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天空記  作者: 緒俐
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第二百六十九話:武器を扱う理由

 作戦会議が終わってそれぞれが自由行動になるにはなったのだが、例の如く闇の女帝に捕まった末っ子組は着せ替え人形と化していた。ただし、非常に楽しそうではあったが……


 そして、ピーターパンの恰好にされていた純は帽子だけをはずし、庭のベンチに腰掛けて大人しくオレンジジュースを飲んでいた。すぐ傍の部屋に本はあるのだが、全て英語で書かれているため純が理解するのは難しいようだ。


 すると、ようやく解放された夢華もパタパタと純のもとへやってきた。どうやら彼女は白雪姫にされたらしい。恐ろしく可愛らしいことは言うまでもないが……


「純君!」

「あっ、夢華ちゃん! すごく可愛いね」

「えへへ、どうもありがとう」


 夢華は褒められてはにかんだ。いつも純の言葉はとても自然ですっと胸の中に入ってくる。啓吾いわく「自然過ぎて性質が悪い」とのことらしいが……


 ただ、他の兄弟達より褒め上手というのは確かだ。それぞれのパートナーを前にしたとき、龍は固まる、照れる、逃げるの三拍子が揃ってるし、翔に至ってはまさに花より団子だ。秀は褒めているというより自分の満足を口に出してるというところだろう。


 そして、夢華がぴょこんと純の隣に座ると、純はオレンジジュースを彼女に差し出した。


「彩帆お姉さんは?」

「うん、側近の人に呼ばれていっちゃった。GODに対抗するための準備とかが大変なんだって」

「そっか」


 兄達がいたら間違いなく深く頷いていたことだろう。闇の女帝たるもの、これだけ世界が動いているのに遊んでるわけにはいかないはずだ。


 だが、闇の女帝がそれだけ忙しくなってるのを見て、夢華は少しだけ沈み始めていた。つまり、明日がそれだけ危険だということだと感じてしまうから。


「純君、明日行っちゃうんだね……」

「うん、だけど大丈夫だよ。兄さん達がすぐにGODをやっつけてくれるから夢華ちゃん達のところにも早く戻ってこれるよ。だけど、怪我しないでね?」


 あまりにもふんわりと笑いかけてくれる純にドキッと夢華の鼓動が鳴る。しかし、その感情の正体にはまだ首を傾げてしまうのだけれど。


 だが、すぐに反応してくれない夢華にどうしたんだろうと純は彼女の名前を呼べば、彼女ははっとして慌てて答えた。


「それは純君の方だよ! 危ないことしたらダメだよ!」

「僕は大丈夫だよ。頑丈だし兄さん達がいてくれるもの」


 そんな微笑ましい会話を繰り広げていると、森と桜姫が揃ってやってきた。


「あっ、森お兄ちゃんと桜姫お姉ちゃん!」

「オウ! 王子様もお嬢ちゃんもすごい格好してるな。ピーターパンと白雪姫か」

「うん! とても楽しいよ!」

「そうだね」


 二人は顔を見合わせて満面の笑顔を浮かべた。本当にほのぼのする光景に桜姫の表情は柔らかくなる。


 しかし、夢華に銃の扱い方を教えるために来た森は少々微妙な表情を浮かべた。


「どうしたんですか、森将軍」

「いや、銃をぶっ放す白雪姫っていうのはどうなのかと……」

「……ギャップはありますね」


 しかも可愛らしい分余計にだ。しかし、射撃の訓練もしておかないわけにはいかず、その格好のまま訓練することになるのだった……



 一方、先に室内の訓練場にいた高校生組は……


「紫月君、かなりの腕前だね」

「土屋さんもすごいですね。さすがは警察官です。ですがそれに比べて……」


 紫月はしれっとした視線を翔に向ける。興味本位で撃ってみたいと土屋に撃ち方を教えてもらったまでは良かったのだが、それがあまりにも当たらない。というより酷すぎる!


