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始まりの物語  作者: 柴田優生


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最強の男

体調も完全に治った俺は、久しぶりに部活へと顔を出していた。「お久しぶり」「おぉ大和。なかなか部活に来ず、なにしてたんだ」「ちょっと優夢の面倒を見てました」「優夢、今のところ喘息の症状は出ていないようだが・・・。面倒とはなんだ?」「まぁ、とにかく面倒ですよ」説明しよう。今俺が会話しているのは、この陸上部の顧問、岐道きどう 純児じゅんじ。この人は、中学生のときに中学生の100m世界記録を塗り替えたそうだ。タイムは10,40・・・・・・。圧倒的に格が違うタイムなのである。「それで、来月には県大会ですよね。今年も、100m枠で出ますよ。枠は空いてるか?」「あぁ。お前のために空けておいた。だが気を付けろ。お前の才能は、確かにワシに匹敵するほどじゃ。・・・・・・が、今年は、昨年小学生の世界記録を塗り替えた者がお前さんに立ちはだかる。・・・だから、全力で練習に取り組むように」「あぁ。わかってるよ」そいつは、そりゃあとても有名だ。小学生陸上の世界記録を塗り替えたスーパー日本人。その名を、陸奥むつ 泰星たいせい。当時俺が小学生だったときのライバルだ。学年は二つも違うのに、彼は俺と同じレベルで走る。泰星は、小学生で10,56で走る。対して俺は、10,49。アイツの伸びが気になるところだが・・・・・・。「アツくなるじゃねぇか」プライドもあって、アイツには負けられない。・・・・・・だから、そのために俺は陸上に真剣に取り組むのであった。

 動くのが久しぶりだったからか、体が思うように動かない。体が思いというか、なぜかそんな感じがする。ためしにタイムを計ってみると・・・。「え?」まさかの、11,5だった。・・・・・・一秒近く落ちている。こりゃまずい。と、流石に焦りを感じてしまう。「おいおいどうした。タイムが落ちすぎではないか?」「わかんねぇ。暫く動かなかったからか?」ちなみに進治郎は、投擲とうてきの日本記録を持っている。「まぁ無理するなよ」「あぁ。わかってる」仕方ない。今、無理に走り続けても状態はダメなままだ。・・・・・・だったら、体づくりから始めるとしよう・・・・・・。

 あれから一週間ほどが経過した。結果、状態は良くならなかった。どころか、落ちている傾向にある。所謂、スランプというやつだろう。「11,4」泰星のタイムが気になる。「泰星って、大会に出てるか?」「あぁ。出ているぞ」「タイムは?」「中学上がってからの自己ベストが、たしか10,51だったな」やはりあいつは少しづつ伸びている。このままでは完敗してしまう。徐々に緊張と焦りが出てきている。走っても走っても、「11,4・・・」一向にタイムは上がらない。「大和。落ち着け。今のお前は、焦りすぎている。そのせいで、ケアレスミスが多い。大会の3週間前になるまで、体づくりに専念しなさい。負けるかも・・・。という不安は捨てなさい」「とは言っても、あと1ヶ月だぜ?間に合うかよ」「無理にやっても、良くならない一方だ。その時は、一度最初からやり直すことも大事だ」「・・・・・・わかったよ」そうだ。監督の言う通りだ。落ち着け。落ち着け。俺。「お前は、無叶大和は秀才だろ」そうだ。泰星に負けるような人間ではないだろう。「はっ。負けてたまるかよ。泰星」絶対、勝ってやるからな。

 私のお兄ちゃんは、頑張り屋さんだ。なんだって、できると思ったことは全てやり遂げてきた。・・・それが、私のお兄ちゃん、無叶大和という少年だ。そんな兄が、突然のスランプに襲われた。ただ、これはスランプではない。私はそう確信している。お兄ちゃんのそれは、スランプではなく、恐らく体になにかが起きている。どこかの臓器などが悪くなっていたり・・・。だとか。原因は私にはわからない。けど、きっとお兄ちゃんの体に何かあるのだろう。「私が、お兄ちゃんを救わないと・・・・・・」お兄ちゃんが不調なら、それを支えてあげるのが私の役目。だから、お兄ちゃんが私を助けてくれたように、今度は私がお兄ちゃんを助ける番だ。・・・・・・「頑張ってね。お兄ちゃん」そう呟きながら、私は建物の影からお兄ちゃんを見守るのであった。

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