何も言わなかった。

 恐怖で顔が真っ青になっていて、全身を震わせていた。この状況が怖くて声も出ないようだった。

 出口を守っていた最後の石像ロボットがミカネルの方に向かって走り出した。

 もう出口を守る必要がないと判断したのだろう。ミカネル達を倒しにかかってきたのだ。

「ホタルさん! 逃げて!」

「ホタル! 逃げて! 早く!」

 ホタルは動けなかった。

 石像ロボットが突進してきていて、目は釘付けになっているがホタルは動けなかった。目に涙を浮かべて泣きそうになっていた。

 ミカネルはフェニクスリボルバー(タイプⅡ)を構えたが、ホタルが射線上にいて撃てなかった。

 ミカネルの前世の時代の銃の弾は鉛なので、ホタルに当たりさえしなければギリギリでも撃つ事が出来た。

 だがフェニックスリボルバーから放たれる銀炎の槍は、私の炎だ。

 直撃しなくても、ギリギリでなくても、熱のダメージを受ける。ホタルは花の妖精なので火に強くはなかった。

「ホタルさん! 下がって! 撃てないから!」

 だがホタルは恐怖で全身が硬直して動けなかった。

 花の妖精は半透明の羽を緊張させる事で飛ぶ事ができるそうだが、ホタルの体の緊張は羽をも緊張させていて、飛んでいる状態を維持させてしまっていた。

「ホタル! 逃げて! ホタル! 逃げて! イヤァァァァァー!」

 イヴマリアが叫んだ。

 その時、ミカネルの表情が変わった。

 いつもの温和な表情や少し自信なさげな表情ではなく、表情が顔からすべて消えた。だが目だけは石像ロボットだけを静かに見据えていた。人によっては冷たい表情にうつるかもしれない。

 私はこんなミカネルの顔を見た事がなかった。

 ミカネルは右に大きくステップして移動した。

 フェニクスリボルバー(タイプⅡ)の射線上からホタルを外す事と石像ロボットを自分に引き付けるためだった。。

 だがこの石像ロボットはミカネルの方向には来なかった。

 真っ直ぐホタルの方へ向かっていた。

 さっきイヴマリアが魔法で攻撃していたのでホタルも魔法を使えると思ったのだろう。

 ここにいるすべての生物を抹殺するつもりなのだ。

 この石像ロボットは賢く、弱点である左胸を左手に持っている盾で隠しながら突進していた。

 先ほどの戦いを見て学んだのだ。ミカネルは自分達の弱点を知っている。自分達を倒す武器を有している。

 この石像ロボットは他の石像ロボットと違い、体が少し大きく、頭と胸の一部が赤色で染められていた。リーダー格なのだろう。この石像ロボットだけ特別頭が良いのかもしれない。

 銀炎の槍はどんなものでも貫くが、石像ロボットの盾の耐久度がどのくらいかわからなかったし、弱点を狙っている事がわかっているから、かわされる事も予想された。左胸だけでなく足を狙ってもかわされるかもしれなかった。

 フェニクスリボルバー(タイプⅡ)の残弾は二発しかなかった。

 だがミカネルは動揺していなかった。

 ミカネルは石像ロボットの二歩先の石畳をフェニクスリボルバー(タイプⅡ)で撃って陥没させた。石像ロボットは自分への攻撃ではなかったので避ける素振りも見せなかった。

 だが陥没した床は丁度石像ロボットの左足が来る位置だった。

 石像ロボットは陥没した床を避けようとした。陥没した床に足を取られる事もなければ転ぶ事もなかったが、わずかに体勢を崩した。

 その時左胸を隠していた盾が一瞬下がって、左胸が見えた。

 ミカネルにはその一瞬で十分だった。

 フェニクスリボルバー(タイプⅡ)から放たれた銀炎の槍が、針の穴に糸を通すような正確さで、石像ロボットの左胸を貫いた。石像ロボットは銀炎の槍に気づいていたが態勢が崩れていたのでかわせなかった。

 石像ロボットはホタルの手前で、激しい音をたてて前のめりに倒れた。

 そして動かなくなった。

「ホタル!」

 イヴマリアがホタルに飛んで行って抱きしめた。

「怖かったね。怖かったね・・・・でも、もう大丈夫だよ」

 イヴマリアがホタルの髪をなでて言った。

「イヴさん・・・・」

 ホタルはホッとして泣いてしまった。

 その様子を見ていたミカネルの無機質な瞳に暖かな光が(とも)った。

 それが段々広がって行って、冷たかった表情が次第に緩んでいって、いつもの私達の知っているミカネルの顔になった。

「そうだ・・・・あの時の感覚だったんだ・・・・思い出したぞ」

 ミカネルはハッとした表情でつぶやいた。

 だがすぐに壁を見て、

「だあああああああああああああ!」

と叫んだ。

「な、何~! どうしたの!」

「は、柱に火が!」

 ミカネルの最後の一撃が木の柱をかすっていたようで、火がついていた。

 最後の一体は倒すのに夢中で後ろが完全に石の壁になるようには配慮できなかったようだ。

 ホタルの命が危険にさらされていたのだ。無理もないだろう。

「ヒバさ~~ん! ジンゴロさ~~~ん! 水の魔法が使える人ぉぉぉ! 早くぅぅ! 早く来てぇぇぇ!」

 水の魔法が使える妖精達とミカネルが消化活動を行った。

 火は大きくなかったのですぐ消えたが万が一という事もあるので周辺をかなり念入りに水の魔法を使って水で浸した。

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