成長
つい、怒って出ていってしまった。私には、お兄ちゃんがいる。しかし、そのお兄ちゃんとは、実は義兄で、私はそんなお兄ちゃんに恋愛感情を抱いていた。そんな大好きなお兄ちゃんに・・・・・・「大っ嫌いって言っちゃった・・・」本当は大好きなのに、思ってもないことをお兄ちゃんに言ってしまった。お兄ちゃんの気持ちも考えずに・・・・・・。「はぁ」と、公園のブランコに腰を掛けながらため息をつく。本当は大好きだ。・・・・・・けど、私は、お兄ちゃんにそう感情的に言ってしまう以上、まだ私は子供なんだろうなぁ・・・・・・。ど、そんなことを考える。勿論、私にも反省点ってあるのだ。・・・・・・だが、お兄ちゃんが、嘘をつき続けるから・・・!!「・・・・・・違うか」あれは、きっとお兄ちゃんにとっての優しさなんだろう。私は、それに不満を抱いていたわけなのだが、それで、お兄ちゃんに怒っては行けない。大切で、大好きなお兄ちゃんを傷つけては行けない。だから、私は子供になるのをやめよう。・・・ただ、「お兄ちゃんには、甘えてしまうのよなぁ・・・」なんせ、私の大好きなお兄ちゃんだ。ただ、頼りっぱなしというのもよくないんだろう。そうすると・・・お兄ちゃんを追い詰めてしまうから。「・・・・・・もし、このまま放っておかれてしまったら・・・」もう、お兄ちゃんと話せなくなるかもしれない。と、そう考えると、胸が苦しくなる。どうも、こういう時は悪いことしか想像がつかない。「・・・・・・いや、大丈夫だ。優しいお兄ちゃんだから、きっとそんなことをするはずがない!!・・・・はず」自信はない。だって、私はお兄ちゃんじゃないから。「・・・・・・はぁ」ふと、空を見上げる。今日の空は、夕日のオレンジに染まっている。もう、夕暮れ時なのだ。もし仮に、私が帰らなかったとして、それでお兄ちゃんが家で待っていたら・・・・・・心配を掛けてしまうのだろうか。・・・すると「優夢」「!!」・・・・・・。やっぱり、私はお兄ちゃんがいないとダメみたい。この場に、お兄ちゃんはいないのに、お兄ちゃんの声が聞こえてしまう。それほど、私はお兄ちゃんに依存をしていた。だったら、ここは、私が謝りに行くべきなのだろうか。いや、きっと、お兄ちゃんは私を探していると思う。だったら、私は待っておくべきなのだろうか・・・。「ねぇ。なにもわからないよ。お兄ちゃん」と、そんな言葉を溢すのだった。
俺は、ブラコンである妹と喧嘩したことがない。・・・が、優夢がなにも言わずに家を出ていくことはある。そのときは、決まって近くの公園へ向かう。公園に着いたら、優夢はいつもブランコへ腰を掛ける。少し泣いていて、俺が声をかけると溜めていたものを全開放するかのように、声をあげて泣きじゃくる。俺は、そんな優夢を何度も見てきた。恐らく、今回もきっとそうだろう。大嫌い。とは言ったものの、きっとそうではないだろう。あれは感情に任せていった結果、そんな思ってもないことが口に出てしまった。とか言う感じだろう。だから、俺はそんな優夢に謝るために、その場所へ向かう。やがて、俺がその場所へ到着すると・・・。「あー。」案の定、とはいってはいけないが、まぁ。そうだよな。俺が、すぐに追いかけなかったのが悪いのだ。仕方ない。助けてやるか。・・・・・・と、そう思った俺なのだが、「・・・やめておいてやるか」俺は、大切な妹がピンチな状況にいるというのに、助けるのを躊躇った。なぜかというと・・・「私は・・・私は・・・!!いつもお兄ちゃんに助けられてばっかではだめなの!!いつもお兄ちゃんが手を差し伸べてくれて、それにありがとうしか言えない。・・・それに頼ってばっかじゃなにも成長できないの!!・・・だから、ごめんなさい。そのお誘いには乗れないわ」優夢は、自分が成長するために自分一人でナンパを断っていた。「やればできるじゃねぇか」その優夢の真剣さから、ナンパをした男は申し訳なさそうにして、そそくさと去っていった。これが、助けるのを躊躇った理由だ。成長の鍵となる場面で、わざわざ助け船を差し出すのは違う。「やった・・!!お兄ちゃんに頼らずに、一人で撃退できたよ。お兄ちゃん」あぁ。ほんとうに、よく頑張ったもんだ。そんな頑張った妹に、会いに行ってやろう。そうして、俺は優夢のもとへ歩み寄り・・・「あぁ。よくやった」「・・・え?お兄ちゃん・・・・・・!?」「あぁ。無叶優夢の兄、無叶大和だ」そのとき、優夢は何も言わずに、今にも大泣きしそうな顔で、俺に飛び付いてきた。「よかったぁ・・・!!迎えにきてくれて!!もし迎えに来なかったらって、考えたら・・・胸が苦しくなったの。寂しかったよぉ・・・!!」「・・・」「もし仲直りできないままお兄ちゃんと話せなくなったらって考えたら・・・悲しかった。大嫌いに思われたらどうしようって」そんな、不安に思っていた優夢に対して、俺は言う。「大丈夫だ。俺は優夢に大嫌いって言われたとしても、俺がお前を嫌いになることはない。俺は、優夢のことは好きだ。大切だ。見捨てたりなんかしない。怒ったっていい。嫌いって思われたっていい。・・・・・・俺がお前の兄である以上、いつでも優夢の傍にいる」「お兄ちゃん・・・!!」そうして、抱きついてくる優夢を、俺は抱きしめ返す。「悪いな。告白の返事を返さないままで。嘘を、つき続けて・・・・・・。本当に、ごめんな」「いいよ。勿論。お兄ちゃんと話せるなら・・・・。全然安いものだよ」そうして、再度俺は優しく優夢を抱きしめる。「お兄ちゃんの胸、暖かい」小さい子供のように、優夢は泣きじゃくる。そんな優夢を、甘やかす。大きく声をあげて泣く優夢の泣き声は、公園中に響き渡る。俺の妹は、いつまで経っても成長をしない。・・・・・・が、今日、ひとつ優夢は成長をすることができたようだ。未だに泣く優夢が落ち着くまで、優しく抱きしめることにしよう。
「やっぱり、いい兄妹だよなぁ」と、俺はそんな関心を抱く。「そうだねぇ。こんな感動シーンは私たちにはつくれないね」「そうだな」優夢ちゃんは、お兄ちゃんのことが大好きな子供のような子だ。それに対して大和は、妹に対して無愛想に思えるが、誰よりも妹想いで優しい兄貴。「全く、世話が焼けるぜ」「私もお兄ちゃんに抱きついてあげようか?」「んー。何か違うなぁ・・・」「なんでよ。こんなかわいい妹が誘ってあげてるんだよ?」「ははっ。それもそうだな。それじゃあ、こいよ」と、そう言って俺が腕を広げると・・・・・・「失礼して」と、そう言って俺の妹が俺の懐に入り込んでくるのだった。




