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戦闘に長けた者

 私はリョウザを見下ろして言った。

「ここの住人達に手荒な真似をするというのなら、私が相手になろう」

「火の鳥・・・・貴様、フェニックスか?」

「そうだ」

「フェニックスは赤や橙色の炎の鳥をイメージしていたが?」

「灰色もいるのだ」

「そのようだな・・・・だが私の邪魔をするなら消えてもらうまでだ」

 そういうとリョウザは背中から剣と棒を取り出した。

 剣と棒を組み合わせて槍のような武器に変えて私に斬りかかってきた。剣は私を縦に通過しただけで私にダメージを与える事は出来なかった。

 リョウザは攻撃に手ごたえのなかった事に驚いていなかった。恐らく効かない事を確かめるためにやったのだろう。

 私は銀炎の槍を撃った。

 それをリョウザはかわした。

「ほう・・・・」

 これだけの至近距離で撃ったのにかわされたのは初めての事だった。

 さっき斬りかかって来た時、私の高さまでの飛んで来たのだが、その跳躍力と速さも尋常ではなかった。

 リョウザは、服装は人間の一般的な男性とは毛色が違うが、戦闘に長けた者であるようだった。

 リョウザは剣を地面に刺し、「ハっ!」と気合を込めると背中から蝙蝠のような羽が広がった。

「獣人!?」

 ミカネルが驚いて言った。

 三万年前に隕石が落ちた後、その時地球にいた者の魔力が上がり、その後独自の進化を遂げた。突然変異が各地で起こり、その中には獣に姿を変える事が出来る人間も生まれたそうだ。

 リョウザは獣人だった。

 リョウザは羽ばたいて上空に上がり、私の高さまで来ると、氷の魔法を私に放った。

 大小複数の氷が飛んできた。小さな氷は溶け、大きめな氷は私を貫通していった。

 私にダメージはなかった。単なる氷や水、それらの魔法では私にダメージを与える事は出来なかった。

 己の攻撃が効いていなかったがリョウザは動揺していなかった。彼はメンタルも強靭なようだった。

 リョウザは上位の魔法を使ってきた。

 長さ五メートル、厚さ五十センチほどの巨大な槍の形をした氷の塊を両手から作り出すと、私に勢いよく放った。

 氷の塊の表面が溶け、残った部分は私の体の真ん中を貫通していった。やはり私にダメージはなかった。

「リョウザ! 何を遊んでいるの! 着替えを持ってきているのでしょう? 早く片付けなさい!」

「ハ! わかりました! ゼシル様!・・・・というわけで、お遊びはここまでだフェニックス!」

 リョウザの全身に無数の血管が走った。

 それと同時に顔や体が急激に膨らんで、服が破れて飛び散った。羽は更に大きくなり、尻尾も生え、頭から角も出てきた。

 リョウザは青い竜になった。

 人の姿から獣に姿を変える獣人。その中でも最強と一つと言われるのが竜に姿を変える竜人なのだそうだ。

 竜人は火、水、雷などの魔法や攻撃を得意とする者がいるそうだが、さっきの氷の魔法から、リョウザは氷を得意とする竜人のようだった。

 炎のフェニックスの私と氷の竜のリョウザ、一般的に考えれば炎と氷はお互いの攻撃が弱点になる。この場合優劣を決めるのはレベルの高い方だ。フェニックスの私を見てもリョウザが怯まなかったのは、己の力に自信があるからだろう。

 リョウザは口から氷波を私に浴びせた。

 さっきの氷の魔法とは比較にならない威力と強い冷気だった。氷の粒が砂のようにとても小さいがとてつもなく固く、その上衝撃もすさまじく私の付近にあった岩にも無数の穴が開いていた。

 私の体を単に通過する事はなく、氷の砂粒同士が固まり留まって私の炎を冷やした。氷波の範囲は広く、細かな氷の粒は私の身体をすべて覆っていた。

 だが私には効かなかった。

 私は体温を上げた。私の体は銀色に輝きだし、体の周りにまとわりついていた氷の砂粒の塊を一瞬で溶かした。溶けた氷はたちまち水蒸気になった。

 一般的な火の特殊精霊なら、今の攻撃で凍り付いてしまうだろう。だが地球上で一番寒いと言われるマイナス100℃の南極でも活動可能な我々フェニックスには効かなかった。

 竜になったリョウザが驚愕の表情を浮かべていた。

 私が氷漬けになると思っていたのだろう。今の攻撃には相当に自信があったようだった。

「フェニックスを傷つけられるのはフェニックスだけだ」

 銀炎の槍は三段階に威力を上げる事が出来る。

 普段使っているのは一段階目のものでミカネルが持つフェニックスリボルバーに入れているのもこの段階のものだ。段階を一つ上げると威力と速度と射程が飛躍的に増す。ミカネルとジンゴロはレベル一と呼んでいた。

