表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天空記  作者: 緒俐
268/301

第二百六十八話:最後の戦いは幕を開ける

 内部を一通り確認して食堂に辿り着いた啓吾は、絶対服従オーラのわりには幸せそうな秀を見て呆然とした。


 いつもならシスコンの実力発揮をするところだが、秀と柳の専用ブースまで作られていては怒る前にこの食堂に流れる妙な空気の原因を知りたくなる。


「……何だあれ」


 彼がそう問いたくなるのも無理はないだろう。あれはどう考えても、狼に食事を食べさせてもらってる子羊にしか見えない。いちゃついてるのではなく柳が間違いなく生贄にされている。


 そこに紫月が呆れと疲れが八割を占めたような表情を浮かべて料理を運んできた。


「兄さん……」

「紫月、何があった……」

「見てのとおりですよ。何も聞かずにしばらくあのままにしておいてください」


 世界の平和のために、とは敢えて言わなかったが、これ以上余計な面倒なんて御免だととりあえず啓吾を紗枝の隣に座らせることにした。彼女なら何があっても食い止めてくれるだろうから。


「ご苦労様。中は大丈夫だった?」

「ああ、全部屋調べたから大丈夫だろ。それに通常の侵入者ぐらいなら警報も鳴るだろうし」

「壊されなければね」

「じゃなくて壊さなければだろ?」


 どっちにも転びそうな意見に吹き出してしまう。そして、啓吾はコーヒーを飲みながら紗枝に尋ねた。


「それよかお前大丈夫なわけ?」

「なにが?」

「家族が心配なんじゃないかとな」

「大丈夫でしょ」


 やけにあっさり答えるな、と感心してしまうほど彼女からは動揺の一つも見られなかった。まあ、彼女の兄である森もいつもと全く変わらない様子ではあるが。


「占拠されたのは財閥であって家族じゃない。人質にされてるならそれなりに心配するけど、これ幸いと実家で有意義な休暇でも過ごしてるんじゃない? それに八木沼なんて男に財閥を任せたところで一週間ももたないでしょ」


 カラカラと笑い飛ばして紗枝は料理に舌鼓を打つ。これなら心配いらないな、と啓吾は安堵して再び秀と柳に目を向けた。


 今度は子羊が狼に食事を与えている光景が飛び込んできて、顔をだらしないぐらい幸せいっぱいにしている秀の頭上にシャンデリアでも落としてやろうかと思うが、紗枝はそれを止める。


「やめときなさいよ。GODを叩くだけじゃなく世界中の火山を噴火させて人類滅亡なんてなりたくなかったらね」

「いや、それでもあの顔は張り倒したくなる」

「幸せそうなら良いじゃない」

「次男坊だけだろ。柳は食われそうな顔してるじゃねぇか!」

「どのみち食べられるんじゃない?」


 グサリと告げられて啓吾はガクリとその場に突っ伏す。この分なら当分落ち込んでいてくれるな、と紗枝は傍においてあった経済新聞に目を通しながらコーヒーに口をつけるのだった。



 それから食事が終わり、一行の作戦会議が始まる。とはいえ、空気は堅苦しくならないのがこの一行の特徴だが……


「さて、まずは今の現状を説明しておく」

「龍、そんなに固くなるな。簡単に言えば全世界が敵に回って、スポンサーだったうちの財閥がGODにとられただけだろ?」


 森があっさり告げると龍は渋い表情に変わる。自分の家のことなのにいかにもあっさりとした解答だ。


 だが、ここからまたおかしくなっていくのがこの一行の特徴だ。宮岡がパソコンとにらめっこしながら森に抗議する。


「森、そう暢気に言ってる場合か? 代表が変わっただけでお前んとこの傘下の企業の株が落ちたんだぞ?」

「全くです。折角稼いでたのにいい迷惑ですよ」

「俺に抗議するなよ、それに踊り子も高一で株の稼ぎ方を熟知すんのもどうなんだよ……」


 啓吾は間違いなく紫月に株を教えたであろう次男坊を睨むが、彼は後ろから柳を抱きしめて座っているため非常に幸せそうである。


 ただし、その点の心配は無用だと答えるのも秀だ。ニッコリと笑みを浮かべて紫月に告げた。


「紫月ちゃん、大丈夫ですよ。損した分くらい倍にしてあげますから心配しないでください」

「すみません、秀さん」

「次男坊! テメェ紫月に犯罪を教えんじゃねぇ!」


 啓吾の言うことは確かにもっともだが、相手にしてると時間がいくらあっても足りないので龍はほっておくことにした。


 ただ、柳はその間に沙南が危険だからと避難させることにする。龍はそれだけを確認して話を再開した。


「続けるが……天空記のことで気になってる内容があるんだ」

「光帝のことですか?」


 さすがは桜姫というところか、彼女も天空記を読んでいるために同じような疑問は抱いていたようである。

 しかし、天空記を読んでいない者達は首を傾げる。若干記憶のどこかに存在しているものもいるみたいだが。


 朝食後のデザートのデザートといわんばかりに、紫月お手製三食団子を堪能しながら翔は尋ねた。


「光帝? 誰だそれ」

「二百代前、太陽の力を管理していた王であり、沙南姫の父親に当たる人物だ。記憶にないか?」

「う〜ん、俺はあんまり会ったことがないのかも?」


 一串食べ終え、まさに阿吽の呼吸で翔は紫月からほうじ茶を受け取った。本当に息がピッタリだな、と純はその光景を見ながら思う。いや、ただ紫月の面倒見がいいだけかもしれないが……


