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天空記  作者: 緒俐
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第八十一話:南天空太子

「どっきやがれ〜!!」

「うわぁ〜〜!!!」


 天宮家三男坊は次から次へと襲い掛かってくる警備員達を蹴り飛ばしていった。

 その後ろに続く純と紫月は楽で良いな、と思いながら目的地を目指す。


「秀兄さんと柳さん無事かなぁ?」

「そうですね、二人とも別々の場所にいることだけは確かなんですが」


 コンパクトに映る発信機の反応は二人が別々にいることを表示していた。


 紫月がこの異変に気付いたのは、秀が柳に送った指輪が発信機付きだと思っていたからである。


 しかし、柳が秀と一緒にレストランをあとにしたときにはすでに反応は分かれていた。つまり、秀は本物の柳には別に発信機を付け、指輪を付けた偽物が秀を誘い出したと気付いたのである。


 なんでそんなまぎらわしいことを……、とつっこんでやりたいところだが、秀の性格上、敵を不快にさせる作戦を考えつつ柳に好意を持ってたことに気付いていったとしか考えようがない。


 だが、柳を驚かして思いっきり彼好みの反応を見たいという性質の悪さも含まれていそうだが……


「紫月! 柳姉ちゃんの居場所はどこだ!!」

「一番奥の部屋です! 破壊してください!」

「よし来た!!」


 翔はオートロックの扉に飛び蹴りして扉を破壊すれば、そこには意識を失っていた柳が倒れていた。


「柳姉ちゃん!」

「翔君! よけてください!!」

「うおっ!!」


 薄暗い部屋の中からアメリカ兵が翔目掛けてナイフを振り下ろして来た! そして、さらに部屋で待機していた兵達も翔を取り囲む。


「この野郎!!」

「動くな!! 動けばこの女のドレスを引き裂くぞ!!」


 英語で言われてもその状況と柳に当てられるナイフで、純は相手の言葉理解する。英語に馴染んでいる紫月はどうするべきかと考えながらも、風の力を密かに纏い始めた。


「さあ、小僧。この女の変わりにお前が我々についてくれば、この女の命は助けてやるぞ?」


 ニヤニヤした笑みを浮かべながら翔に選択を迫るが、翔は瞬時に柳を捕らえていたアメリカ兵のナイフを手で折り、柳を奪い返して宙を舞えば、突風がアメリカ兵達を吹き飛ばした!


