失踪
その知らせを聞いた途端、私は混乱に陥った。なぜなら、つい30分前まで、お兄ちゃんと少し会話をしていたから。「失踪・・・・・・?」私の頭の中で、その言葉が循環する。「どういうこと?」「わからないけど、先生達がそう騒いでるの」今日は、特にお兄ちゃんに変わった様子はなかった。というのに、お兄ちゃんが失踪するわけがない。きっと、何かがある。とそう考えた私は、すぐに動き出すのであった。
俺が部活に行こうとしていたとき、俺はとある男の子達に呼ばれていた。「優夢ちゃんのお兄ちゃんだったか・・・・・・。ちょっと裏来い」と、そんな強面のお兄ちゃんに呼ばれるもんで、仕方がなくついていってやると・・・・・・。「痛いなぁ」いきなり、何も言わずに暴力を振るわれるのであった。痛い。と言っているが、はっきり言ってしまえば、日々鍛えているから別に掠り傷にもならない。だが、俺が痛そうな表情を見せると「こんな程度で悶えてやんの?だっせW。お前に妹を守れるのか?」少しイラっときてしまうが、なんとかその感情を食い止める。「お前、兄だからって威張っているが、優夢ちゃんは俺らの優夢ちゃんだ。卑怯な手を使って優夢ちゃんを洗脳するな!!それでも、兄なのか?」「別に、俺は優夢になにもしていない。優夢があの様になったのは、昔喘息が酷いときに、俺が傍にいて支え続けたからだ。それのどこに、洗脳する要素がある?」「だからなんだってんだ!!優夢ちゃんの弱みでも握っているんだろう。そんな汚い奴が、優夢ちゃんに近寄るな!!」「いや、近寄るな。って言われましても、、兄妹なんでね・・・・・・。」「口答えすんな!!」そのとき、俺の腹に痛烈なパンチが入り込む。強面の兄ちゃんが呼び出すから、まぁなにかされるんだろう。とは予想ついていた。が、それがまさか優夢のことで、更には兄である俺を痛め付ける。と・・・・・・。もし優夢がいたらどうなるのだろうか。おそらく、このお兄ちゃんたちは、優夢のことを好いている。強さで見れば、全然良い彼氏になるだろう。・・・・・・が。そんなお兄ちゃん達に対して、俺は本心を打ち明ける。「兄である俺から言おう。優夢を好きになるのは自由だ。が、暴力をしたり、いちゃもんをつけて自分勝手に動くやつに、優夢がやれん。もう少し自分を磨いてから出直してこい。・・・・・・だが、その熱意は褒め称えれるほどだ。お兄ちゃん達のような強さがあれば、ナンパなどの危機から優夢を守り抜くことはできるだろう。しかし、頭に血が上ったとき、気持ちの制御をできないようじゃ、それに、暴力で解決するような、そんな人たちにやれないな」そんな冷淡な理由を述べた。それに対し、お兄ちゃんたちは・・・。「あ?何を偉そうにほざいているんだ?・・・・・・そうだ。お前、たしかスポーツ全般得意なんだよな」「あぁ」「ということなら、勿論肉体もそれほどには整っているんだよなぁ。・・・・・・それなら・・・」そうして、その強面なお兄ちゃんたちは大きく腕を広げて・・・・・・。「一発俺を殴ってみろよ」そんなことをいうお兄ちゃんに、「やだよめんどくさい」「あれれ~?できないんでちゅか~?そんなんだと、大好きな大好きな妹も守れないでちゅよ~?」その言葉に、俺の中のなにかが切れる。あぁ。これほど頭に血が上ったのはいつぶりだろう。「あぁ。確かに、妹はそりゃあ好きだ。腐っても、家族なことには変わりない。・・・・・・が、”守る”というのは強いから守れるというわけではない。弱くても、自分の身を呈してでも守る。それが、大切な人を守るということだ」「はぁ?お前は何をいっているんだ。お前は武力行使をされても、抵抗もせず身なりを投げるのか?ははっW。滑稽だ。あほらしい。だったら、自分が死ぬだけじゃねぇか。力こそあっての守護だろ?なのにお前は・・・・・・。そんな弱い奴が優夢ちゃんを守るって・・・・・・。あほじゃねぇのW」「俺は優夢の兄だ。なにがあろうと、俺は優夢を守る。それが兄である俺の役割だ」すると、強面のお兄ちゃんはもう吹っ切れたのか。表情を変え、そして顔を隠す。その直後に・・・・・・。「もう。いい。もう知らねぇ。」そういった途端・・・・・・。
