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天空記  作者: 緒俐
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第九十七話:飛んで火にいる夏の虫

 深夜一時。天宮家にいくつもの黒い影が忍び寄っていた。


 通常ならまだこの時間は天宮家次男坊殿の部屋の明かりぐらいついているのだが、生憎今宵は電気そのものが通っていないため天宮家は真っ暗である。

 そんな時に人がやることなど、この時間ならば寝るぐらいしかないだろうという予測を立て、街灯の明かりだけを頼りに天宮家に侵入する。


「寝静まったようだな」

「よし、いくぞ!」


 門をくぐり庭に回り込めばそこにはテントが組み立てられており、おそらくそこにターゲット達は寝ているのだろうとテントを開ければ、いきなり少年が顔面に飛び蹴りを決めてきた!


「なっ!」


 影達はいきなりの事態に慌てると、家の窓が開き懐中電灯を持った青年と少女が影達を照らし付けた。

 そしてさらに火の力を操る少女が無数の火球を飛ばし一帯が明るくなる。


「やっぱり仕掛けて来たよ」

「飛んで火にいる夏の虫、これだけあからさまな罠を仕掛けておいてやってくるなんて本当馬鹿ですね」

「人相から見れば紅蓮連合会でしょうか」


 懐中電灯と柳が飛ばしてくれた火球の明かりで、真っ暗な夜の闇の中にいかにも人相の悪い男達の姿が浮かび上がる。


 しかし、明かりに照らされているからといってやはり怯む男達ではなかった。手にしたナイフやサイレンサー付きの拳銃を向けてくる。


「貴様ら、大人しくしといた方がいいぞ! 俺達は」

「はいはい、どこの馬鹿かなんて分かってるからさっさと掛かってこいよ」


 好戦的な三男坊は微笑を浮かべて相手を挑発するかのように、自分にかかってこいと中指を動かす。

 その生意気な態度に見事に挑発された馬鹿は一直線に翔に向かっていった。


「死ねぇ!!」

「よっと!」


 一直線に心臓を突こうとしたナイフを体勢を低くしてかわし、翔は相手の顎を殴り飛ばす。それから銃を持った男達に向かって行き、上段回し蹴りを相手に決めてぶっ飛ばし、立ったままの男達にその体をぶつけた。


