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天空記  作者: 緒俐
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第二百四十三話:舞い散る花びら

 上空に浮かぶ美しき女神に桜姫が仕えていたのは二百代前、まだ名もなき女官だった頃だ。しかし、現代の桜姫にとっては敬うような相手ではなく、むしろ龍に対して害をなそうというのなら全力で叩くつもりだった。


 むろん、彼女の表情からは過激な印象は全く受けはしないが。


「桜姫、あの姉ちゃん誰だ?」

「花の女神です。二百代前、神族側についた敵でございます」


 翔の問いに桜姫が簡潔に説明するが、高校生組の二百代前の記憶には登場してはいないらしくそうなのかとただ頷く。


「ふ〜ん。にしてもすっげぇ甘い匂いがする。なんだこれ?」

「花の蜜でございます」

「きついですね。兄さんが嫌がりそうな」

「兄貴達もだろうな。甘いもの嫌いじゃないけど」


 そんな雑談をしていると、ふわりと花の女神は下りてきて無表情のまま桜姫に告げた。花の女神という割には何だかきつそうなイメージだなと翔はそんな感想を抱く。


「桜姫、久しぶりですね」

「はい。ですがここにいらっしゃるということは主の邪魔をなさるつもりですか?」

「邪魔ではない。天空王様を私達の元へご招待しに参りました」

「ご心配には及びません。こちらから足を運ばせていただきます」


 丁寧な口調でありつつも淡々と答えていく桜姫に、花の女神の表情と声に若干の不機嫌さが含まれる。


「そなたはいつから私に口答えができるほどの身分になった?」

「現代に二百代前の身分などは関係ございません。ですが主を害そうとするものは全力で排除させていただきます」


 ふわりと桜姫の周りに花びらが舞い始める。花の女神と違って甘い匂いなどさせない、無臭の殺傷能力と防御力を持つ彼女らしい力だ。


 しかし、見ているものを魅了してしまうほどの美しさは花の女神ですら苛立たせる。なんせ二百代前の舞いの席ですら、いつも目を引いていたのも桜姫だったのだから。


「生意気な……!」


 花の女神の艶のある髪がふわりとゆれると、周りがありえないぐらい歪みはじめて高校生組は立つことすら困難な状況に陥る。


「おわっ!」

「きゃっ!」


 バランスを崩した二人はその場に膝を付く。だが、そのままでは危険だと桜姫は花の女神に突っ込んで行きながら叫んだ!


「翔様! 紫月様! ここから離れてください!」

「離れろってよ!」


 ここまで激しく視界が歪んでは、どこをどう飛べば良いのかさっぱり分からない。あまりの揺れに気分まで悪くなってくるが、突如自分達の意志に反してふわりと体が浮く。


「へっ?」


 何ともマヌケな声を出し、翔は後ろ襟首を持ち上げられて頭だけ振り返った。そこには相変わらずな弟に呆れた表情をした龍が立っていた。

 軽く浮いている性か彼には全くこの状況は苦ではないらしい。


「お前って奴は……」

「龍兄貴!」

「すまないね、紫月ちゃん。また翔の奴が迷惑かけたようで」

「いえ、助けていただいてありがとうございます」

「おい、なんか全部俺の責任になってないか……」


 なんだかなぁとでも言いたそうな顔をするが、結局いつもの面倒をかけた積み重ね分まで言われては元も子もないので、それ以上つっこむことはやめておいた。


 そして上空から舞い散ってくる花びらと女達の戦いを見ながら龍は戦ってる相手について尋ねる。


「あの女もGODか?」

「ああ、花の女神とか言ってたけど」


 その名を聞いて龍は反応する。自分の二百代前の記憶と天空記に書かれていた内容を思い出したからだ。


「桜姫の元主、そして沙南姫の恋敵として夜天族や神族と手を結び、最終的には天空族の敵にまわったと書かれてはいたが、彼女も転生したということか?」

「はい、そのとおりでございます」


 幾度かの攻防を繰り広げた後、桜姫は上空から一度地上に降りて龍の疑問に答えた。


「ですが、主達と違う点がございます。主達は二百代前の記憶はほぼ無いままに転生していらっしゃいますが、記憶を持ち続けたまま、力を持ち続けたままに転生したものもいるのです」

