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始まりの物語  作者: 柴田優生


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36/43

その後も何人か訪問者が現れて、進治郎さん曰く、次が最後だそうだ。その、最後の人というのは・・・・・・。「よぉ。大和」「貴方は誰なんですか?」「あ?何言ってんだよ。泰星だよ」「あー。先日テレビに出演されていた。・・・・・・どうかされましたか?」「てか、なんでそんなよそよそしいんだよ」「初対面なので」「は?さっきからお前、何言って・・・って、まさかお前、記憶喪失というやつか?」「はい。そのようです」「道理で・・・・・・。zyくぁ、改めて自己紹介してやる。陸奥泰星。お前とは陸上でライバルだ。・・・・・・ちなみに、年は二つ下だ」「陸上・・・ですか」「この前、100mの決勝があったんだ。それで、お前、優勝だってよ」「すみませんが、なんの事かわからないんです」「まぁ、とにかく聞けって。すごいぞ。100m10,38だってよ」「速くないですか!?」中学生に、そんな筋力があったのか。と、自分の事ながらも、流石に驚きを隠せなかった。「本当に何も覚えてないんだな」「はい。その様で・・・」本当に、過去の記憶が思い出せない。何処に住んでいたのか、誰と仲良かったのか・・・・・・。など。いや、正確にいえば、その記憶に黒い幕が被さっているようなものだ。思い出そうとしても、その幕が退かない。伝えるのは難しいが、そんな感じがする。・・・・・・と、その時・・・。「・・・・・・っ」

 そうして、ようやく目を覚ます。「・・・・・・はぁ」突然激痛が走り、そのまま意識を失ったが、恐らくまた吐血だろう。ほんと、なんなのか。流石に疑問を抱く。何かを思い出す度に、血を吐いて意識を失う。今回のように、その瞬間は何も痛みを感じずなら楽なのだが、毎度毎度そのようなことを繰り返していると、流石に辛さを覚える。そうして、辺りを見渡していると。「気がつきましたか。大和さん」「あ、えっと・・・たしか、お医者様、でしたっけ」「はい。そうです。やはり、今回も思い出しましたか?」「・・・・・・そうですね」「やはり、徐々に進行されていっていますか・・・」「?何が、進行されているのですか?」「そういえば、まだ貴方に症状を伝えていませんでしたね」症状・・・?進治郎さんから聞いた話だと、まだ症状が判明していないとの事だったのだが・・・・・・。まさか、判明しているのだろうか?しかし・・・「記憶喪失ではないのですか?」「いや、実は・・・」そうして、医者は病名を告げる。その名を”代記病”と。「・・・・・・え・・・・・・」だから、妙にタイミングがいいわけだ。毎度、記憶を思い出す度に血を吐き出すもんだから。謎が解明されスッキリすると同時に、俺は絶望する。「なるほど。つまり、自然的に思い出してしまう。という事ですね」「えぇ。・・・・・・つまりは、そういうことです」一気に、寂しさと恐怖心が押し寄せる。そりゃあそうだ。聞いた話、私という、無叶大和のという人間はまだ中学生だ。・・・・・・いくら、中身が変わったように昔の記憶がないとはいえ、中学生ながら死の訪れを感じるということは流石に恐怖を感じざるを得ない。中身が変わったからこそ、やりたいことだって、まだあったのに、それなのに・・・。余命宣告。された本人は、こんな気持ちになるのか。と、身をもって感じる。・・・・・・でも、突然余命宣告をされた私は、自然的にネガティブ思考に陥ってしまった。・・・今が、幸せなのかもしれない。だって、今は昔の記憶をなくしているから・・・。思い出や、何もかも・・・・・・。寂しくならずに死を迎えることができる。・・・・・・そうだ。最初から、人間はそうなのだ。死ぬことに恐怖を抱くのは、過去の思い出が蘇るから。だから、死にたくないって思える。じゃあ、今はどうだ?過去の思いでも、何もかも・・・・・・。全て忘れ去った私は、『なぜ死ぬことに恐怖を感じている?』記憶を失くす前の自分が存在したから?・・・・・・いいや。きっと違う。きっと、これが本性なのだ。私という、”今の無叶大和”は寂しくもならず楽に死ぬことができるが、”本性の無叶大和”はまだ死にたくない。と、そう言って必死に抗おうとしている。・・・・・・つまり、そういうことだ。これは、過去の自分が今の自分に託した、その「最期の、物語だ」。「それじゃあ、他の患者さんの容態を確認しますので、これで失礼いたします」「はい」過去の自分は何をしたかったのかはわからない。・・・・・・が、少なくとも、今私にできるのは、「最期の刻を謳歌する」事だ。さて、ここからなにをしようか。残された時間をどう活用するか・・・・・・。暫く考えた私は、「寝るか」と、貴重な時間を寝ることに費やすのだった。

 今、私の記憶は1つずつ復元されている。・・・・・・忘れないためにも、一応説明をいれておこう。私の名前は、無叶大和というのだが、聞いた話によると、先日の陸上の大会でゴールした直後、頭を強く地面に打ち付け、今は昔の記憶を失くしている状態だ。・・・・・・そんな私は中学3年生らしいのだが、まだ若いというのに、’代記病’という未知の病を患っているらしい。・・・その病気は、失くした記憶を取り戻すことを代償に、嘔吐や吐血、更には大切な記憶だと体の機能を徐々に奪う。そんな、病気だ。そして、そんな病気にかかった俺の余命は「夏が終わりを告げる頃」。そんな残り短い人生を、新たに生まれた無叶大和は生きていこうと考えている今日この頃。「妹は起きているのかな」と、私の妹について気になっていた。たしか、優夢。といっていただろうか。記憶を失くしたため、彼女の特徴や生活をわかっていない。そんな彼女の事を知るために、彼女の部屋へお邪魔しようと考えているのだが・・・。流石に、もう夜中だ。そんな夜遅くに、いきなり部屋へお邪魔するのも悪いだろう。しかし・・・「ブラコンだったしなぁ」夜中の移動は基本禁止だが、妹の容態を確認する程度だったらいいと、医者にいわれた。妹の病室は、3つ隣。・・・・・・いくべきだろうか。しかし、起こしたら悪いしなぁ・・・。兄妹なら躊躇せず行くべきなんだろう。が、あいにく私にはできないのである。なぜなら、彼女の事を何も知らないから。「行ってみることも知ることには繋がるか」それなら、行くべきかもしれない。もし仮に、夜中に喘息が発症したら、誰も助けれないからな。・・・だったら、様子見も兼ねて、行ってみることにしよう。そう思い私は、ベッドから立ち上がって、妹の部屋を目指して歩くのだった。

 「失礼しまーす」窓からは、月の光が差し込んでいた。その光は、彼女が寝ているベッドを明るく照らしていた。・・・・・・だが、私はそのベッドを視認した時、瞬時に異変を察知した。それもそのはず、何故なら・・・・・・・・・・・・・・・。

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