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始まりの物語  作者: 柴田優生


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兄という存在とは?

「・・・・・・え?」戻ったって、なんだ?記憶が飛びかけたときか?いや、なにも思い出していない。「その、なんなんですか?戻ったというのは」「なんか、一瞬だけあの時のお兄ちゃんの面影が見えた気がしたの」「・・・・・・なるほど?」ただ、その時の事は覚えていない。もし仮に戻ったとして、なぜ私は意識を保てたのか。忘れている人もいるかもしれないから、一応説明をしておく。私は、代記病という未知の病に襲われて、記憶がない状態だ。その代記病とは、記憶を思い出すことを代償に、体の機能を奪ったりする難病だ。そんな私は、普通思い出したら吐血をするはずなのだが・・・。まさか、治ったとでもいうのか?いや、だったら記憶がないのはおかしい。「懐かしいな。あの感じ」「・・・と、いうと?」「やっぱり、正直にいってしまえば、今のお兄ちゃんはよそよそしくてなんかぎこちない。・・・・・・でも、あのときのお兄ちゃんは優しくて、暖かさを感じれたの。・・・・・・きっと、今お兄ちゃんにハグをされても落ち着くことができないと思う。ねぇ、お兄ちゃん」「どうしました?」「・・・・・・。一度、ハグをしてみてよ」「・・・・・・は?」その言葉に、俺は動揺してしまう。「は、ハハハハハハグ!?」「なによ。そんな驚くことはないんだよ?それに、いつもしていることだったし」「い、いつも・・・?」「うん。いつも。お兄ちゃんね。押しに弱かったの。最初は断るんだけど、私が粘り強くお願いする度に結局は折れてハグをするのがオチだったの!!・・・・・・だから、今のお兄ちゃんでもできるでしょ?」「い、いや。今は中身が変わっているのであって・・・・・・。そういうことはまだできないんだ」「相変わらずヘタレだなぁ~。お兄ちゃんは」「す、すみません?」「そんな謝らなくていいよ。それにしてもー。・・・最近、お兄ちゃんが記憶喪失になっちゃったから十分に甘えれてないんだよね。・・・・・・勿論、そうなったお兄ちゃんが悪いと言いたいわけではないけど、お兄ちゃんも知っている通り私はブラコンなの。お兄ちゃんの愛を補充しないともう生きていけない・・・・・・」さて、どうしたもんか。私が思う限りは、妹がそういうなら甘やかすのが兄だろう。・・・・・・しかし、優夢さんは中身が変わった私を許すことはできるのだろうか。あくまで、優夢さんが好きだったお兄ちゃんは記憶を失くす前の私であって・・・・・・。今妹の事をなにも知らない私にそんな甘えても、優夢さんが求める”愛”は感じられるのだろうか。「だからー。たとえ貴方が違ったお兄ちゃんでも、お兄ちゃんの温もりを感じたい」「・・・・・・こんな私で、いいのですか?」「いいって?それはどういう・・・」「優夢さんが求めている私は、昔の私であって、今の私は「無叶大和」という優夢さんの兄を装った他人に過ぎません。・・・・・・そんな私から、愛は感じられるでしょうか?」「・・・・・・あのね。お兄ちゃんは分かっていない。確かに、昔のお兄ちゃんが好きであっても、それでも、どんなお兄ちゃんでも愛するのが、それが”愛”なの。お兄ちゃんだってそうでしょ?記憶を失くしたとしても、私が妹であれば、どんな妹でも愛すでしょ?・・・・・・それと同じ」確かにそうだ。私は、妹の事を全く知らないのに、本性がどんな妹でも受け入れようとする。・・・・・・そんな私は、その本性に抗う意思を見せず、優夢という存在がどんな存在であろうと愛そうと思えている。つまり、”愛”というのは、そういう事なのか?「だから、私は今のお兄ちゃんでも愛情を感じたいの!ほら、だからはやくぎゅーして!!」私の意見を聞く前に、優夢さんはばっと腕を広げる。そんな状況に私は、どうしていいか分からず・・・。「え、えっと・・・」と、そんな言葉しか残せないのだった。「お兄ちゃん、は・や・く!!」落ち着け。落ち着け。大和よ。お前は妹を大切に思いたいんだろ?・・・・・・だったら、妹が求めることはやってのけるべきだ。今は、中身が違うとかは気にしない。さぁ。そうして、私は優夢さんの方へ歩みより・・・。「っ!!」遂に、ハグをしてしまうのであった。・・・・・・すぐ、離れようと思ったのだが。「だめ。まだこうしていて」と、優夢さんが離れることを許さず、そのまま5分くらいその後もハグを続けるのであった。

 夜になって、考える。きっと、私の行動は間違っている。私は、「中身が違う自分」を気にしすぎている。自分が自分じゃないからって・・・・・・。それを言い訳にしている。きっと、優夢さんもそれは望んでいないことだ。私の本心は、大切な妹を守りたいというのが本心だ。それを言い訳にしてちゃ、きっと優夢さんも気が気ではないだろう。・・・・・・それに、私も優夢も、もう残された時間は少ないのだ。・・・いずれ、私は記憶を取り戻す日が来るのだが、それまで妹に甘えられる存在にならないのは、きっと妹は幸せになれない。大切な妹を守るのは、兄の仕事だ。結局は、私が兄であることには変わりない。血は繋がっていなくとも、なにであろうと・・・・・・。私は、いや”俺は”。兄の責務を全うして、最期の刻まで、優夢を護るとしよう。きっと、答えはそれだ。優夢のためにも、そして俺のためにも・・・・・・。

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