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始まりの物語  作者: 柴田優生


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彼氏

そうして目を覚ましたときには晴れ晴れとした空が俺の視界には映っており・・・。「これで安心して帰れるな」昨日の嵐が嘘だったかのように、まだ夜明けを迎えたばかりなのに青い空がよくわかる。携帯で交通機関の情報を調べても・・・。「運休せずいつも通り走行。か」こりゃあすぐ帰れそうだな。まぁ、とりあえず真愛を起こさないように布団から出よう。と、そうして動こうとしたのだが・・・・・・。(・・・・・・あれ?)何故だろう。体が、動かない。まさか、金縛りか?と思ったが、それはない。このホテルのレビューを見た時、幽霊が出るなどの情報は書いてなかった。だったら・・・なんで?と、理由を探っているうちに、俺の体にある違和感に気づく。「・・・・・・ん?あれ?」これは・・・。「こいつ・・・。」俺がベッドから抜け出せない理由が明確になった。何故なら・・・。(こいつ、締め付ける力が強すぎる・・・!!)念のため、昨日の出来事を思い出すとしよう。まず、こいつとホラー映画を見て、添い寝するかしないかで口論。結果、一緒に寝ることになって、俺は「彼氏」として真愛を抱きながら寝た。・・・・・・この時点で、普通じゃないのかもしれないが、まぁ、これが現実なのである。つまり・・・。まだ寝ている真愛は、この腕を離すことはない。さて・・・・・・。どうしようか。もう、彼氏役は終わっているのだ。・・・・・・だから、俺と真愛の今の関係性はただの幼馴染。・・・・・・<<ペチン>>自分だけ美味しい思いをしていることに対して、自分でパンチをいれておく。うん。痛い。どうやら昨日からの出来事は、夢じゃなかったようだ。と、一人でそんな芝居をしていると・・・。「ん」「お?」起きたか?「んん?もう朝?」「あぁ。朝だ。起こしてしまったか?」「んーん。自然的に目が覚めたの。おはよう」「あぁ。おはよう」「・・・・・・」と、そういつも通りの挨拶を繰り出しながら、真愛はもう一度寝ようとして・・・。「いや、おい」「ん?どうしたの?」「ちょっと、いろいろしたいことがあるから、ちょっと離れてくれませんかね」「んー?いやだ」・・・・・・なんで?「な、なんでだ?」「だって、まだ、終わってないでしょ?」「なにが?」「まだ、大和は私の彼氏なの・・・」「・・・・・・え?」約束と違うぞ。真愛よ。「おいおい。真愛ちゃんよ」「どうして急にちゃん付けなの・・・。まぁ、そんなことはどうでもよくて。どうしたの?」「約束では、昨日限りでの彼氏だっただろ?・・・・・・なのに、なんで今日も彼氏役をしなければいけないんだ?」「・・・・・・だって、デートはまだ終わってないじゃん。昨日は、今日だけって言ったけど、それは、まさかホテルに泊まることになるとは思っていなかったから。デート中は、彼氏を演じないとだめなんだよ?」「・・・」「ヘッ」「その顔笑ってるじゃねぇか!!」それはそうとして・・・。確かに、真愛が言うことは間違いではない。昨日は「今日だけ」と言ったが、真愛が言いたかったのは「デート中は」という意味での今日だけだ。遠足と同じ法則だ・・・。家に着くまでが、デート。・・・・・・なら、俺のすべきことは、家に無事到着するまで、真愛の「彼氏」であり続けること。なるほどなるほど。・・・・・・「だからと言って、離れないのは理由にならないぞ」「・・・・・・」そう言った瞬間、真愛は少し寂しそうにしながらも、俺を解放するのであった。

