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星の灰に散る祈り

作者: イチジク


ChatGPT:

星の灰に散る祈り

硝煙の匂いが空を満たし、焼け焦げた大地には灰色の霧が揺らめいていた。

ここは大紅蓮帝国の首都〈紅焔くれは〉。

かつては生気に満ちていたこの街は、今や終焉の焔によって一瞬で焼き尽くされた廃墟と化している。

結城陽葵ゆうきは、瓦礫の間に膝をつき、焦がれた土に手を触れた。

歩兵として幾多の戦場を生き抜いたが、今日の惨状は彼の心を深く抉った。

幼い姪・美雪みゆきと妻の千鶴は、あの閃光の中で命を奪われた。


「これが平和への道なら、俺は何のために戦ったのか」

拳を強く握りしめ、陽葵は空を見上げた。


遠く離れたアルカディア連邦の都では、最高評議会議長エリス・マーデンが放送でこう語った。

「終焉の焔――これこそが戦争を終結へと導く光だ。犠牲は未来の礎に他ならない」


その言葉は冷たく響いた。

しかしここ〈紅焔〉の灰の中にいる者たちには、遥か遠い虚無の響きに過ぎなかった。


爆撃の瞬間、陽葵は地面に叩きつけられ、熱波に身を焦がされた。

目を開けると、燃え盛る瓦礫の山と消えた街が広がっていた。

彼は必死に姪の声を探し、震える手を伸ばした。


かすかな呼吸を感じ、冷たく震える小さな手を握りしめる。

「生きている……」

涙が頬を伝い、炎の残照に揺れた。


だが、その希望はすぐに砕かれた。

未来は燃え尽き、街も人も跡形もなく消え去ったのだ。


そんな時、アルカディアから来た一人の宣教師が陽葵の前に立った。

その眼差しは深い哀しみを湛えていた。


「私たちの正義は、本当に正しかったのでしょうか」

宣教師は静かに問いかけた。


陽葵は震える声で答えた。

「もし、それが正義ならば、僕たちは何度でも問い直さなければならない。

だが、それでも手を取り合い、未来を紡ぐしかない」


破壊の灰の中で、彼らは小さな祈りを紡いだ。

絶望の狭間で芽吹いた希望は、やがて新たな光となるだろう。

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