風邪
・・・・・・ピピピ。と、部屋中にそんな音が響き渡る。「やってしまった・・・・・・」僕の名前は、無叶大和。今日、朝起きたら突然頭痛に襲われた。まさかと思いながら、熱を測ったら・・・。「38、6・・・ねぇ」見ての通り、風邪である。はぁぁぁ。本当にやらかした。なにがやらかしたのかって?説明をしよう。俺という人間には、超絶ブラコンな義妹がいる。そんなブラコン妹が、俺が風邪をひいたと聞き付けると・・・・・・。
学校に休みの連絡をいれ、とりあえず優夢を起こすために怠い体をなんとか持ち上げながら、優夢の部屋へ進む。「優夢。起きろー」「ん?あ、おはよう。お兄ちゃん。・・・・・・って、どうしたの?顔色悪いよ?」「ちょっと、風邪を引いたようでな。・・・・・・今日は学校を休む。悪いが、今日は一人で行ってくれないか?」「風邪引いたのねぇー。なるほど。学校を休むのか・・・」少しの間、沈黙が流れ、やがて優夢が口を開ける。「じゃあ、私も休む」答え合わせをしよう。兄が、風邪を引いたら、ブラコンな妹は必ず「学校を休む」と言い出す。もうここまでくるとお決まりのセットだろう。「だめだ。学校に行け」「いーやーだー!!お兄ちゃんがいない学校なんて行く意味ない!!」「ある。真愛とでも遊べばいいじゃないか」「真愛とも遊びたけいど・・・。それよりもお兄ちゃんの方が優先順位は高いから」「はぁ。めんどくせ。とりあえず、飯は作ってやるから学校には行け」「いや、いいよ。ご飯作らなくても。私も作れるから、お兄ちゃんはゆっくりしてて?・・・・・・いやだけど、学校には行くから」「そうか。ありがとう」はぁぁぁ。どうしよう。やることないなぁ。学校を休む。ということは、誰もが経験したことがあるだろう。その度に、暇になるのはよくある事だ。「とりあえず、スポドリでも持ってくるかぁ」珍しく、風邪を引くもんである。ウィルスなどではないだろうが・・・・・・。まぁ、ゆっくりするか。とりあえず寝よう!ということで、俺は目を閉じて、数分後、やがて眠りにつくのであった。
どれくらい経った頃だろうか。突然、部屋のドアがガチャリ。と開く音が聞こえて、ようやく俺は目を覚ます。「ん?」「あ、起こしてしまった?ごめん」「真愛?どうかしたか?」真愛が来たことに驚きではあるが・・・。もうそんな時間が経っていたのだろうか。「休むって聞いたから、なにかあったのかなって」その言葉に違和感を感じ、時計を見ると、まだ時刻は朝だった。「風邪を引いてしまってな・・・。今から学校か?」「うん。そうだよ。そっかぁー。風邪引いちゃったのか。お大事にね」「ありがとう。・・・で、それだけか?」「うん。そうだよ」本当は、行ってきますのハグ・・・。とかしてみたいが、そんなこと口が裂けても言えない。「にしては、なにかまだありそうな顔をしているが・・・」なんでこういうときに限って鋭いの!?「あ、えっと・・・」どうした方がいいだろうか。言った方がいいか?いや、迷惑だろうから、言わない方がいいか。今、大和は風邪を引いているんだ。そんな大和君に、迷惑はかけれないな。と、そう結論付けた私は、「んーん。なんでもない。それじゃあ、行ってきます」「・・・いってらっしゃい」と、そう言って、真愛は家を出るのだった。・・・・・・また、暇な時間が訪れてしまった。・・・まぁ、寝るか。
昼休み。私は暇をもて余していた。「あぁぁぁぁぁ。暇だよーー」「大和いないだけでこんなに変わるんだね。優夢」「そりゃそうだよ。・・・・・・お兄ちゃんのことが大好きだから」「変わらないねー」今日は、お兄ちゃんが風邪を引いて休んでしまった。・・・・・・いつも、昼休みはお兄ちゃんに構って貰っていたので、実に暇なのである。4限頑張って授業を受けたが、時間の進みが遅いのである。「今日大和君休みなの?」「うん。そうなの」「どうして?」「風邪引いちゃってね・・・」「そっかぁ~。・・・・・・その、お見舞いとか行った方がいい?」「んーどうだろ。行ってもいいんじゃない?