真夜中に・・・
深夜、俺が寝ていると。「お兄ちゃん!!」と、妹である優夢に起こされるのであった。「んだよ・・・・・・。こんな真夜中に」「ねぇ。部屋に幽霊が出たの!!」「んなわけねぇだろ」「本当だよ!!」「怖い夢を見たとかではなくて?」「うん。絶対!!絶対出たの!!」「で、どうしろってんだ?」「ねぇ。わかるでしょ?」「なにが」と、とぼける反応を見せるが、実はわかっている。「トイレ、ついてきて」やっぱ嘘をついた。全然予想もしない言葉が優夢の口から出てきた。「トイレだぁ?」「うん。廊下でまた幽霊が出るかもしれないし・・・・・・!!」「ないわ。」「ねぇいいから!!ついてきて・・・・・・」「っ・・・・・・。わかったよ」流石に泣き出してしまえば、否定し続けることはできない。そうして俺は、寝起きでふらつく体でなんとか重心を保ちながら、優夢のトイレに付き合うのであった。
「ねぇ!!」「なんだよ」「ちゃんとついてきてるよね!?」「いるっての」「不安だから、手繋いでくれない?」あー。うん。まぁ、普段だったら断るが、今回ばかりは優夢は半泣き状態だ。そんな優夢を見放すような行動は流石に出来やしない。「仕方ないな」こんなに怖がりだったか?と、思いつつも、薄暗い廊下を歩く。「じゃあ、中まで入ってきて」「お前、本気か?」「大丈夫だよ。流石に冗談。あ、でも、入りたかったら入ってきてもいいよ」その瞬間俺は、優夢の握られた手を放し、その廊下を駆け抜け...「ねぇ嘘嘘!!冗談!!」「はぁ。」と、俺がしっかりトイレの目の前にいることを確認して、優夢はトイレの中へと入っていった。「ちゃんといるよね!?」その時、俺は少し寝かけて.....「お兄ちゃん!!」と、優夢の叫び声でまた目を覚ます。「あ、あぁ?」「そこにいるよね!?」「あぁ。うん。いるいる。はよ済ませろ」「ん」そして数秒後。優夢がトイレから出てきた。「ちゃんと手を洗いに行けよ」「洗面所までついてきて」「わかったから」といって、また手を繋いで、洗面所まで向かうのだった。トイレ後の手って、だいぶ汚いのに、これでも手を繋いでいないといけないのか......。
そうして、トイレも済ました優夢を寝室に送り届けようとしたのだが......。「なんでついてくるんだ?」「一緒に寝るからに決まってるじゃん」「一人で寝ろよ.....。」「あんな怖い想いをしても尚、一人で寝ろって!?いやだ」「はぁぁぁぁぁぁ。」「お兄ちゃんのその懐で暖めてよ。一人で寝たくない!!怖い!!」まぁ。本当に幽霊を見たのかどうかはわからないが、半泣きするくらいだったもんな。なら、今日くらいは許してやるか。ということで、仕方なく俺の部屋へ迎え入れるのであった。
俺の部屋へ入った瞬間、優夢は真っ先に俺のベッドへ向かった。「わーい!!ふかふかだぁー!!」小さい子供のようにはしゃぐ優夢。あんなに暴れられたら、俺寝れないじゃねぇか。「もう、寝させてくれー」「じゃあベッドにおいでよ!!」「なんでお前が迎え入れたみたいな雰囲気になってるんだよ」「まぁまぁ。いいじゃないか。さぁ、このふかふかなベッドに入り込んできたまえ」なんだこいつ、と思いつつも、いち早く寝たい俺は、ベッドに潜り込むのであった。「はぁ。なんか泣いて、トイレ行ったら目が覚めちゃった」「俺は寝るからな」「やだー。話そうよ」「お前な。いくらなんでも怖いからとはいえ、こっちは真夜中に起こされたんだ。そんな俺はめっちゃ眠いっつうの」「なんかごめんなさいねー」「俺はもう寝る」と言って、俺が瞼を閉じると......。<<ギュッ>>と、優夢が俺の懐へ入り込んでくる。優夢も少し緊張しているのか、まだ恐怖が抜けきっていないのかはわからないが、心臓の音がバクバクと鳴り響いていることが伝わってくる。そうして、ゆっくり、俺の背中に手を回す。そこから優夢は、俺に語りかける。「寝てたらそれでいいよ。けど、私の中から不安を消し去るために、最後に手を握って寝てくれない?」怖いことがあると、優夢はとことん甘えん坊になる。ただ、そんな可愛い妹をおれは無視することができるはずもなく......。俺は、その問いかけに何も返事を返さずに、優夢の手を握った。「!!お兄ちゃん・・・・・・。私、これでもう安心して寝れるね。おやすみ。お兄ちゃん」という挨拶と共に、俺はようやく眠りにつくのだった。