いつもの何気ない昼食時
そんなこんなで、俺たちは昼食を選んでいた。「お兄ちゃん決めた~?」「選択肢は絞ったが、その中で迷っていてな」「なにが食べたいの?」「担々麺か、激辛ラーメンか、ブル○ック」「全部辛い系じゃん・・・」「今日は辛いものが食べたい気分でな」これなら、こいつは食べ物を一緒にすることはしないだろう。ちなみに、忘れている人もいるかもしれないだろうから、一応言っておく。この少女、無叶優夢という少女は、俺の妹なのだが、とんでもなくぞっこんなのである。そんな優夢は、どこか外食をしに行ったとき、必ずと言っていいほど俺と食事を合わせる。・・・・・・今日の優夢というと、生憎辛い系は無理という顔をしている。「う、うぅぅ・・・」「そうだな・・・・・・。今日は担々麺でもいいか」辛い系といえば、少し臭いのが欠点だが、それなりには美味しい。俺は優夢と違って、辛党なもんで。「うぐぅ・・・。一緒にしたいけど・・・」「やめとけ。今日は辛いの無理という顔をしてるじゃないか」「なんでわかるの!?」「何年お前の兄やってると思ってんだ。そんくらい一目見たら分かる」「お兄ちゃんすご・・・」そんな関心をされつつも・・・。「ま、まぁ。今日はいいか。じゃあ私普通のラーメンにしちゃう!!」「珍しいな・・・・・・。あの優夢ちゃんが、他のものを選ぶなんて・・・」こうやって、進治郎も驚くほどだ。そうして、俺たちは注文を取りに行って・・・。「いただきまーす」と、昼食を食べるのだった。「ん」「なにしてんだ?」突然、優夢が目を閉じて、こちらを向いてくる。「ん!」「いや、なんだよ・・・。麺伸びるぞ!!」「そうだねぇ~」「だねぇ~。じゃなくて、早よ食えよ」本当に、この妹は何をしているのだろうか。「もー!!なんでわからないの!!」「ははっ。大和。分かってやれよ」「まさかわからないなんて言わないよね?」いや。悪いが・・・・・・。わからない。なんだ?キスでも求めているのか?いや、ここは公の場。そんなところで、普通キスを求めるだろうか。優夢ならやりかねない・・・・・・。が、さすがにそんな突然の行動をとらないだろう。「お兄ちゃんって、変なときに鈍感だよね~」「なに言ってんだ。俺は鈍感じゃねぇ」「だったら、わかるでしょ?」「う、うぐっ・・・」「図星~。はぁ。わかった。鈍感なお兄ちゃんに、教えてあげる!!」そうして優夢は、その答えを口にして・・・。「食べさせて!!」「いや、なんでだよ」「熱いから!!」「関係ねぇだろ・・・・・・。自分で食え」「おいおい大和ー。そんなに冷たくなくてもいいじゃないか」「生憎お前らとは違ってシスコンではないんだよ」「そうか?お前、普段から優夢の事しか考えてないじゃん」「それはー・・・・・・。大切な妹だからだよ」「キュン!!」一人キュンキュンしているやつもいるが、まぁ放っておこう。としたその時・・・。「お兄ちゃんったらー!!」「うわっ!?危ないっての・・・。いきなり抱きついてくるなよ」「ほらまたぁー。そんなこと言っちゃって!!ツンデレさんなんだから!!」「そんなんじゃねぇから、はやく離れろ。あと、麺伸びるって」「じゃあ食べさせて!!」「いやだ。自分で食え」「食べさせてくれないと食べないから!!」「作ってくれた人に迷惑だっての。いいから食え」「もー。そんなツンツンしなくていいのに。ちぇっ。・・・・・・わかったよ」「そうそう。それでいいんだ」「大和、大人気ない」そこまでか・・・・・・?「んっ」そうして、渋々麺を口にいれた優夢だが・・・。「あ、あちゅい!!」そんなことを言って、即座に水を口に運ぶ。「嘘つけ。どうせ食べさせる口実なんだろ」「じゃあ、たへてみなよ!!」そう言われたので、麺を口に運んだ。「むっ。確かにちょっと熱いな」けど、そこまではならないと思うがな。優夢は、それほど猫舌ではなかったはず。「そこまでなるか?」「わたし、ねこじたなの・・・」「そうだったっけか?」「しょうなの!!」確かに熱そうな表情はしているが・・・。こいつ、演技は上手いからな。「ねぇ。おにいちゃん・・・」「その後に出てくる言葉はもうわかっているが・・・。一応聞いてやろう。なんだ?」それから、予想通りの言葉が優夢の口から放たれて・・・・・・。「ふーふーしてたべさせて?」と、そう言ってくるのだった。「なんで自分で食べれないんだよ・・・」冷ますくらいできたじゃねぇか。この少女は、いつもこうやって甘える口実を作っている。それに気づいているのに、俺はついつい甘やかしてしまう。・・・・・・もしかしたら俺って、本当にシスコンだったりするのか!?「はぁ。仕方ない」結局甘やかすことしかできない俺は、その箸を取り・・・。「ふーっ。ふーっ。これでいいか?」「うん」「じゃあ、口開けろ」そうして、その麺を優夢の口まで運び・・・。「んっ。やっぱ、お兄ちゃんに食べさせてもらったら倍美味しい!!」「そうかそうか。それはよかった。じゃあ後は自分で・・・・・・」「じゃあ、全部よろしくね!!」「えぇ・・・・・・」全部?その量に、思わず目を引いてしまうのであった。「相変わらず、中のいい兄妹だよねぇ」「そうだねー。でも、大和も素直に優夢に食べさせてあげればいいのにね」「こいつにもいろいろあるんだろう」「それよりも、お兄ちゃんも私に食べさせてくれる?」「あぁ。快く引き受けてやるよ」そうして、僕ら陽村兄妹も、あーんをしてあげるのだった。




