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天空記  作者: 緒俐
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第二百六十六話:事態は意外な方向へ

十五禁を含む会話があります。

苦手な方はスルーしてください。



 朝食の支度を終えた女性陣はそれぞれのパートナーを起こしに行く。一日の中でも騒がしい時間の始まりだ。


 秀の部屋の前に来た柳は息を飲んだ。恋人の眠る部屋に入るというこの緊張はいつものことだが、それ以上に今日は朝からどれだけからかわれるのだろうかと考えるだけで赤くなってしまう。


 他に誰か起こしに行かせればとも思うが、男性陣が行けば間違いなく最悪な低血圧で悲惨な目に遭い、それに遭わない人物が行ったところでさらなる悪戯が自分には待ってるわけで……


 しかし、起こさないわけにもいかないので柳は扉をノックした。


「秀さん、入っても良いですか?」


 少し待つがやはり反応は返って来ない。大抵いつも起こしに行くとき、彼は夢の中にいることが多いのだ。そして今日は無事に起こせますように、と他の者達から言わせれば一生叶うことのない願いをそれは心の奥底から願いながら、柳はドアノブに手を掛けた。


「失礼します」


 柳はそっと部屋に入る。そしてベッドに近付くとやはり綺麗な寝顔で秀は迎えてくれた。何でこんなに綺麗なのかと眩暈がしてくるが、見とれている場合ではない。


「秀さん、起きてください」


 出来るだけ離れて起こそうとするのはそれで起きてくれるならばと思うからで……

 しかし、それだけではピクリとも反応してくれず柳は少しだけ声を大きくした。


「秀さん、おはようございます!」


 やはり起きない。ならば仕方ないと意を決して柳は秀に近付き揺り起こした。


「秀さ、きゃっ!」


 腕を引かれてあっという間にベッドの中に引きずり込まれる。それでパニックに陥る柳に、それはもうすっきりとした目覚めで秀は朝の挨拶を告げた。


「おはようございます、柳さん」

「秀さん! 起きてましたね!?」

「ええ、君を引きずり込むのが僕の朝の仕事ですから」


 その眩しい笑顔と爆弾発言に柳は茹蛸状態になって気絶しそうになった。いや、せめてこの美貌を目にしなければと目をギュッと閉じれば額に口づけられてピクリと反応する。


 そんな可愛らしい反応に秀は満足して表情は自然と綻んだ。とても普段は悪魔のような表情を持っているとは思えないほどそれは優しく穏やかだ。


 だが、秀はあくまでも秀である。上体を起こしてサラリと柳の髪を撫でながら告げた。


「さて、とりあえずシャワーでも浴びましょうか。時間も勿体ないですし」


 それなら解放されるなとホッとしたのも束の間、今度は横抱きにされて目を丸くさせられる。これは一体何なんだと疑問符が柳の頭の中を占拠した。


「えっと、秀さん?」


 すると有り得ないぐらい悪戯な笑みを浮かべて、秀は核弾頭数発を炸裂させたような言葉を発した。


「一緒に入りましょう。夜まで待てそうにありませんし」

「何がですか!!」

「それは今から分かりますから」

「秀さんっ!!」


 しかし、柳の抗議など全く受け付けず、さらにジタバタ暴れても秀は動じる事もなく、浴室の扉はパタンと音を立てて閉まるのだった……



 一方、書庫で熟睡していた長男組のもとに紗枝はフライパンとお玉を持ってやってきた。机の上や床に本は散らばり、当人達は布団も敷かずに寝こけている。らしいといえばらしいのだが、起こさないわけにはいかない。


「起きなさ〜い!!」

「うるせ〜!!」


 お玉でフライパンを叩くというあの家庭的な音にやっと朝方寝付いた二人は叩き起こされた。


 龍はともかく、無理矢理起こされた啓吾は不機嫌全開になるが、紗枝の眩しいばかりの笑顔に文句の一つも言えなくなる。


「おはよう、龍ちゃん、啓吾」

「ああ、おはよう」

「……おはようさん」


 こういうところは紗枝の魅力だよな、と啓吾は心の中で溜息をつく。もちろん惚れた弱みなんだろうが。


 それから紗枝は机の上にフライパンとお玉を置いて、床に散らばった本を一つずつ片付けはじめた。


「やるとは思ってたけど、随分散らかしたのね」

「そりゃ仕方ねぇだろ。そこに本があるなら片っ端から見るさ」


 なかなかお目にかかれないものまであるとついつい手が伸びてしまうのは活字中毒ならではだ。それに紗枝はそのまま寝て風邪でも引いたらどうするのだと呆れてしまうが、この二人には言っても無駄なのだろう。