悪いことはないだろうし。・・・まぁ、迷惑をかけなければいいと思う」「そう。じゃあ、今日邪魔するね」「うん。いいよー。ついでに、3人で遊ぶ?」「大丈夫なの?風邪引いてるのに騒がしくして」「大丈夫大丈夫!!めっちゃ静かにしていればいいから!!」「ん。わかった」恐らく、ちょっとうるさくてもお兄ちゃんなら許してくれるはず!!・・・・・・けど、だからと言って、風邪引いているお兄ちゃんに迷惑はかけれない。だから、あまり騒がないようにしよう。・・・・・・風邪、となると、お兄ちゃんに甘えることはできないしなぁ・・・。とまぁ、その後も何気ない会話を3人で繰り広げるのであった。
突然、電話が鳴り、ようやく目を覚ます。「もう16時なのか」気づけば、再度眠りについてから6時間ほどが経過していた。そして、電話の相手は父さんだった。「もしもし。どうした?」「おぉ。大和。風邪引いたんだってな?体調は大丈夫なのか?」「あぁ。寝てたら大分良くなったぞ。・・・・・・明日には治るかどうかくらいだと思う」「そうか。それはよかった。・・・・・・それで、今度は盆には帰れそうだぞ」盆・・・・・・か。だから、あと2ヶ月後くらいになるのか。長い間、俺たちは半同棲を続けている。優夢と、二人で・・・・・・。別に、なにかいざこざがあったわけではない。・・・・・・だが、やっぱり、親の愛情も受けてみたいもんだ。母さんが死んだことを悪いというわけではないが、でもやっぱり、「甘える存在」がいないとやっぱりやっていけない。だって、俺は人間なのだから。「優夢のこと。よろしくな」「わかった。心配しないで大丈夫だぞ」「じゃあ俺は仕事に戻るから」「はーい」そうして、通話は途切れた。優夢のこと。・・・・・・かぁ。忘れている人もいるかもしれないが、俺の妹、無叶優夢という少女は、容姿端麗、頭脳明晰の完璧超人なのだが、実は、彼女は「喘息」を患っている。それも、少しひどめの・・・・・・。最近は落ち着いたのか、優夢の喘息はあまり出ていない。激しい運動をしていないからだろうか・・・・・。体調も悪くなっていないし、まさか、喘息が回復しているのだろうか・・・・・・。それだと、此方としても嬉しい限りである。と、そんなことを考えていると・・・。<<ピンポーン>>「はーい」インターホンがならされたので、ドアを開けると・・・。「おぉ。おかえり。それに真愛と來向。どうした?」「來向はお見舞いに。それでなんだけどさ、3人で遊んでもいい?うるさくはしないから!」「あぁ。全然いいぞ」「ありがとう!!」「それじゃ、お邪魔しまーす」「大和君。なんだか久しぶりだね」「あぁ。そうだな」最後に会ったのも1週間ほど前のはずだが、なぜか長い間会っていないような感じがした。「それで、風邪のほうはどう?」「大分良くなったぞ。明日には学校に行けそうだ」「回復力早いな・・・。まぁ、大丈夫そうなら良かったです」「うん。ありがとうな」そうして、玄関の前でそんな会話を終わらせ、3人は上へと上がっていった。俺も、自室へ戻ろうとしていると・・・。ピンポーンと。またインターホンが鳴り響くのであった。「今日は来客が多いな」「よっす。大和」「おぉ。進治郎かどうした?」「風邪引いたって聞いたから、お見舞いに来てやったぞ」「来客が多いなぁ・・・」「なんで2回言った?・・・まぁ、それはそうとして、大丈夫か?」「あぁ。よくなった」「そうかそうか。よかったよかった。一応、お前の好きなお菓子とゼリーを買ってきたのだが・・・。食べるか?」「あぁ。ありがたくいただくことにする」「それはよかった。・・・陸上、頑張れよ。もうお前は全国に出れる力があるんだから」「わかってるよ」実をいうと、俺は陸上部に所属している。・・・詳しい説明は、また今度するとしよう。・・・・・・考えてもみれば、あと1ヶ月もすれば県大会である。”アイツ”に勝つためにも、そろそろ練習を始めていかないとなぁ・・・・・・。と、おれはそんなことを思うのであった。




