ホラー映画
今日は、父さんが帰ってくる日だ。俺たちはお小遣いから、父さんの好きな唐揚げと、枝豆、辣韮と、あまり上手には作れなかったが・・・・・・。母さん特製のオムライスを作った。ちなみにお酒は、年齢が年齢なので買えなかった。「父さん、喜んでくれるといいな」「そうだね!!お兄ちゃんが私の好きなお菓子も自腹で買ってきてくれたなんて聞いたらどんな反応をするのかな♪」そう。今優夢がいった通り、俺は、なけなしの小遣いで優夢の好きなお菓子までかってあげたのだ。お陰さまで、俺の小遣いは底をつきたのだった・・・・・・。「にしても、お父さんが帰ってくるのって、いつぶり?」「お前の入学式とかじゃないか?」「じゃあ、早くも1ヶ月くらいは経っているのか」「それくらいになるな。見間違いかもしれないが、優夢少し大きくなったか?」「え、それって・・・。お兄ちゃん変態!!」「黙れ。ちげーよ。身長だよ」「あ、身長ね。まぁ確かに多少は目線が上がったような気がする」中学に上がってから1ヶ月ほどが経過した。多少優夢は身長が伸びているような気がした。「これで、お兄ちゃんも私を抱きやすくなったね♡」「頼むからそれはやめてくれ。気持ち悪い」「冷たいなぁー。私はいつでもばっちこいだよ!!」「行かねぇよ」「いつでも抱き枕にしてくれていいからね?」「しねーよ」と、そんな会話をしていると・・・。「ただいまー」「あ、お父さんだ!!」「やぁやぁ。元気にしてたかね?」「うん。特に変わったこともなく、元気に暮らしてたぞ」そうして、俺がソファに腰かけると・・・こつんと、優夢の頭が僕の肩に乗る。「ははっ。相変わらず仲がいいな」「迷惑してるっての」「まぁまぁ、そう冷たいことをいうな。他の家族を見ても、そんな兄に懐いてる妹なんか中々いないぞ?」「ましては美少女なんだよー??そんな可愛い妹が甘えているのに、そんなに嫌なの?」正直言ってしまえば、別にそれほど嫌というわけではない。学校では嫌だと思うが、家では別に誰かに見られているわけでもない。「まぁ、そんなことはおいておいて。だ。お前たち。いいか。聞いて驚くなよ」「う、うん」「なんとな・・・・・・。有給が、2日から3日になったぞ!!」「おぉー!!」「よかったな」「そこで考えたんだ。この3日間、ゆっくりして過ごすのも悪くない。が、折角だし、遊びに行きたいじゃないか」「俺は別になんでもいいがな」「お兄ちゃん連れないなぁ・・・・・・。私は遊びたい!!」「だろ?だから、スケジュールを立てた。まず、今日はいろんな所へ行って、明日は遊園地へ。最後は・・・。俺たちらしく、家でダラダラする。それでどうだ?」結局ダラダラするんだな。と、心の中でそんなことも思いつつ・・・。「俺はいいと思うぞ。それもそれで十分楽しいだろう」「私も大賛成!!」「っしゃ決まり!!ということで、まずは食事をしようか」そうして、俺たちは久しぶりに家族全員で食卓を囲むのであった。
その日の夜、俺がリビングでゆったりしていると・・・。「ねぇ。お兄ちゃん」「どうした?」「あ、あのさ・・・・・・。え、えっと・・・」と、優夢がもじもじしながら、やがてこんなことを言ってくる。「一緒に、ホラー映画を見ない?」「・・・・・・は?」忘れている人もいるだろうから、一応説明をいれておく。この少女、無叶優夢という女の子は、ホラーが大の苦手だ。そんな女の子が突然ホラー映画を見ないか。と、意味のわからなさすぎるお誘いをしてきた。「馬鹿なのか?」「いいじゃん!!もしかして、お兄ちゃんビビってるの!?」「いやびびるわけがないだろう」なぜなら、俺はホラーが大の得意なのだから。「いいから!!一緒に見よ!!」「やめといた方がいいって。どうせ怖いって言って、泣く羽目になるに違いない」「いいから!!見よ!!」とまぁ、結果はわかりきっている。さぁ、映画を見終わった後はというと・・・・・・。
