最終レース
それから時は足早に進んでいき、気づけば大会の一週間前にまで来ていた。あれから状態はだいぶマシにはなったが、このままじゃ、確実に泰星に負けてしまう。一応、説明をするとしよう。僕の名前は、無叶大和。陸上界の帝王として、日本中から注目を集めている。そんな俺に、長年のライバルが現れる。・・・・・・陸奥泰星。小学生陸上の世界記録を塗り替えた第二代陸上界の帝王。それが泰星という人間だ。噂によると、中学上がってはやくも10秒中盤を叩き出したとか・・・。そんな俺は、因縁のライバル・陸奥泰星に勝つために猛練習に励んでいるのだが・・・・・・。「10,52・・・か」仕上げはうまくいっている。・・・が、この前久しぶりに会話をしたとき、「県大会では10,3を出して待ってやる」と言っていた。だめだ。このままでは。その焦りに追われて、さらに追い込みを続ける。・・・・・・すると、「お兄ちゃん?」「ん?優夢?どうしてここに?」部活が違う優夢が、なぜか陸上部の練習に登場しているのだ。「監督さんに説明をして、少しお兄ちゃんの様子を見に来たの」「そうか。それで、何か用か?」「お兄ちゃん、無理してない?そりゃあ、お兄ちゃんがやっている陸上の事だから、応援は勿論するけど、無理しないでね・・・・・・?体壊されたら心配だから」「あぁ。分かってる。体を壊すことはないから安心しろ」「そう。じゃあ、頑張ってね。陸上。あの子に勝つんでしょ?」「言われなくても分かってるよ」「ふふっ。そっか。じゃあ、最後に、頑張れの意味でも込めたハグでもする?」そんな、冗談を優夢は言う。その冗談に対し俺は「しねぇよ。応援だけで十分だ」と言って、練習に戻ろうとしたのだが、「んー。なんか嫌だな」「と、言うと?」「最近、お兄ちゃんにハグされてない気がする」「そうだっけか?」「そうなの。・・・・・・だから、」「今は練習中だ」そういった俺の言葉になんの反応を示すこともなく、優夢は淡々と告げる。「ハグして?」と。「だから練習中だっての。今はしねぇよ」「今は?今、今はって言ったよね!?じゃあ、後でしてくれるってこと!?」「あーもう。わかったから。後でしてやるから、はやくどっか行ってくれ」「んー。冷たいなぁ~。・・・それならー」と、そう言って優夢はこちらに歩み寄って来て・・・。「よしよし」「んっ」突然、何故か優夢に頭を撫でられるのだった。「なにしてんだよ」「頑張っているね。偉い偉いっていう意味でのなでなで」「子供じゃねぇんだから。いいっての」「ふふ。そっかそっか。それじゃあ、これ以上邪魔したらいけないから、私はそこで見ているね」「結局は部活に戻らないのかよ・・・・・・」しかし、はじめて妹に頭を撫でられるという行為をされられたが・・・。なんだろう。自然と落ち着いたというか、癒されたような気がする。まぁ、周りの目は・・・・・・。一旦気にしないとして、何故かもっと集中してできるような気がした。(もしかしたら、そういったスキンシップは、集中力を高める効果があったりするのかもしれないな・・・)もしそうなのだとしたら、優夢にはもっと感謝すべきだな。と、俺はしばしそんなことを考えながら、やがて練習に戻るのであった。
時は、進むことを忘れず、俺が陸上に熱中している間に、一学期も終了しており、気づけば、県大会当日になっていた。走りの状態は、殆ど戻ったと言えるだろう。それなりには、全世紀の状態で走れるようになった。一通りアップも終えた俺は、例の相手と会話をしに来ていた。「やぁ。大和君。調子はどうだい?」陸奥泰星・・・・・・。先ほど説明をしたとおり、俺のライバルだ。「あぁ。いい感じだよ」「そうかぁ。・・・・・・大会のレース順、見たか?」「勿論」「不運なことに、予選は組が違ったね。・・・・・・まぁ、君とは決勝で戦えることを祈るよ」「あぁ。望むところだ」実は、今日の大会、日本中で過去最大に注目が集まっているらしい。スポーツ界隈最強の無叶大和VS陸上史上最強の陸奥泰星。