 土屋は教え方が悪かったかな、と微妙な表情をしているが、紫月はそれを否定して翔に抗議した。


「翔君、一体どうすればそんなに的の外ばかりに当てられるんですか!」

「本物の銃なんて撃ったことねぇんだから仕方ないだろ!」

「ですが酷すぎます! 土屋さんの懇切丁寧な指導を無駄にし過ぎにも限度があるでしょう!」

「紫月君、射撃には集中力とセンス、おまけに鍛練もしなくちゃならないからすぐに上達するわけでもないさ」

「ああ、すみません。全部翔君にないものでしたか」

「おい……」


 いくらなんでもそこで納得するか、と言いたいが、確かに集中力という点においては否定出来ない。


 そして、ちょうど弾がきれたので一度休憩と翔は銃を台の上に置き、傍に配置されているベンチの上にあぐらをかいた。


「銃弾避けるのは得意なんだけどな」

「確かにそうだね。それに人としてはそっちの方が有り難い技能かもしれないな」


 人を撃つよりはずっといいのだろうと土屋は思う。もちろん警察に身を置いている以上、銃と無縁でいるわけにもいかないのだけれど。


 何となくその言葉の重みを理解した高校生組は少し沈黙したが、その空気を吹っ切るかのように土屋は笑いながら告げる。


「だけどね、きちんとした扱い方を心得ているなら、どんな武器でもそれは自分にとって決して負の方向に働きはしないよ。じゃないと医者の持つメスだって犯罪の道具になってしまうからね」


 その言葉に翔は額に手を当て、紫月はクスクスと笑った。ああ、きっと龍がいたらこう言うのだろうな、という感想を抱きながら。


「土屋の兄ちゃん、それって龍兄貴の真似かよ」

「上手いですね、土屋さん」

「そうかい? だけど銃はそれだけ危険なものではあるからね。翔君は特に一人で使うんじゃないぞ?」

「結局そういうことなのかよ……」


 ガックリと翔は肩を落とせば土屋と紫月は声を立てて笑った。武器も使う人間を選べはしないのだから。


 そして、そんな賑やかなところに、末っ子組達と情報収集を終えた宮岡も合流して訓練場に入って来た。夢華と桜姫はお盆におやつを乗せて来ているようだが、純と男二人組は何やら段ボールを抱えて来ている。


 しかし、やはり第一声は末っ子組のコスプレだが……


「純、夢華、何だその格好……」

「翔君、ピーターパンと白雪姫でしょう? いくら何でもそれぐらい分からないと龍さんに本を読めと怒られますよ?」

「わかってらい!」


 寧ろ何でそう簡単にこの格好を受け入れられるのかと問えば、可愛ければ問題ないと紫月は答える。


「それに例え姉さん達が同じような格好をさせられても私は受け入れられますよ?」

「兄貴達には見せない方が良さそうだけどな……」


 それには全員が納得した。きっと様々な童話に出てくるキャラクター達の格好を沙南達は見事に着こなしてくれるのだろうが、兄達の反応は想像するだけ精神衛生上良くない。


 そして、とりあえずその話は一旦切っておき、土屋は純達が持ってきた段ボールの中身について尋ねた。


「森、その中身は?」

「レーザー砲」

「なっ……!」

「龍達がいないんだ。化け物相手に銃は効かないだろうから備えとかないわけにはいかないだろう?」


 もっともな意見だが、夢華達にもそれを持たせることになるのは避けたいところだ。桜姫も目を閉じてはいるが、おそらく同意見に違いない。


 すると、その重たい空気を高校生組が破った。紫月はレーザー砲を取り出し、ふむと頷く。


「どうしたんだ、紫月」

「いえ、一度翔君にも効くのか実験を……」

「殺す気か!」

「まさか。ただ、折角手に入ったんで有効利用してあげないと可哀相かなと……」

「可哀相なのは俺じゃないのかよ!」


 そんな二人の応酬に一行は声を上げて笑うが、きちんと桜姫は森達に促しておく。


「将軍方、出来る限り使わなくて済むように私が戦います。それは最終手段として保管しておいてください」

「ああ。だけど変態撃退用に桜姫も一つ持っとくか?」

「はい、良将軍。慎んでお受けいたします」


 そして、大人達の視線は森に向き変態呼ばわりされた彼も暴れ出す。


 武器とは使用する理由をきちんと考えなくてはならないんだな、と末っ子組はただ純粋に思うのだった……




戦前の年少組達は銃の練習。

とはいっても、半分スポーツみたいな感じですね。

やっぱり翔は不器用みたいですけど(笑)


今回は末っ子組のコスプレに萌を感じていただけたらなぁっと。

緒俐はキャラクター達の容姿を詳しくは書かない主義なので、

読み手の皆さんに可愛い二人を想像していただけたら良いなと思います。


うん、だけど小学生の二人はまだ恋愛にはならないよね。

最近の小学生以上に純粋ですから。

高校生組も相変わらずコントの方が板についてるし(笑)


そして次回は医者チームと大学生組のお話かと。

あっ、当然決戦前なので現代での恋人達のやり取りも書いていく予定ですよ。


ですが、まだ今までの修正が済んでないので、少しお待ち下さい。(二、三日でアップするんだろうけど)




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