 それから少し時間は経ち、気づけばお昼時になっていた。朝食を済ませ、少し町を回った後、俺たちは電車に乗り、気づけば故郷へと帰ってきていた。「あぁ。・・・・・・なんか、懐かしいような・・・。そんな感じがする」「わかる~。言って一日しか経っていないはずなのに、なんか長い間小野町に帰ってこなかったみたいな・・・。そんな感覚」それと同時に、このデートが終わってしまうのか。と、そう考えると寂しいな。と思ってしまう自分もいた。なんやかんや言って、いろんなことがあった。が、それら全ての事が楽しく感じられた。今回のデートは、いい気分転換になったな。「それじゃあ、帰るか」と、俺がそう言った直後・・・。「いや、待って!!」歩きだそうとしていた俺なのだが、真愛によって、その足が止められるのだった。「ん?どうした?」「・・・あの!!十分楽しかったし、満足できた。・・・・・・けど、最後に、いつもの町で遊ばないかな。って思って・・・・・・」「はあ。なるほど?」まぁ一応、まだお金には余裕があるし、悪くはないが・・・。「何処に行くっていうんだ?」「・・・久しぶりに、デパートにでもいく?」案外、悪くない誘いだな。と、そう思った僕は、そのお誘いに「あぁ」と、そう返事するのであった。

 普通のカップルなら、デパートでデートとなったら、映画に行ったり、フードコートで昼食を摂ったり、ゲームセンターへ行ったり・・・などとするだろう。確かに、俺たちがデパートへ行くときも大体そんな感じだ。映画はたまにしか見ないが・・・。ゲームセンターへ行ったり、真愛や俺が好きなぬいぐるみを見て回ったり・・・。そんな感じだ。ただ、そんな俺たちは、普通のカップルのデートとは違って、最後に決まって寄る場所がある。それというのは・・・。「ねぇねぇ!!見てこれ!!」「おぉ。これ綺麗だな」そう。アクセサリーがあるお店だ。初めは、真愛が最後にアクセサリーを買って欲しい。というおねだりから始まったのだが、デパートで遊ぶ度に、俺がお礼として真愛の好きなアクセサリーを購入していた。「どれにするか決まったか?」「んーー。悩ましいところ」現在真愛は、どちらのアクセサリーにするかで脳内会議中だ。ひとつはちょっとチャラそうなイヤリングと、真珠が刻まれているイヤリング。「でも、真珠のやつは高いからなぁー」「別に、高くてもいいぞ」確かに、目が飛び出るような額がそこには書かれてあるが、別に真愛に贈るものだったら全然容易い値段だ。・・・・・・何度か、優夢に買わされているくらいの値段だからな。「んーじゃあ、ちょっとお高いけど、お言葉に甘えてこのアクセサリーを買ってもいい?」「あぁ。いいぞ」「やったー!!ありがと」「うおっ!?ちょ、おい・・・」いきなり抱きついてくるなよ。いくら彼氏とは言っても、はずかしいだろうが。回りの目を気にしながらも、俺は会計を済ませて、そうしてお店から出るのであった。「んじゃ、そろそろ帰ろうか」「うん。・・・・・・けど、ちょっと待って」「ん?まだなにか欲しいものでもあったか?」「いや、そうじゃなくて・・・」「?」すると、真愛は目を閉じて・・・。「ん」と、なにかを許したような反応を見せつけるのであった。「い、いや。なにしてんだ?」「・・・」黙ってたらなんもわかんねぇよ。そうして、俺が真愛から答えを待っていると・・・。「ヘタレだなぁ・・・。ほら、貴方は彼氏なんだよ?だったら、別れ際、なにするかわかっているよね?」「・・・い、いや、すまないが、わからない」「もー。これだから」そして、やがて真愛はそんな衝撃的なことを言い出すのであった。「・・・・・・別れのキスを、して___」・・・・・・と。「は?キス?」「・・・」答えを口にした瞬間から、真愛は黙り込んでしまった。・・・・・・するしかないのか?忘れてはいけない。彼氏とは言っても、あくまで”偽の彼氏”なんだ。そんなキスなんかしてもいいのか?「ほ、本当にキスをしないといけないのか?」「ん」こりゃもう完全に待ち構えていますわ。許せ。天使の無叶大和よ。そうして、俺は真愛の方へ一歩歩み寄り・・・。その刹那。「・・・・・・なししてるんだ?」と、そんな冷えきった声が響き渡るのであった。

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