「じゃあ、総司令官殿からの命令を伝えとくわ」


 総司令官と言えば沙南の顔が思い浮かぶ。紗枝は腰に手を当てて沙南らしい威厳を真似しながら告げた。


「部屋を片付けたら食堂にいらっしゃい。ここは天宮家じゃないんだから文献の山を重ねておくわけにはいきません、だって」


 その伝言に二人は苦笑した。全くもっておっしゃるとおりだな、と二人の共通認識である。それにきちんと片付けなければ朝食の提供はなさそうだ。


「そりゃそーだ。沙南お嬢さんの事だからこの家中掃除しかねないからな」

「少しぐらいは負担を減らさないわけにはいかないか」


 総司令官に逆らうわけにもいかず、長男組は片付けを始めるのだった。



 そして、末っ子組は……


「純君……」

「うん……」


 シルクの真っ白な寝間着を闇の女帝からプレゼントされていた二人は、真っ白な高級羽毛布団仕様のベッドで目を覚ました。もちろん同じくベッドの上である。


 昨夜は闇の女帝と一緒に過ごしていて、そのまま眠くなって彼女のベッドを占拠してしまったようだ。だが、彼女はこの部屋にいまは不在のようだ。


 二人はまだ眠たい眼を擦って互いに挨拶を告げると、ひょいと軽やかにベッドの上から飛び降りた。


「彩帆お姉ちゃんどこだろう?」

「うん、どこだろうね」


 二人は首を傾げてとりあえず顔を洗おうと浴室に行くと、彼女の側近が二人のために朝の支度をしている最中だった。二人は揃って元気よく朝の挨拶をして側近に萌えを与えた後、闇の女帝の居場所について尋ねた。


「彩帆お姉ちゃんはどこ?」

「はい、菅原森様の元へ行かれております」

「森お兄ちゃんの?」

「ええ、急ぎの事でしたので」


 龍や啓吾ではなく森に何かあったのかな、と二人は首を傾げた。


 だが、忘れてはならない事実がある。菅原森という自衛隊員がどれだけ馬鹿というレッテルが張られようとも、彼は天下の菅原財閥の次期後継者候補には違いないのだから……


 そして、血相を変えた闇の女帝は森のいる部屋のドアを蹴り飛ばす。ちょうどそこには、桜姫が夜通し酒宴を開いていた森達とシュバルツ博士を起こしに来ていたところだった。


「彩帆様、おはようございます」

「馬鹿はいるか!」

「はい、そこに」


 当人が聞けばいかにも嘆きそうだが、まだ森は夢の中である。そんな森に闇の女帝は苛立ち、グッと襟首を掴んで叩き起こした!


「いつまで寝ている! 起きよ!」


 そこまでやるかという過激な往復ビンタにさすがの桜姫も言葉をつまらすが、さすがに目覚めた森は訳が分からず朝からボケるわけにはいかなかった。


「なんだぁ!?」

「ふざけた面をしている場合か! 貴様、菅原財閥の跡取りではなかったのか!!」

「いや、継ぐつもりは……」

「闇の女帝、そいつが継いだら問題だと……」


 土屋の冷静なツッコミに闇の女帝は止まった。確かにその通りだと全員がコクリと頷く。そして乱暴に森の襟首を離し、闇の女帝は一旦息を整える。


 純達以外の事を除いてほぼ冷静な彼女の取り乱し様に、桜姫は凛とした声で尋ねる。


「彩帆様、何か緊急事態が?」

「ああ、菅原財閥の新代表が決まったらしい」

「はっ? 親父の奴飽きてやめたのか?」

「黙りなさい、森将軍」


 桜姫の凍てつくような視線に森はその場に固まった。それにやはり馬鹿だなと土屋達は改めて思う。


「そして、新代表は一体誰なんです?」

「ああ、新代表についてるのは八木沼という男だ。だが、面倒なのはそいつが新代表になったことではなく出した命令、いや、GODとつるんだ事だ!」

「えっ?」


 その瞬間、外で爆発が起こり無数の戦車や兵士達が敷地内に入ってきた!


「くっ……! 早速来たか!」


 事態は予想外の方向に進み始める……




さあ、一行のスポンサーでもあった菅原財閥が乗っ取られてGODとつるむことに!?

そして早くも襲撃に遭いそうな感じに!

って、もしかしたら沙南ちゃんが一人じゃないか!?

龍!! 早く彼女の元へ駆け付けろ!!


だけどそんな中、一番恐いことをしそうな次男坊が一人いらっしゃいます(笑)

そうです、ただいま柳ちゃん満喫中の腹黒参謀です。

きっと次回は……恐いよ……


それとそれ以上仲が良いのは末っ子組。

二人ともお揃いの真っ白なパジャマを着て、同じベッドに寝てますね(笑)

啓吾兄さんが知ったら、きっと煤けてくれるんだろうなぁ……




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