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天空記  作者: 緒俐
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第二百八十一話:神子

 神宮の一室にあった紅の衣を拝借し、やっと落ち着いた柳は部屋から出ると、夢華がぴょこんと飛び付いてきた。


「お姉ちゃん綺麗〜! 天女様みたい!」

「ありがとう、夢華」


 柳はニッコリ微笑む。とても上等な生地だということは着心地から分かり、もとの容姿からも天女と見紛う美しさが柳から放たれていた。


 もちろん、男性陣からも称賛の声が上がり柳ははにかむ。ただ、秀はどこかに閉じ込めたいと相変わらずな独占欲を発揮したくなるが、その前にきちんと謝罪しなければならない活字中毒者がいる。


 なんせ、天空記に記されていなかった記述の壁を破壊したのだから。


「すみません、兄さん」

「全くだな、次男坊」

「啓吾さん、あなただって壊したでしょう?」

「ヒビは入れたが破壊までしてねぇよ」

「いいからやめろ!」


 これ以上暴れられて、もし何か重大なことが書かれている壁を壊されては堪らないといわんばかりに龍は一喝する。そして、ようやく落ち着いて話が出来るようになったのは、実に一行が合流してから三十分は経っていた。


 それから龍がこの世界のことについて出来るだけ分かりやすく説明している間、啓吾はもう一度聞くのもなんだと、破壊された壁から覗く寝室に入り、とりあえず休憩、とマイペースに睡眠を取ることにした。


 そして、龍の話に一喜一憂、時に鋭い意見や辛口が入りながら一通りの説明が終わる頃には、やはり微妙な表情になる者がほとんどだった。


「創られた天界? う〜ん、確かにちょっと変な感じはするけど」

「そうよね、だけど神宮なんて、まさに二百代前と同じなんじゃないの?」


 沙南と紗枝の意見に一行は同じような感想を持った。


 確かに周りの情景は二百代前と違っても、神宮がこのような造りだったという記憶は桜姫も同意見なようだ。


「まぁ、主上がこういう建物が好きで二百代前と同じものにしたというなら納得できるけど」

「そうよね。だけど、壁に天空記が書かれていた記憶はないわよ?」

「ああ、そこなんだ」


 紗枝の意見に龍は浅く頷く。二百代前の神宮と明らかに違う点が壁に書かれていた天空記だ。


「何故、神宮の壁に天空記が記されていたのかはっきり言ってさっぱりだが、それでも分かったことは、あの記述が神のものだったということだ」

「あの滅びの神か?」

「ええ、天空記に記されていなかったね」


 それがここにあるというのだから何かを感じてならないのだが、どうしてもその答えは出てこない。すると森がヘラヘラと笑いながら、まずないだろうということを告げた。


「だったら神の野郎が天空記に記されていなかったから、わざわざ壁に書いたんじゃねぇのか?」

「森将軍、くだらない発言は慎みなさい」


 ぴしゃりと桜姫がその意見を一刀両断して、土屋と宮岡が全くだ、と頷く。


 それを尻目に、龍と闇の女帝はまともな意見交換をしていた。


「天界を追われし神子は滅びの力を司り、やがて災厄を天界にもたらさん。その力、天界の創造主の力を越えるものの、天を操りし王に……、とここまでだが、分かることはある」


 龍が告げてくれた内容に闇の女帝は目を閉じて考え込む。


 人としての姿を借りた化け物が天界を追放されたという記述や、神族の誰かが罰を与えられて地へと下ったという記述は読んだ気がするが、神子などがいたかと……


「……天界を追われし神子。神子……、まさか!」

「ええ、天空記に記された神族の歴史の中でたった一行、書かれていた記述がある。天に欺きし神子に罰を与えん、とね」

「それが神だと?」

「おそらく。あいつが滅びの力を持っていることは確かですからね」


 たった一行をよく覚えてるな、と翔は相変わらずな活字中毒者の知識に感心してしまうが、それに気付いた闇の女帝もそれだけ読み込んでいるようだ。


 それからまたしばらく話し込んで、ようやく行動開始となった。


「とにかく、まだ神宮は全壊した訳じゃないんだ。それに神も主上も出て来ていないんだから気を抜くなよ」

「は〜い!!」


 末っ子組の返事によろしい、と龍が頷き、ようやくまだ破壊されていない神宮の奥へと一行は進むことになった。



 一方、薄暗い王の間にいた神は、合流した一行を見るなり口元に微笑を浮かべた。


「さて、そろそろ私も出張ろうかな」

「……天の力を手に入れにか?」


 背後から掛かる声に、神はニッコリ笑って振り返った。そして、傍に置いていた三尖を手に取り、彼は彼の目的を告げる。


「そうだね、それと沙南姫様も頂こうかな。太陽の姫君様をすぐに殺すのも悪くはないけど、充分太陽の役目は果たしてくれるだろうし」

「……光帝ほどの力を持たない姫君に」

「主上、あなたも人が悪いな」


 笑っていながらもその目は笑っておらず、神のオーラは禍々しいものとなった。それに主上の口元が微かに動く。


「太陽の姫君は光帝より力は未熟でも、天の力を強固にする力があるなんて天空記に記されていなかったな」

「……何が言いたい?」


 互いの視線が鋭くぶつかる。言葉の駆け引きが、それぞれの思惑が空気を重くしていった。


「あなたが光帝を殺した理由、それは太陽の姫君を自分のものにする必要があったからでしょう? 天の力で天空王に及ばなくなったあなたは……!!」


 強い神通力が神に放たれ、彼の頬にうっすらと傷が入る。ただ、それでも恐怖一つ抱いていないことは一目瞭然だった。


 主上は神を見据えながら、それは低く、威圧感たっぷりの声で忠告した。


「滅びの神よ、お前は天空王を好きにすればいい。だが、天を取れるとは思わないことだ」

「そうだな、だけど……」


 神は鋭い目つきで三尖を主上に向ける。それは肌に触れるかどうかという距離で……


「あなたの力を超えるものは天空王だけとは限らないですよ、主上」

「……また地に落ちるか?」

「人の親の体を借りて、主上の地位についてる人に脅されても何とも感じないな。さて、では行ってきます。あなたもまた、現代で啓星に殺されないように祈っておきますよ」


 そして、神は瞬時にその場から消える。しかし、主上はただ静かに目を閉じ瞑想を始める。


 二百代前とは違った形の、最後の戦いはすぐそこに迫っていた……




やっと神が出張るよ……!

ということで、次回はついに龍と神が激突します!

一体どこまで激しく戦ってくれるのか、そしてどこまでかけるんだ私……



それとそろそろゴチャッとしてるかもしれないので整理を。

主上と呼ばれた人物はGODの創主であり、十年前、啓吾兄さんに殺されている人物でもあります。

ただ、肉体は滅びても魂は滅びていないので、ずっといろんな肉体に宿りながら生き続けています。


そして、今現在は神の親の肉体を借りているみたいですね。

かといって神も平然としてますけど。


だけど、神も元はすごい名門だったみたいで。

それが末端の神族に落とされてたみたいですね。



と、こんな感じですが、次回は一体どうなるやら……




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