 そして、当時を明確に記憶している桜姫は、くすりと笑いながら翔があまり記憶にない理由を説明した。


「そうですね、光帝はよく主とお会いしておりましたから。それこそ何度沙南姫様を娶るように天宮を訪れられたことか……」


 ほう、と一つ溜息をつくほど光帝が訪れていたのは確かで、何故かそのことに関してだけ全員記憶の片隅を刺激されたような表情を浮かべた。


 そして、向けられるのは明らかに二百代前の龍に対する批難の視線。現代には関係ないだろう、とは言ってやりたいが、言えばまた話が進まないので龍は威厳で話を修正した。


「とにかく! その光帝のことで気になってるのが」

「どうして敵は光帝じゃなくて私の方を危険視したのか、でしょ?」


 沙南が龍の言葉を遮った。まさにそのとおりで龍は心配そうな表情を沙南に向ける。もしかしたら、彼女の記憶の中で天空記に記されていた内容を全て知ったのではないかと思ったから……


「沙南ちゃん……」

「だっておかしいじゃない! どの敵も私が全ての調和を崩したようなことばかり言うんだもの! 確かに沙南姫の力は絶大だったけど、私一人で天界のバランスが崩れるなんておかし過ぎない? 光帝の方がよっぽど強い力を持ってたのにね」


 ああ、知ったんだなと龍は思う。気丈には振る舞ってはいるが、どこか不安定な部分があることを龍は見逃さなかった。


 だが、だからこそ龍は推論の過程ではあるが全員に伝えておくことにした。


「そのことなんだけどね、多分俺と沙南ちゃんの力に関係あるんだと思う」

「そうね。天に太陽、いろいろなことに影響は与えそうよね」

「ああ。だけど、地球と太陽と例えてみたらどうだ?」


 それには全員がピタリと止まる。沙南の脳裏にも先日、神と一対一で話した内容が過ぎる。どうやら龍もその結論に達しているらしい。


「地球と太陽は絶妙な距離を保ってるから何の影響もなく今を保ってるだろう? だけど極端な話、太陽が近付き過ぎれば当然地球は滅びるよな」

「じゃあ、他の民族が沙南姫が調和を崩すって言ってた理由って……」

「ああ、天に近付く太陽、というより地球に近付く太陽といった方が分かりやすいだろうね。太陽はそれだけ他の民族にとって大きな影響を与えていたってことだ」


 その例えには末っ子組もコクコクと頷いている。


 つまり、地球に他の民族がいると仮定して太陽の姫君であった沙南が地球に近付けば当然そこにいる民族は滅びるということ。

 おまけに月にも影響が出てくればそれは一大事となっても仕方がない。


「だけど兄貴、それはあくまでも例えで単位は人だろう? 沙南ちゃんが兄貴に近付いたって爆発なんて起こるわけがないじゃないか」


 翔の言うことはもっともだ。それほど二人が近付いて危険だというのなら、もっと早くから戦乱が起こるなり二人を遠ざけるなりの事態は起こってたはずだ。


 それにそれほど危険だというのなら、光帝も天空王に沙南姫を近づけるはずがないだろう。


「確かに翔の言う通りだ。だけど俺が天の力を有し、沙南ちゃんが光帝以上の力を秘めていたとして主上に逆らったとすれば、主上の立場はどうなる? もちろん光帝は主上と同等の力を持っていると考えてな」

「そりゃ、主上の立場はなくなるし邪魔な奴らは……」


 全てのつじつまがあった。全員の視線が龍に集まる。


「答えは簡単だ。主上を越える力を持つ天空王と太陽の姫君を一緒にしておくわけにはいかず、当然滅ぼそうと動くさ。

 おそらく光帝が殺されたのも、俺達をくっつけることによって自分の立場を確立しようとしたと疑いをかけられたからだと思う」


 もちろん光帝はそんなことは望んではいなかった。それは龍も沙南も記憶の中に残っていて断言できる。


 啓吾と桜姫も、昨夜襲ってきた牛男が光帝を殺したのは主上だ、と言っていた事実も筋が通るなと納得した。


「でも龍ちゃん、私の記憶の中では主上もそう簡単に天空族に牙を向けるタイプじゃ……」

「ああ。だけど神がいるだろう?」

「あっ!」


 紗枝は納得した。主上を唆したと聞いた記憶はきっとそのことが絡んでるのだろう。しかし、かといって啓吾を苦しめてきたGODの創主でもあるわけで……


「俺の推論はここまでだ。そして明日、GODに奇襲をかける。各自万全の体調で挑むように」


 天界最後の戦いが現代で幕を開けようとしていた……




さて、今回は長めのお話でした。

まあ、今までの話のまとめを龍が説明してくれたわけですが。


とりあえず、最後の戦いが始まろうというところまでようやく……!

本当、第五章長いよ……

三百話までにはおさめたいなとは思いますが……


だけど次回もまた余談を書きたいなと相変わらず自由な作者なのでお許し下さい。

次回は三月にアップしようかなと思います。

それまでの間に、今まで書いた文を修正していこうかなと。


誤字とか脱字とかあったら知らせてくださいね☆

もちろん感想も大歓迎です。

リクエストがございましたら、このお話が終了した後の番外編にも繋げられるかもしれませんので(^O^)




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