トンネルの向こうに出るらしいよ
※安心してください、コメディです
「ねえ、知ってた? あの山の右回りのルートにあるトンネル出るんだって」
マサキが話を始めた。
俺とサトルとハヤトはそろそろと近づいていく。
「本当かよ?」
「まじで出るの?」
「本物?」
上から俺、サトル、ハヤト。それを聞いたマサキは顔を近づけると声を落とした。
「間違いないらしいよ。見た人がいっぱいいるんだって」
俺たちは声を上げる。
「やばいじゃん」
「そんなに見てるの?」
「⋯⋯確かめに行くか?」
上から俺、サトル、ハヤト。
「行くか?」「行こうぜ」と話が盛り上がっていく。
そうと決まればこれから行こうと話が進んだ。そこで山のトンネルまでの道を確認し始める。
もう辺りはどっぷりと闇の中だ。やはり行くなら夜だろう。
俺たちは車に乗り込んだ。暗いのでヘッドライトを付けて走る。
段々とお店の明るい電気が減っていく。
民家が並んできた。お店が無くなると途端に道も暗くなる。
街灯だけがぽつぽつと道に生えている。
その間隔も広くなり山のグネグネとカーブの続く道へと入っていった。
「山道だな」
「ここからすぐなのか?」
「少し登ったところだと思う」
俺は楽しみだと思う気持ちに不安が入り混じった。
外を眺めている。道の外は木が立ち並び反対側にはアスファルトで覆われた壁が見える。
しばらく車を走らせていたが、やがて甲高い音を短く立てて車は止まった。
その50メートルほど行った先にトンネルが見えた。
「あのトンネルか」
「うわー雰囲気あるなぁ」
「やばいんじゃない?」
「出るかもな」
上から、ハヤト、サトル、俺、マサキ。
俺たちは変な興奮状態で浮足立ったテンションだった。
「出たら走って逃げるしか無いよな」
「俺、走るの自信ないな」
「いや、出たら戦えばいいんじゃないの?」
「無理だよ!」
そんな話をしているが、自然と小声になる。
トンネルの目の前までやってくると、街灯が眩しかった。真っすぐなトンネルは50メートルほどの距離があり、向こう側にも同じように街灯がついているようでトンネルの向こう側も明るくなっていた。
俺たちはトンネルの向こう側をじっと見た。
マサキが俺たちの方へ顔を向けて、「トンネル入るか?」と笑いながら提案してくる。
あっ⋯⋯トンネルの向こう側に⋯⋯
俺はトンネルの方を指で差した。するとマサキは笑顔を引きつらせてトンネルの方へと顔を戻す。
「見て⋯⋯トンネルの向こう側⋯⋯何か見える」
「⋯⋯うそだろ?」
俺たちはへっぴり腰になりながら恐る恐る見た。
トンネルの向こう側の端に人影が見えた。
暗くてよく見えない⋯⋯。
その人影は動いていく。
「本当に出た⋯⋯」
ゆっくりと動く人影に警戒しながら俺たちは見ている。
人影はちょうどトンネルの向こう側にある街灯に照らされ始めた。
俺たちは目を見開いた。
「あ⋯⋯あぁ⋯⋯」
「出た⋯⋯」
「怖すぎる⋯⋯」
「やばいよ⋯⋯」
その人影は街灯に完全に照らされた。
それを見た俺たちは悲鳴をあげながら走って逃げた。
「やばいってあれ」
「怖すぎだろ!」
「夢に出てくる!」
「うわぁあ、置いて行かないで!」
それは180センチはありそうな大きい体に、ピッチピチの魔法少女のようなコスチュームを着て、手には魔法のステッキを持ったおじさんが立っていた。
ある意味怖い話です(笑)
ベタな展開です。