「うぅぅ・・・」予想通り泣きながら俺に抱きついてきた。「だから見ない方がいいって言ったのに」「仕方ないじゃん。お兄ちゃんがいるから、怖くないと思ったの・・・」「ホラー映画には変わりねぇんだよ。そら怖いに決まっている」「う、うぅ・・・」時刻は、22時を過ぎた頃だろうか。そんなときに俺は、嫌な予感を感じている。というのも・・・・・・。優夢は、まだお風呂に入っていない。つまり、もうわかっていることだろう。「お兄ちゃん」「嫌だ」「まだ何も言ってないんだけど!?」「どうせお風呂一緒にはいろとかだろ?・・・・・・俺はもう入った!!だから入らん!!」「なんでわかるの!?ってか、入ろうよー!!」「やだ!!」「私怖いの!!」「じゃあなんでホラー映画なんか見たんだよ・・・・・・」「とにかく!!一緒に入るの!!」「無理だ」という論争は続き、最終的に決まった答えは・・・。「ちゃんといるね!?」俺は、お風呂のドア越しに待たされることとなった。「え、お兄ちゃん!?」「あーはいはい。いるよ」「ちゃんといるよね?」「いるから。はよ入って出てこい」「やだ。寒いもん!!」こいつは、全然待たされる側の気持ちを考えてくれないのであった。「お兄ちゃーーん!!!」「なんだよ」「ねぇ!!聞こえた!?」「なにが」「物が落ちる音!!」「聞こえてないっての」「怖いよぉ・・・・・・。入ってきてくれない?」「なんでだよ」「大丈夫。しっかり体は隠してるから!!だから!!お願い!!」「・・・・・・はぁ。わかったよ」そうして、俺は浴室に入ったのだが。「何が落ちたんだ?」「ほら。そのシャンプー」「で、だからどうしろってんだ」「戻しといて☆」・・・・・・。俺は、何も言わず、浴槽から出て・・・。「ごめんって!!」「それくらい自分でどうにかできるだろ」「うん・・・」まさに、ぐうの音もでないという感じだった。
そうしてお風呂から上がった優夢は、俺の部屋まで来ていた。ちなみに、今の状態はというと、優夢は勉強している。まったく、本当に偉いもんだ。俺は勉強なんかしようと思い立ったことがない。もちろんある程度いい成績をとれるくらいには授業も聞いて勉強しているが、そんな自主的に勉強なんか、面倒くさくて仕方がない。「・・・ふぅ」「どうした?」「いや。勉強もある程度は済んだし、そろそろ寝ようかなって」「おう。それじゃ、おやすみ」「うん」そうして、俺は電気を消して布団に潜り込んだ。のだが・・・。「なんでいる」「そりゃあ、一緒に寝るからでしょ?」こいつ、どこまで一緒に寝れば気が済むのやら・・・・・・。「そろそろ一人で寝ろよ・・・」「ホラー映画見たんだもん」もうなんでもありじゃないか。と、僕は思った。「まぁいいじゃん!!別に誰かに見られてる訳じゃないんだし、いいでしょ?それに、嫌とは思ってないんでしょ?」優夢のいう通り、毎度俺の布団に潜り込んでくる優夢だが、その度嫌だと思ったことはない。だから正直、寝てもらっても構わないのだ。「だから、手を繋がれても、ハグされても、嫌ではないんでしょ?」「・・・・・・。まぁ。」「だったらいいよね!」といって、優夢は俺を抱いた。「これで安心して眠れる。お休み。お兄ちゃん」そのいつも決まって寝るときにする挨拶に対して俺は・・・・・・。「あぁ。おやすみ」というのだった。




