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過去

普通の妹といえば・・・・・・「お風呂?一緒に入るわけないじゃん。きもいからどっかいって」「一緒に寝るわけない。男臭いし」「キモ兄貴と一緒にいるだけで不快感を覚える」というのが普通だ。だが、俺の妹といえば・・・・・・「お風呂入ろ!!」「今日も一緒に寝よ!!」「お兄ちゃんと一緒にいられて幸せ!!」である。お風呂まで一緒に入ってくるのは流石にまずいので、いつも断っている。寝るまでなら・・・・・・まぁ、兄妹だからまだいいとして、問題は現在の状況だ。現在優夢は俺の隣で寝ている。それはもうぐっすり、俺の腕にしがみつきながら寝ている。正直言ってしまえば、優夢の寝顔は可愛い。ただ・・・・・・(全然寝れねぇ・・・・・・)いつも抱きつかれながら寝ているのだが、その締め付ける力が強すぎる。だが、日によって強さが違ってくる。弱いときは、いい夢を見ていて、強いときは、怖い夢や嫌な夢を見ている。今日は力が強いので、恐らく怖い夢でも見ているのだろう。「お兄ちゃん・・・・・・苦しいよ。」・・・・・・忘れかけているだろうが、優夢はまだ喘息を患っている。寝ているときだって、咳き込むときは多々ある。辛いのはわかっている。変わってやりたいが、そんなことはできない。だから僕は、その代わりに辛そうなときは優しく寄り添っている。ブラコンすぎるとはいえ、俺の大切な妹であることには変わりない。だから、より優しく寄り添う。「ゴホッゴホッ」その時、優夢が咳き込む。あぁ。そうだよな。辛いよな。俺は、優しく優夢を起こさないようにしながら、優夢を抱きしめる。そして、寝ている優夢に語りかける。「辛いよな。わかっている。大丈夫だ。お兄ちゃんがついている。辛いときは俺に寄り添え。それと、ごめんな。辛い思いさせて。代わってあげれるなら変わってやりたいが・・・・・・」そんな事を俺は呟く。寝ている優夢には聞こえていないのだがな。<<ギュッ>>少し抱きしめる力が強くなった。まぁ、そんなことは気にしないでおこう。今日は俺も寝ることにしよう。夜更かしは体に毒というしな。そうして瞼を閉じた俺は、すぐに眠りにつくのであった。

お兄ちゃんは、頑張り屋さんだ。私のために努力して、やがて強靭な肉体を手に入れた。今まで、何度も私はお兄ちゃんに助けられた。その恩は今でも忘れず、気づけば私はお兄ちゃんの事が大好きになっていた。兄妹として、そして。一人の男の人として・・・・・・。だが、恐らくそんなお兄ちゃんは、私の事を邪魔だと思っている。・・・・・・そう思ったが、違った。お兄ちゃんがこんなことを言うとは思わなかった。最近、お兄ちゃんは私に冷たい。咳き込んだときなどは優しくしてくれるが、それ以外は塩対応だ。お兄ちゃんは、私にも素の自分を出してくれない。やっぱり、”昔のあの事”が関係しているのかな。

昔、お兄ちゃんは虐められていた。喘息の妹、無叶優夢につきっきりだったからだ。周りも、私が喘息を患っていることはわかっていたが、お兄ちゃんの友達は違った。「お前、この歳になっても妹大好きなのか?ダッセー」「妹は大好きですか~?うわ、きもwシスコンじゃん」「みんなー!!妹大好きお兄ちゃんが来たぞー!!w」などと。それでもお兄ちゃんは言い返さなかった。その出来事が積み重なって、お兄ちゃんは自閉するようになった。勿論、お兄ちゃんの中で一番信頼をしているのは私だろう。でも、私にさえも自閉する。私は、できるだけお兄ちゃんにばれないようにしている。私はあの事で罪悪感を感じている。それがお兄ちゃんにばれたとき、お兄ちゃんは絶対こう言うだろう。「お前が責任を感じる必要はない。あれは、俺が悪いのだ。お前のそれは生まれつきのものだ。優夢は悪くない。お前は気にするな」と、お兄ちゃん、優しいからなぁ。やっぱり、お兄ちゃんを困らせないためにも、兄離れはしないといけないのかな・・・・・・。正直、お兄ちゃんとは離れたくなんかない。だって、何度も私を救ってくれたのだ。なのに、離れるなんて。まさに、恩を仇で返すようなもんだ。でも、私がブラコンである限り、お兄ちゃんは自分を追いやり続ける。(お兄ちゃんのためなら・・・・・・)私は決心した。これからの生き方を決めた。私は明日から、お兄ちゃんに対して塩対応を貫くことにする。「これでお兄ちゃんが救われるなら・・・・・・」お兄ちゃんを救えるなら、手段は問わない。きっとこれが最後になる。お兄ちゃんと一緒に寝るのは、これが最後になるだろう。だから、私は最後に満足できるように、もう一度お兄ちゃんを抱きしめる。そして・・・。「おやすみ。お兄ちゃん」と、そう呟いて、私は眠りにつくのであった。

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