ダブルデート
そんなこんなで、昼食時に少し時間が空いたもんで、俺は、真愛と話すことにした。「大和ってさ、結局優夢に惚れたりすることはないの?」と、お年頃の中学生ならではの恋バナをするのであった。「ねぇよ。・・・・・・あくまで、俺たちは兄妹だ」「にしても、優夢にツンツンしすぎじゃないかねぇ・・・」「そうか?あれが普通だろ」「あれが普通なのだとしたら・・・・・・。まぁ、いっか。ふーん。そうなんだ」「なんで、そんなことを聞いてくるんだ?」「え、えぇっと・・・。そうだ。大和の恋バナを全く聞いたことないから、一番可能性がある優夢ちゃんについての事を聞いたんだよ!!」この前も、そんな話をされたような気がするけどな・・・。説明しよう。この少女の名前を、陽村真愛という。つい先週くらいまで、俺はこいつと「デート」をしていた。その時にも話されたのだが、「優夢と付き合うことはないのか?」と聞かれた。何度も何度も聞く必要はないと思うが・・・・・・。まぁ、そこは深く追求しない方がいいのだろう。「でも、大和って、それなりには優夢に甘い気が・・・」「そうなのか?」た、確かに。甘いかもしれない。さっきのお昼ご飯の時だって、「食べさせろ」という優夢に、俺は断り続けることができず、食べさせる羽目になった。その他にも、何度も優夢にそのようなことを求められては結局甘やかすことしかなかった。・・・・・・なら、もしかしたら俺はとんでもないシスコンなのか?「あ、あくまで義妹。・・・ではあるが、俺は本当の妹・・・・・・と思いたい。そんな実妹を、恋愛対象としてみるという行動は、どうしても気が引ける。真愛もそうだろう。進治郎を恋愛対象として見れるか?」「確かに・・・・・・。見れない」大和の言う通りだ。実兄である進治郎のことは、そりゃあもちろん好きだ。・・・・・・けど、異性として愛せるか。と問われたら、YESとはいえない。まぁ、大和のことが好きだからという事実もあるのだが。「だから、優夢を恋愛対象として見るのは不可能に近いんだ」「そうなの・・・。じゃあ、優夢以外には?」ほんと、何度も同じ質問を繰り出されるもんだ。この前は、「デート」中だったので、真愛だと言ってあげたが・・・。俺は本当に恋をしたいと思わない。「いや、いないな」と、そう言うと、少ししょんぼりとした表情をみせる。なんでだろう・・・?もう彼氏彼女の関係は辞めになったはずだが・・・・・・?「ど、どうした?」「いや、なんでもない。・・・それで、思ったんだけど・・・・・・」そうして、真愛がそんな話を持ち出す。「どうして恋をしないの?なにか、トラウマがあったりする?」「・・・・・・いや。特にそういったトラウマはない。騙されたりとか、浮気されたり・・・・・・。だとか、そういった過去はない」それだけは中学3年生になった今でも謎のままだ。義妹である優夢にも、幼馴染の真愛にも。そして、生徒会の後輩の來向にも・・・・・・。皆に恋をするような気持ちはない。別に、魅力がないというわけではない。それでも、優夢や真愛、來向は美人だ。その上に、性格もいい。・・・・・・というのに、何故俺は恋心を抱かないのか。そこが謎である。「はぇー。そうなの」「そういう真愛は、好きな人とかいないのか?」その質問を投げ出され、内心ドキッとしてしまうが、顔に表してはいけないので、平常心をなんとか保つ。「ん~?好きな人?秘密」「お、おぉ。そうか」まぁ、真愛も女の子だ。いくら幼馴染である俺にも、言えないことくらいはあるか。・・・・・・それに、女の子にこんな質問をするのは、あまり良くないか。と、自分が犯した過ちを反省する。「そろそろ戻る?」「あぁ。そうだな」そう言って、俺たちは進治郎達の元へ帰るのだった。
その後も色々なところを回り、気づけばもう夕方に近づいていた。現在、優夢と真愛がネックレスを見て回りたいというので、仕方なくついてきてやった俺たちなのだが・・・・・・。「こんなところにきても、いいのなんて見つかんねぇよなー」「わかるー」アクセサリーとやらに興味のない俺たちは、暇をもて余していた。「ねね!!お兄ちゃん!!このネックレスよくない!?」「あー。そうだなー」「流石に棒読みすぎじゃない?」「だって、いいとか言われても俺にはわかんねぇんだもん。その良さが」「わかってないなぁー。じゃあ、着けたらわかるね?」そう言った優夢は、そのネックレスを首に巻き・・・。「どう?可愛いでしょ」「おぉ。確かにな。可愛い」「えへへー。そうでしょ!」と、自慢げにする優夢におれは一言。「・・・・・・で、いくらするんだ?」「え、えぇっとね・・・・・・に、2万・・・」「小さく言えばいいってもんじゃねぇよ」「ごめんなさい!!・・・・・・それで・・・」「高いからやだ」「お金あるんでしょ?」「いや、あるにはあるけど・・・」それもうヒモじゃん。と、僕は思った。「自分で買えよ・・・」「今1万しか持ってないの。お願い。買って?」そうやってまた甘いその円らな瞳で此方を見つめてくる優夢に、また甘やかすことしかできず・・・・・・。「わ、わかったよ」と、財布から諭吉を2枚取り出してしまうのであった。「ありがとうございます!」「おぉ、礼が言えて偉いじゃないか」「えへへー。そうでしょ」そうしていると・・・。「なぁなぁ。大和」「どうした?」「この勾玉、綺麗だと思わないか?」確かに、そういうアクセサリーに疎い俺でも、この勾玉を綺麗だと思った。透き通った白色で輝いている。まるで、「希望の光」のような勾玉だ。「この勾玉、真珠でできてるんだって」だから、そんな綺麗なわけだ。「いいんじゃないか?」「そこで。だ。この綺麗な真珠の勾玉、4人の御守りにしないか?」「4人の?」「そうだ。この勾玉、真珠でできているのだが、香りは千日紅という花の種類から取られている」せ、せんにちこう・・・・・・?「千日紅という花の言葉は”永遠に”という意味が込められているんだ。それにちなんで、俺らの友情も、”永遠に”変わらないことを込めて、この御守りを持参しようぜ!!」「永遠に。か」死んでも、生まれ変わっても・・・・・・って、事なんだろうな。進治郎と同意見だ。仲の悪い幼馴染なんかになりたくない。だったら、この勾玉を買うことにしよう。「・・・・・・あぁ。いいぞ」と言って、俺たちは最後の買い物を済ませるのだった。