この戦いは、県大会ながら全国テレビでも生放送をしているらしい。噂によると、視聴率は、なんと驚異の52%。スタジアムには、約6万人の人が押し寄せた。「全く、俺らの戦いだけでこんな人が集まるとはな・・・」「いやまぁ、嬉しい限りですよ。勝っても負けても、ネットやスタジアムからは大きな歓声が響き渡る・・・・・・。俺たちは、幸せ者かもしれませんね」「そうだな」そして、俺には最高の観客が見に来ていた。「お兄ちゃん、頑張ってね!!」「大和、応援してるぞ」「悪いな。父さん。忙しいのにわざわざ来てもらってな」父さん曰く、「大切なかわいい息子が県大会のレースに参加するときいたもんでな・・・。有給を使ってこっちまで来てやったぞ」とのこと。優夢に関しては、チームサポーターとして県大会について来てくれた。「いいってことよ。素晴らしい姿をみせて貰えたらそれでいいよ」「ありがとう。期待はしないでいいんだぞ。いつも通り走るだけだから」「泰星との対決ね・・・・・・。無理しないでよ?」「わかってる。それで。だ。最後にタイムを計っておきたいから、ちょっと手伝ってくれないか?」「いいよぉー!!」そうして試合前最後に走ったタイムは・・・・・・。「10,46か・・・」割りと良いタイムを叩きだせれたと思う。そろそろ100Mの予選が始まる。「何度もいうけど・・・。お兄ちゃん頑張ってね!!」「大丈夫だ。ありがとう。その応援、とても嬉しい」「ねぇ。お兄ちゃん」「どうした?」「試合前だから・・・、最後に、ハグをして?」「・・・なんでだよ」流石に理解ができなかったので、俺は苦笑を浮かべる。「充電は必要でしょ?」「もう満タンだっての」「いいから。んっ」そう言って、優夢は腕を広げる。「はぁ。もう。わかったよ」「やっぱり、仲が良いなぁ」「うおっ!!進治郎!?」「いいよ。愛の巣を無茶苦茶にする気はあいから」「愛の巣ってなぁ・・・」「ごめんごめん。頑張れよ。100M」「あぁ。それじゃ、いってくる」「いってらっしゃい。しっかりと見ておくからね!!」俺は優夢たちに手を振り返し、その場を後にするのだった。
場内アナウンスが響き渡る。「第3レーン。陸奥泰星・・・」そのアナウンスが響き渡った瞬間、「ワーッ!!」と、一気にスタジアムが盛り上がりを魅せた。そうして、スタートの合図が繰り出されたのだが、結果は言うまででもなく・・・。「一着第3レーン 陸奥泰星。10,39」なんと、有言実行。泰星は、本当に10,3台を叩き出した。「まさか、本当に出してくるとはな・・・」こりゃあ驚いたもんだ。だが俺も、負けてられちゃいない。決勝で戦うことを前提に、俺も初戦に挑むとしよう。
翌日、初戦ながら泰星と同タイムを叩き出したことで、一気に二日目の注目度が高まった。「ついに決勝だね。昨日と同じように、近くで見守っておくね!!」「あぁ。ありがとう」「いいですねぇ。妹に応援されるなんて。俺なんか妹には嫌われてばっかだぞ」「・・・仕方ない。ライバルではあるが、お前を応援してやる」「勿論、自分のレースには集中してくださいね?・・・まぁ、頑張りましょう」このレースに全てがかかっている。ここで負けたら、全国大会には出場することができない。・・・だから、(俺の本気を魅せてやるよ。泰星)と、心の中でそう呟くのであった。
「中学男子100m走決勝。そのメンバーを紹介します。第2レーン・・・・・・」と、次々と出場者の名前が点呼される。そして・・・。「第4レーン陸奥泰星。第5レーン無叶大和」そう場内アナウンスがされた瞬間、今までに聞いたことがないくらいの歓声が聞こえてきた。隣には、ライバルがいる。ここで、焦ってはいけない。俺だけの走りを、見せてやろう。そうしてやがて、スタートの合図が鳴り響き、俺たちは一斉にスタートをした。50m地点を過ぎた!まだ、互角の走りだ。そのまま、トップスピードまで速度をあげていく。走れ。動かせ。大和。そうして、最後の、ゴールラインを超えて・・・。レースの結果は、(っ・・・・・・!!)