「確かに今までの敵でもいたが、なぜそんな……」

「力を持ったまま転生したものの共通点は天空族にかなりの怨みをもっていたこと、また例外として私のように神に操られたものもいますが」


 それには高校生組もいくらか心当たりがあった。日本の地下街であった楢原首相がまさに神に操られて力を発揮していたなと思う。


「そして花の女神は天空族、というより沙南姫様に怨みをもって転生してます。あの姿からも力は二百代前と変わらないでしょう」


 すると上空から舞い降りてきた花の女神はくっと口角を上げた。二百代ぶりに天空王の生まれ変わりである龍に会えたのだから。


 しかし、桜姫がすっと龍の前に立つと花の女神の空気は不機嫌になった。案外分かりやすいなとの感想を高校生組は持った。


「主、ここから離れてください。ここは私が片付けます」

「しかし……」

「主からお力をいただいてるのです。負けはいたしません」


 桜姫は綺麗に笑う。確かに力は桜姫の方が上なのかもしれないが、どこか心の奥底で嫌な予感が離れてくれないのだ。しかし、そんな龍の不安を和らげようと桜姫は彼の一番大切な者のことを告げた。


「それに沙南様をお守りするのが主の役目でしょう? 傍にいなくてどうなさるおつもりですか?」


 またも花の女神を不機嫌にさせるような言葉に、高校生組は結構辛口だなと同じようなことを思う。


 しかし、花の女神はそう簡単にことを運ばせない手段に転じ始めた!


「桜姫! 天空王様の従者という立場に溺れたか!!」


 そう怒鳴った直後、ビルの下から無数の蔓と植物兵が群れをなして沸き上がってきた! それは幻術ではない!


「まずい! 翔!」

「分かってる!」


 翔は自分を縛り付けようとした蔓を風の刃で断ち切り、槍をもって襲い掛かって来る植物兵達を吹き飛ばしてその槍を奪った。そして、同じように植物兵から槍を奪った紫月と背中合わせになる。


「今度は何を叫ぶんですか?」

「そうだな。スパゲティーにピザとか?」

「イタリアンですか。でも、どうせピザを焼くなら釜戸でも使ってみたいですね」

「さすが料理好きだ」


 そして二人は槍に風を纏わせて次々と蔓と植物兵を断ち切る。そちらの方があまり力を使わなくていいとのことだが、それよりも楽しんでいると言った方が正解だろう。


 一方、龍と桜姫は下から上がる爆炎の方が気になっていた。おそらく植物には火をと秀が遠慮なくやってるのだろうが。


「下は秀がいるから大丈夫だと思うが……」

「主、翔様と紫月様がいらっしゃいますので一刻も早く沙南様の元へ。花の女神にこのような植物兵を生み出す力は元からはございません。二百代前もこれだけのものを操れる女神様は紗枝様しかいなかったのですから」


 つまり花の女神の力は何者かによって引き出されているということになる。いや、正確には主上か神にだろう。


「行ってください、主」

「……分かった。必ず戻れ」

「はい」


 そして龍は力を一気に解放して自分達を取り囲んでいた蔓や植物兵を重力で粉砕して沙南の元へ戻ろうとした瞬間!


「主!!」


 桜姫の叫びに高校生組は反応する。突如、龍の体のバランスが崩れて膝を折ったのだ!


 そして龍が膝を折った前にいたのは微笑を浮かべた花の女神だった……




おっと! 事件発生!

悪の総大将こと龍の身に何かが起こった模様。

さあ、一体どうなってしまうのか……


そして高校生組はやっぱり相変わらずバトルとコントです。

戦いの最中になんで食の話が……

でも紫月ちゃん、ピザをどうせ焼くなら釜戸で焼きたいとは……

うん、料理と裏社会に同じぐらい興味があるから仕方が無い(笑)


だけど次回、無難にするかちょっと十五禁より若干上の要素含ませるか悩み中。

まあ、がんばろう……




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