タイプⅡ
「ほら、ミカネル。新しいフェニックスリボルバーだ」
「ありがとう、ジンゴロさん!」
ミカネルはジンゴロからフェニックスリボルバータイプⅡを受け取った。
フェニクスリボルバーは基本的な部分がタイプⅠよりもパワーアップしていた。
サイズが全体的に一周り大きくなっていて、銃本体は薄く黄色がかっていて、グリップは黒い木製になっていた。
火の特殊精霊のタキビの炎で鉄を鍛えたらこの色になったそうだ。
タキビの炎で鉄を鍛えたら銀炎の槍を入れられる容量が上がったのだそうだ。以前は六発までだったが、タイプⅡは倍の十二発、銀炎の槍を装填する事が出来た。
だがタイプⅡが最も改良された点は熱への耐熱性と安全面だった。
銃口が以前は真四角だったが今は六角形になっているのも熱への対策だ。
銀炎の槍がそもそも楕円形だったので、それに合わせたらこうなったそうだ。銃口を同じ形にする事で銃口と銃身への熱の負担が減った。
木製の黒いグリップは断熱性の強い木で手を熱から守るためだ。
しかし、それでも連続で撃てるのは八発までだった。残りの四発を撃つには銃本体を冷やさなくてはならなかった。
そのためにジンゴロが知恵を出したのがホルスターだった。
ミカネルの前世の加藤頼路の時代のホルスターは銃をしまう物でしかなかった。だがフェニクスリボルバーのホルスターは銃口をしまう部分に十センチくらいの金属の棒があって、その棒は冷たい金属で出来ていた。フェニクスリボルバーの銃口をそこに挿す事で銃口と銃身が冷やされて、次に撃てるようになるまでの時間を短縮出来た。撃つたびにホルスターにしまえば、連続でなければ十二発を短い間隔で撃つ事も出来た。
安全面はミカネルがジンゴロに注文したものだった。
トリガーガードがついた。
トリガーガードとはトリガーを囲う部分の物で、銃の暴発を防ぐためのものだ。ミカネルはショルダーバックにフェニックスリボルバーを入れており、バッグの中にある何かがトリガーに引っかかって暴発する危険があった。銃口がミカネルを向いていたらミカネルはこの世を去っていた。以前は何も考えずに走ったり飛び跳ねたりしていて、今思うとぞっとするとミカネルが言っていた。
フェニックスリボルバーを使わない時に引き金を引けないように安全装置を付けてくれるようにも頼んでいた。
安全装置は頼路の時代にあったのと同じもので、銃のハンマー側にある小さなレバー状のものだ。それを上にする事でフェニクスリボルバー内部でロックがかかり引き金が引けない仕組みだ。ちなみにフェニクスリボルバーにはハンマーはない。この位置にレバーがあるのは親指で安全装置を操作しやすいからだ。
タイプⅠではトリガーから銃口に伸びた部分がむき出しだったが銃身の中に格納された。これも暴発を防ぐための工夫だった。
そして最後は照準器だ。
ミカネルはフェニックスリボルバーを横に倒して、拳の人差し指と中指の間から狙いをつけていたが、銃口と距離があったためそのズレを計算して撃つ必要があった。
前世の時代の銃がフロントサイトとリアサイトを組み合わせて狙いを定めたように、フェニックスリボルバーにも二つのサイトをつけた。
だが付ける位置と関係がミカネルの注文で逆になっていた。
前世の時代の銃は、銃を構えた時上にくるようにサイトがつけられていたが、ミカネルはフェニックスリボルバーを横に倒すため横にサイトが付けられた。フロントサイトの形はざっくりいうと凸型で、リアサイトは凹型と言えた。凹型の真ん中に凸型が来るようにして照準を合わせた。
だがフェニックスリボルバーはフロントサイトが凹型でリアサイトが凸型だった。凹型は大きめに作られているのはミカネルが、標的がサイトで隠れるのが嫌だったからだ。
銃口の反対側もサイトをつけられている。いざという時のためなのだそうだ。前世の時代の銃と違ってフェニックスリボルバーは撃った時の反動がないため片手で撃てたし、左手でも撃つ事はそんなに難しくなかった。
このためフェニクスリボルバーの銃口は、外側は四角で左右にサイトが掘られているが、中は六角形という奇妙な形をしていた。
フェニクスリボルバーに若干の使用感があるのは、ジンゴロが何度か使用したからだった。