探しに探しまくった。その結果、私はお兄ちゃんを発見した。のだが、私がお兄ちゃんの姿を視認したとき、お兄ちゃんの近くにいる人が暴力を振るっていた。それと同時に、こんな言葉が聞こえてきた。「お前が優夢ちゃんと一緒にいる資格はねぇよ!!」その時、私の中の糸が切れた。そうして、私の意識は無意識のような状態になった。そして、私は歩き出して・・・・・・。「お兄ちゃんを、虐めないで!!」「あ?・・・・・・って、優夢ちゃん!?」「ど、どうして此処に・・・」「そんなことはどうでもいいでしょ。ねぇ。あなた達、お兄ちゃんになにしたの?それと、その言葉はなに?」「いや、なにもしていないよ!!その言葉って・・・。その言葉の通りだ。こいつは優夢ちゃんに相応しくない」「どうして、相応しくないの?」「そうだよな・・・・・・。こいつに脅されているから、強気になるしかないんだよね・・・。かわいそうに」「なに?脅されているって」「大丈夫だよ。優夢ちゃん。俺たちが、守ってあげるから」そうすると、その人達はお兄ちゃんに歩み寄って・・・・・・。「っ!!」「お兄ちゃん!!」私は咄嗟に走る。「お兄ちゃん!!」「あぁ。大丈夫だ。別に、痛くなんかない」「大丈夫だよ?無理しないでね」「この様だ。優夢ちゃん。こいつは、優夢ちゃんの兄でありながら、これだけ弱いんだ。・・・・・・・それほど、血反吐を吐くくらいには、こいつは弱い。なぁ、優夢ちゃん。こいつなんかよりも、俺の方が余程強くて、幸せにできる人間なんです。なので・・・・・・。俺と付き合ってください」「はぁ!?お前、抜け駆けかよ!!優夢ちゃん!!俺と付き合ってください!!」「俺も!」「俺も!!」そんな状況に、俺は「優夢。すっかりモテモテになったな笑」「お兄ちゃん、今はそんな状況じゃないでしょ」「お、おう。すまん」妹に怒られてしまった・・・。「それで、あなた達」「は、はい!!」「なに?相応しくないって・・・・・・。勝手に決めないで。私は、お兄ちゃんといたいから、お兄ちゃんが大好きだから、お兄ちゃんと一緒にいるの!!私たちは兄妹なの!!兄妹でも、なんでもない貴方達が勝手に決めつけないで!!それに、私はお兄ちゃんに弱みなんかなにも握られてな・・・」「いや、意外と知ってるぞ」「え?」「実は、俺の衣服と優夢の衣服をこっそり交換していることとか、俺の体を拭いたタオルでしか自分の体を拭いたりしないこととか、俺の使ったコップ以外使わなかったりとか・・・・・・。挙げればキリないぞ」「え、え・・・・ぇ・・・・・・」「?」「えぇーーーーーー!!!!!!!」その時、突然、優夢の顔が真っ赤に染まるのだった。「え、え、ば、バレてたの・・・・・・?」「バレバレだぞ。長い間同じ屋根の下で暮らしているんだ」「うそぉ・・・」「え、なんか二人だけの世界にはいったんだが・・・」「あぁ。ごめんなさい。貴方達とは付き合えないわ」「それはどうして?」「お兄ちゃんにそんな酷いことをいう人は嫌だ。それに、すぐ暴力を振るうし、そんな人とは付き合えない」「・・・・・・そっか。そうなんだね」「うん」これで、一件落着。かと思われたのだが・・・・・・。「はっ。じゃあ、なんで俺が暴力を振るうのか。わからせてやるよ」と、そう言った刹那・・・・・・。