 それをやれやれといったように紫月は見ていたが、柳に懐中電灯を預けて彼女も庭に出ていく。

 なんだかんだで彼女も好戦的な性格をしているわけだ。


「小娘を狙うんだ!」


 庭に出て来た紫月を見てチャンスだと思った男達は紫月に突撃していったが、それは大きな間違いだとすぐに知ることになる。


「吹き飛びなさい」

「うわあああ!!」


 風の力を足に宿して一蹴りしただけで男達は紫月に触れることもなく吹っ飛ばされた。それから紫月は軽やかに舞い上がり、すらっとした足で男の脳天に踵落としを決める。

 さすがにあれは痛そうだなと、骨折患者を何人も出している少年は自分のやってることは棚に上げているのだった。


「化け物が……!」

「はい、そんな言葉も聞き飽きましたからさっさと所木に指でもつめてもらいに帰りなさい!」

「がっ!」


 秀は最後の一人の小指を簡単にへし折ると、紅蓮連合会の馬鹿どもは月並みな台詞だけはいて消えていった。


「思ったより呆気なかったな」

「そうですね」


 翔は自分達を捕らえに来てる人物が四人もいると聞かされていたため、多少は楽しめるのではないかと期待していたが、どうやら今回はハズレだったようだとつまらなそうだ。


「まだ相手は僕達の戦力をよく理解してないのでしょう。情報だけは与えられていても生かされていない。

 高原の後釜争いでターゲットは全員僕達には違いないようですが、やり方は様々みたいですね」

「ふ〜ん、ってことは相手は一枚岩じゃないって事か?」

「ええ、だけど組まざるを得なくなるでしょう。警察も菅原財閥も動くとなれば個々で動くのは危険でしょうし」


 それから秀は車のキーを沙南に取って来てもらい翔に一言告げた。


「さて、じゃあ僕はちょっと出てきますから翔君、皆の事頼みましたよ」

「へっ? こんな時間にどこ行くんだよ」

「携帯の充電です。朝には戻りますから」


 そうにっこり笑って秀は外出していった。



 一方、病院では……


「分かりました。ありがとうございます、宮岡先輩」

『ああ、じゃあな』


 龍は机の上の固定電話の受話器を置いた。当然の事ながら、龍も啓吾も携帯は止められているようだ。

 しかし菅原財閥の力の所為か、紗枝の携帯は無事のようだが。


「良ちゃん何だって?」

「紅蓮連合が家を襲って来たってさ」

「で、どうせ次男坊達が蹴散らしたんだろ?」

「ああ。まぁ、その辺は全く心配してないんだが問題はハワードのダニエル・フラン。一科学者としての情報は掴めたんだが思ったよりガードが固くてな、宮岡先輩の情報網でも結構苦労してるらしい」

「珍しいわね。ミス・セディの情報は結構あっさりだった気がするけど」


 同じハワード財団に所属しているにも関わらず、ダニエルの情報がなぜか掴みにくいことに宮岡も疑問を浮かべている。

 それもハワードの重要ポストにいないただ優秀な科学者の情報が掴めないのだ。


「ああ、でも相手は優秀な科学者だからね。高原老の後釜を利用する頭脳はあるわけだし」

「でも楢原だけなんじゃないの? 利用しようとしてたのって」

「どうかな。宮岡先輩に簡単に尻尾を掴ませない科学者が楢原だけを利用してるとは考えづらいね。それにもう一つ、医師会が関わって来てるのが少し気になってるんだよな……」

「ああ、ハワードがまた絡んで来てることは確かだしな」


 啓吾はこの前ハワード国際ホテルで出会ったロバートの事を思い出していた。

 解剖マニアという人種があの日以来、ただ大人しくしてるとは考えづらいのだ。そして何より自分の過去をえぐる組織が存在しているのに……


「……龍、そのダニエル・フランって奴の顔写真とかあるか?」

「ああ、確か……こいつだな」


 パソコンの画面に若き科学者の顔が映し出される。その顔を見て啓吾の顔に少し眉間が寄って、それはすぐになくなった。


「何? なんか心辺りでもあるの?」

「いや、ただ面だけ見とこうかと」

「ふ〜ん、だけど金髪にブルーの目って女の子受けしそうよね」

「ああ、だけどこういう顔って女にだらし無いって感じだよな」


 啓吾の意見に龍と紗枝は複雑そうな表情を浮かべた。


「何だよ」

「ああ、そのだな……」

「啓吾に言われるほどひどいのかとね……」

「へいへい、俺は龍と違って手が早いよ。だが、こういうタイプは絶対手を出してはいけない女に手を出すんだろうけどな」


 ニッと啓吾は微笑を浮かべる。龍にはよく意味が分からなかったようだが、紗枝に溜息をつかせるには充分だった。


「啓吾がいうと何でこんなに納得しちゃうのかしら……」

「龍と違うからだろ?」

「そうよね……はあ〜」

「どうしたんだ二人して?」


 会話の意味が全く分からず龍は尋ねると啓吾はポンと肩に手を置いた。


「こいつに沙南お嬢さんを見せない方がいいって事だ。俺は本当にいい女は抱かない主義だがこいつは奪ってでも抱くね。

 その前に龍、やっぱりいざというときのために沙南お嬢さんをさっさと自分のものに」

「啓吾っ!!」


 真っ赤になる龍をみて啓吾は笑った。しかし、紗枝は啓吾が言ってることはあながちただの推測とは思えなかった。


 パソコンの画面に映る若き科学者の噂話は聞いたことはある。「女を女として見ない、彼は科学者だから」と……



天宮家に紅蓮連合会がやってきましたがあっさり倒されてしまいました。

さすがに秀と翔、紫月ちゃんがいては勝てるはずがありません。

そしてそんな騒ぎがあっても末っ子組はとっくに夢の中です(笑)

夜更かし出来ない小学生です。

次の日もラジオ体操がありますからね。


そして最近やけに男女間の話が多くなって来てる啓吾兄さん。

一応15禁なんで会話ぐらいは入れようと思うと啓吾兄さんに頼るしかありません(笑)

だけど自分がまともじゃないと言ってる性か相手を見抜く目もお持ちな様子。

性格ちゃらんぽらんな割には鋭いですからね。


だけど龍、やはり純情みたいですね……




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