進展?
「失礼します」「お、お兄ちゃん!!」「こんばんは。優夢。調子の方はどうだ?」”俺”こと、無叶大和は、優夢の部屋に顔を出していた。昨夜、俺は優夢を護ることを誓った。そのためには、常日頃から優夢の面倒を見ることにした。「やっぱり・・・・・・。咳き込むことが多くなったね」「大丈夫か?」「んー。やっぱり辛い」「大丈夫だ。お兄ちゃんが守ってやる」「演技なの、バレバレだよ」「わ、わりい」守る。とは言ったものの・・・。やはりまだ妹の事を思い出すことはできていないのだ。一応、説明をするとしよう。俺は、”代記病”という病を患ったらしい。その病気は、記憶が一時的に失くなり、そして、思い出すことを代償に体の機能を奪う病気だ。今のところ、吐血などの小さい・・・・・・症状で済んでいるが、いずれ、私は”死”を迎える。・・・・・・そんな病気だ。「でも、その姿勢はとても嬉しいよ」「俺は優夢を守ると決めたからな」「お兄ちゃん・・・・・・。俺に変えたんだ」「ま、まぁ」話を聞くに、前の私はこんな感じだったようなので、俺に変えてみた。のだが・・・・・・。やっぱり自分で言っていると違和感が半端ない。「そういえば、今のところ大きな記憶を思い出したりするような傾向はないの?」「そうだな。それどころか、小さな症状も出ていないな」「まさか治ったとか!?」「だとしたら、記憶がないままなのはおかしいだろ」「確かに?」「優夢、天才なんだから分かってくれよ」「そうだねー。ごめ・・・・・・。って、え?」「ん?」・・・・・・あ。
お兄ちゃんが、そういった刹那、今までになかった量で血を吐き出した。流石に、動揺を隠しきれなかったが、起き上がったお兄ちゃんの様子は大丈夫そうなので、ひと安心することができた。「い、痛い」「大丈夫?」「痛い」「よしよし。よく頑張りました」「・・・・・・。痛い」「お兄ちゃんが痛いbotになった」「痛い」「・・・・・・えいっ」「いだい!!いきなり殴らないでくれ」私の妹は。実はパワー系だったのか・・・・・・?と、ふとそんな事を思ってしまう。
「・・・・・・。それで、大丈夫なの?」「まだ痛いが、マシにはなったな」倒れてから6時間が経過し、ある程度は回復してた・・・・・・。日付も変わり、とうとう8月になった。俺という無叶大和が死を迎えるまで、残り一ヶ月あまり。一方、優夢の喘息は、良くなる見込みがないようだ。今は比較的落ち着いている方だが、医者によると1週間後、薬をのみ続けないといけないらしい。やはり、お父さんから聞いた”呪いのせい”か、私達の体は日に日に悪くなっていくようだった。私も、記憶を思い出す度に、何度も吐血を繰り返していると、流石に体から体力を奪っていく。これからずっと、この生活が続いていくと考えると、流石に恐ろしい。そんなこんなで、今日は医師からの許可が下りたため、少し外出をしようと思う。流石に、このまま何もせずに死を迎えるのは昔の大和にも迷惑がかかってしまうだろうということで、趣味を探すことにした。もちろん、誰かの付き添いは必要だ。それを、真愛さんがやってくれるらしい。なぜ突然?と思ったが、まぁしてくれることに感謝するとしよう。もう出掛ける用意はしたから、あとは真愛を待つだけだ。そうして、暫く真愛さんを待っていると・・・・・・。「失礼します」「真愛さんでしたっけ。・・・・・・よろしくお願いします」「畏まらなくていいよ。大和の方が先輩なんだから、タメ口できてよ」「でもやはり、慣れないんですよ・・・・・・」「まぁ、そうだよね。無理をしろとは言わないから。慣れないままでもいいよ。・・・・・・まぁ、納得はできないけど」(でも、そういう大和も悪くないかも・・・・・・)「まぁ、そんなことはおいておいて。とりあえず、行こ?」「はい」そうして、病院を出て、私達は町を歩き出すのであった。
なんやかんや、記憶をなくしてから外出をするのは初めてだった。季節は、真夏ということで、流石の猛暑日だった。「暑くない?」「まぁ、夏ですからね」「そうだねー。それでね、ここは昔私達でよく来てたんだよ」「それって、二人でなんですか?」「うん。そうだよ。事実上は幼馴染だし、やっぱり仲良かったからね。・・・・・・二人で遊ぶことも多々あったよ」「そうなんですか」「ここ、綺麗でしょ」「そうですね・・・」よくこんな場所が田舎にあるものだな。と、思わず関心を抱く。それから、真愛が俺との思い出を語り続けた。そして、数分経った時に、突然真愛が立ち止まる。「どうしたんだ?突然立ち止まって」「・・・・・・」そこで何故か、真愛が黙り込んでしまう。「ほ、本当にどうしました?」「・・・」暫く沈黙が流れたあと、やがて真愛が意を決したように、まっすぐな瞳で此方を見つめてきた。「・・・ど、どうしました?」「ねーねー。大和」「どうした?」そして_______。「大和君。好きだよ」