「純!」

「任せて!」


 翔は柳を純に投げ渡し、紫月の攻撃で気絶しなかった兵達の首筋や腹部に打撃を与えて悶絶させた。


「ふう〜片付いた」


 手をパンパンと叩き、危なかったなぁという表情を浮かべている翔に紫月は抗議する。


「翔君! 攻撃するの早過ぎです! もし姉さんに何かあったらどうするんですか!」

「相手がブツブツ英語なんかしゃべってるからいけないんだろ。俺は英語力なんて兄貴達と違って皆無なんだよ!」

「せめて状況で判断しなさい!」

「だから柳姉ちゃんをすぐに助けただろ」

「結果がよかっただけじゃないですか! もし傷の一つでも付けてたら、兄さんと秀さんに殺されてますよ!」

「そりゃ勘弁だけどさ……」


 柳を抱えたままの純は、どうしようかなぁ、と応酬を続ける二人を見ていた。しかし、やはり末っ子。もう一つの重要事項に気付く。


「あの……、翔兄さんと紫月さん」

「何だよ」

「秀兄さんは無事なのかな……」


 告げられた言葉に、二人はしまったとすぐにコンパクトの画面に注目した。


「まずい! 秀兄貴、動き出してるよ!」

「これは……!! 屋上に向かってます!!」

「おいおい、なんかまずい気がして来た! 俺行ってくる!!」

「翔兄さん! 紫月さん、柳さんお願いします!」


 純は柳を紫月に渡すと、急いで翔の後を追いかけた。



 一方、秀は椅子に縛り付けられたまま屋上に運ばれ、神経ガスを長時間浴びたにも関わらず早くも意識を取り戻した。


「うっ……!!」

「あら、お目覚めのようね、南天空太子様」

「……まだ僕の目の前から消えてないんですか」


 力が入らない体。どうやら逃げ出すことは無理らしい。むろん、これだけ取り囲まれていては簡単にいきそうもないが。


 しかし、それでも口の悪さだけは変わらないところはさすが天宮秀というところか。


「残念だけどまだ消えることは出来ないわ。それにこれからもずっとね。あなたはこれからハワードの元に運ばれて私の従順な人形にしてあげる。

 気分は最高よ? あなたの心など関係なく私のものになるなんてね」

「あなたの人形なんて最悪ですね……それにやめておいた方がいい。僕に危害を加えれば例えどんな手を使ってでも」

「覚醒はさせないわ。あなた達は身に危険が迫ったときに天空太子へと戻る。だけど、ただ動けなくなっただけならば覚醒させずにアメリカに運ぶことなど容易い。

 つまり、あなたにはもう打つ術など残されてはいないのよ?」


 秀の顎に指をかけセディはクスクス笑った。それに秀は眉間にシワを寄せて顔を背ける。


「もうすぐ迎えがやってくるわ。だけど、頼みの綱のあなたの兄弟達は足止めの多さにやってくるのは困難でしょうね。

 そして柳泉なんだけどね、彼女はそのうち人体実験所に送ってあげる。しかも毎日快楽を与えられながら生きるのよ、雌豚のように扱われながらね!

 あなたの愛している柳泉が乱れる姿なんて、想像するだけでも素敵でしょう?」


 心臓が強く脈打つ。体が熱を、力を帯び始めていく。脳裏に声が響き、愛しき者の泣き顔が過ぎる。


 それは怒りに変わり……そして、意識は炎に包まれる……


「……」


 秀は何も答えなくなった。ついに観念したのかと周囲にいた誰しもが思ったが、秀の様子がおかしくなっていくことに気付く。


「なに?」


 ふわりと秀の髪が揺れたかと思えば椅子の鍵が砕けて秀は立ち上がる。そして、さらに彼の周りには熱気が立ち込め始める。


「……南天空太子様?」


 そう告げた瞬間、秀の周りに炎が纏わり付き、それは炎の乱気流を生み出した!


「何だあれは!!」

「いかん!! 射殺しろ!!」

「ダメよ!! 彼は何があっても連れて帰るわ!!」

「しかし、このままではこちらがやられます!! 射殺命令を!!」


 セディは唇を噛んだが、銃弾程度では秀が死なないことを思い出し、発砲の許可を出した。それが出れば兵士達はすぐに行動に移る。


「撃てェ!!」


 秀に無数の銃弾が発砲される! しかし、それは当たる前に熱で熔かされ床に落ちる。そして、それが止めば秀の目は黄金に光り輝いた!


「うわあああ!!!」


 銃を発砲したものに炎が襲い掛かりその身は黒焦げになる。それから秀の体はさらに炎に包まれ天へと上昇していく。


「ああっ……!!」


 セディは膝を付いた。炎を纏った青年が時を越えて覚醒する。



 南天空太子は今宵、現代に降臨した……




まず、翔君のおかげで無事に柳ちゃんは救出されました。

本当に無事で良かったよ。

紫月ちゃんの言うとおり怪我なんてさせてたら、啓吾兄さんと秀のダブルパンチどころじゃ済まなかったでしょう……

本当この二人は柳ちゃんが絡むとなあ……


いよいよ南天空太子降臨!

秀さん大暴れの巻がやってきます!


どうやら身に危険が迫らなくとも怒りで覚醒することも可能らしいです。

まあ、秀はプライド高いですからね。


そして覚醒しちゃった秀を止めないと大変なことになるぞ龍!

だけど作者がいうのもなんなんですが、秀の暴走って本当に性質悪そう……




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