 先ほど銀炎の槍レベル一をかわされたのでレベル二で撃ってみようと思った。ちなみに銀炎の槍の長さや横幅はどの段階でも長くも広くもする事が可能だ。ただしフェニックスリボルバーに入れる時は短く小さくする。そうしないとすぐにいっぱいになってしまうのだ。

 私が反撃しようとした時、「ヒィィィイヤァァァ!」という甲高い悲鳴が向こうから聞こえてきた。

「ム、虫ィィィィ! ムカデェェ! イヤァァァァ!」

 どうも魔法水晶(メラクル)の隠れていた所にムカデが出たらしかった。

 魔法水晶(メラクル)はムカデが嫌いだった。ムカデから逃れるために、岩陰から自ら出てきてしまった。

「それが魔法水晶?」

 ゼシルが目を丸くして言った。

「はい、ゼシル様。あれが魔法水晶です」

 近くにいたゴシックロリータの女子が答えた。

「・・・・もっと綺麗だと思ってた・・・・何か喋るし・・・声高いし・・・キモい・・・・私それいらない」

 ゼシルは魔法水晶に一気に興味を失ったようだった。

「・・・・リョウザ、皆さん、帰りましょう・・・・もうここには用はないわ」

 ゼシルは非常にガッカリした表情で言った。

「・・・・という事だ、フェニックス・・・・私はここで退かせてもらうぞ」

 リョウザは竜の姿になっても喋る事が出来るようだった。

「結構だ。私は去る者に攻撃はしない」

 ゼシルが肩を落として帰って行った。

 ゴシックロリータ女子達の半数ほどがゼシルに付き従って去って行った。もう半数のゴシックロリータ女子達は日傘を自分の手前にさしながらそれぞれがくっついて円陣を作った。その真ん中にリョウザが青い竜から人間の姿に戻りながら地面に降り立った。

 リョウザの足元にはゴシックロリータの服が置かれてあった。ゴシックロリータの女子の一人が円陣を作っている時に用意したものだった。

 リョウザは服を着だした。

 ゴシックロリータ女子達はリョウザを見ないようにしているが、何をしているからはわかっている為ほんのりと頬を染めていた。

「おい! 着替え中だぞ! 今攻撃して来たらおまえら最低だからな!」

 リョウザが着替えながら言った。

 私は攻撃しないと言った。

 誰も攻撃などするはずが・・・・と思っていたらイヴマリアが魔法を撃つ体勢になっていて、ミカネルが()めさせようとしていた。

 火の魔法でリョウザのスカートの端に小さな火をつけて、リョウザをパニックにさせたいようだった。

「やめなよ、イヴマリア(師匠)。ダメだったら」

「ええ~? 何で~? 面白そうじゃない~」

 イヴマリアはいたずら者の顔で言った。

 リョウザはイヴマリアが魔法で攻撃しないか気になっていた為、ストッキングを穿()こうしているが中々足が入らなかった。

「本当、マジ戦えない状態の人に攻撃とか、ありえないからな! そんなのは卑怯者のする事だぞ!」

「そうだよ、イヴマリア(師匠)、卑怯だよ、やめようよ」

「いいの! 私、卑怯者になる!」

 イヴマリアは卑怯者という汚名を着てでもリョウザがパニックになる姿が見たいようだった。

 ミカネルはイヴマリアに魔法を使わせないように手を掴もうとしていて、イヴマリアは手を掴まれては振りほどいていた。

 二人がもみ合っている内にリョウザの着替えが終了した。

「ふぅー、危なかったぁ・・・・この服はピッタリしてるから動きづらいし着づらいんだよな」

「あぁ~あ~ 終っちゃった~」

 イヴマリアが残念そうに言った。

「引き上げよう」

 リョウザはゴシックロリータ女子達に帰るよ(うなが)した。

 最後尾だったリョウザが振り向いて言った。

「これは私の本来の姿ではないからな・・・・ゼシル様が今日は外を歩く時はゴシックロリータの服装の者としか歩きたくない気分だとおっしゃられたから仕方なくなんだ・・・・それから小さい者がいたずらをしないように止めてくれて礼を言う。ありがとう」

 最後はミカネルにだけ向けて言ったようだった。

 ミカネルは右手をあげて応えた。

 イヴマリアは魔法を撃とうとする構えしたがリョウザがにらんだのでミカネルの背中に隠れた。

 ゼシルの一団は去って行った。

 ゼシルとリョウザとはまた会う事になるのだが、この時ゼシル達は再会するとは微塵にも思っていなかっただろうし、私達も当然思っていなかった。

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