東の妖精の森に来るまでに何度か魔物と遭遇し戦闘になった。
「助太刀するぞ! ラーシリア!」
ジンゴロが私の後方から援護射撃をしてくれたのだが、一発も当たる事はなかった。
「おかしいな・・・・ミカネルは簡単に当ててたのに・・・・」
「落ち込む事はないさ。ミカネルはミュアルの森で魔法を一番当てるのがうまいんだ」
とヒバが誇らしげに言っていた。
ミカネルはフェニクスリボルバーを収めたホルスターに太い紐を通し、腰に巻いた。
私達は集まった妖精達と古城に向かった。
妖精の森からはヒバを中心とした十四人の木の妖精とミカネル、妖精の岩山からジンゴロを中心とした十人の木の妖精、東の妖精の森から十七人の木の妖精、計四十二人だった。
ミカネル達が事前にスロータイガーと鐘を下ろす計画について話をしていた。
スロータイガーは縄張りを何度も往復されたくなかったので、古城の上で組み立てて使う資材を縄張り内だけだがすべて運んでくれた。
スロータイガーの縄張り内を通る時は、左端を妖精達が一人ずつ、間隔をあけて通った。
「おお・・・ これが城か・・・・」
今いるほとんどの妖精は城というものを見た事すらなかった。
だから扉や階段などにいちいち感心し、意味もなく古城の壁や柱をペタペタと触った。
ジンゴロは好奇心が旺盛なので妖精の岩山を出かけていて、遠くから人間の作った城も見た事はあった。だが中に入ったのは初めてだった。しかしジンゴロは技術者なので、他の妖精たちのように意味なく壁に触る事はなく、扉の形や建物の構造を観察していた。何かに納得してうなずいていたり、頭をひねったりしてブツブツと一人ごとを呟いていた。
そしてさすがはジンゴロで、古城の構造から作業を短縮させる方法を思いついた。
鐘を移動させる資材をみんなで階段で屋上まで運ぶのは時間がかかるので、滑車とロープで吊り上げて一階から四階までまとめて運ぶ事を提案した。
古城の一階の奥の部屋は四階まで吹き抜けになっていて、三階以上の廊下とつながっていた。
恐らく古城の主であった鴉人が三階以上の床や壁などを作る時や、部屋に家具や道具を入れる時に利用したのだろう。滑車はなかったが滑車を吊せるものもが吹き抜けの天井にあった事からそう推察した。
だがこの部屋は入り口が狭く、またドアが木造だったため私は入る事は出来なかった。
出来る事もなかったので私は屋上に行き、皆の作業を見学する事にした。
ジンゴロ達が滑車をセットした。
太いロープを下に垂らし、ミカネル達が資材にロープで固定して合図し、ジンゴロ達が引き上げた。四階に引き上げた資材を他の妖精達が屋上まで運んだ。それを繰り返した。
資材のほとんどを上にあげて、後は一回分だけとなったので、ミカネルだけが残って、ヒバたちは屋上の応援に上がった。
上で資材を引き上げている妖精達は全員で引き上げているわけではなく、交代で行っていた。資材を持っての階段の上り下りは中々に重労働だ。
休憩していた妖精の森の妖精達は屋上のすぐ下のフロアを見学していた。
その内の一人が鐘のコントロールルームに入った。
鐘をコントロールするレバーの反対側の壁に、赤いボタンとその横に注意書きのプレートがあった。
レバーは壊れているとジンゴロが言っていたので、このボタンも壊れているのだろうと思い、ちょっとした興味でボタンを押した。
この妖精の森の木の妖精の若者は人間の字が読めなかった。読めていたら壊れているかもと思っていても押さなかったはずだ。
ドン! ガン! ドン!
という古城全体が少しきしむほどの大きな音が下の階からした。
「え?」
「今のって?」
ボタンを押した木の妖精の若者ともう一人の木の妖精の若者が顔を見合わせた。
このボタンは死んでいなかった。
ドス! ドス! ドス! ドス!という大きな音が立て続けにしてそれと同時に、
「「わあーーーーー!」」
「キャァァ・・・・」
ミカネルとイヴマリアの驚愕の声とホタルの控えめな悲鳴が下から聞こえてきた。
ボタンのプレートの注意書きには、
[万が一、敵に城の門を突破された場合、一階にある石像のロボットをこのボタンを押して起動せよ]
と書かれてあった。




