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天空記  作者: 緒俐
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第二百三十八話:破壊活動開始

 いよいよ夜の町を駆け回る時間がやって来た。現時点で死人が出ていないだけ非常に運の良い一行なのだが、先程死の恐怖を味わった森は末っ子組に慰められていた。


「森お兄ちゃん大丈夫?」

「ああ……」

「でも当たらなくて良かったよね!」

「王子様は本当ポジティブだよなぁ」


 森は思わず苦笑いする。末っ子組に掛かれば世の中のどんな災難でも良い方向に向かうアイディアが出て来そうだ。

 そして出発直前までパソコンに向かっていた宮岡は、現在の状況を知らせる。


「龍、やっぱりGODに囲まれてるみたいだな。空港も占拠されてる」

「大丈夫ですよ。ジェット機の一つぐらい奪いますから」

「おいおい、ハイジャックを自分からやるなんて随分龍も丸くなったな」

「仕方ないことは仕方ないと割り切ることにしたんですよ。じゃないとこれからこの一行が何をやらかすか……」

「本当二十三歳の苦労じゃないよな……」


 気苦労ばかりを背負わされる悪の総大将に宮岡は同情した。翔一人でも手に負えないと思っているのに、補佐すべき者達が有り得ないぐらい過激なことをやってくれる。おまけに守られるものまでアクティブなのでどうすることも出来ない。


「ですが博士もすみません。こんな事に巻き込んでしまって……」

「全くだ。せっかくお前達が私のもとにいる間は扱いてやろうと思っていたのにな」


 その答えに龍と啓吾は苦笑する。昨晩のスパルタ教育が頭の中で駆け巡ったからだ。しかし、ここまできてしまった以上、シュバルツも割り切っていた。


「なに、どのみちお前達がアメリカに来る時点でなにかあると分かっていたから気にするな。何より啓吾達の親である以上、親としての責任は果たすつもりだからな」

「博士……」

「それに啓吾に銃の扱い方を教えたのは親である私だからな、その辺りの指導もしなければならないだろう?」


 シュバルツがニヤリと笑うと啓吾は深い溜息をついてまた龍が考え込むような事実を告げる。


「龍、師匠はこれでも全米アマチュアの射撃大会で三連覇してる猛者だ」

「なっ!?」

「つうかオペで出れなかったから三連覇で止まってるだけだ」


 その事実に龍はようやくシュバルツから受けた指導に合点がいった。


 昨晩、啓吾とこれでもかというほどの医療のスパルタ指導を受けたわけだが、その時に何度こめかみスレスレを銃弾が駆け抜けていったか分からない。それが全て彼の実力というならば事態はもっと最悪な方向に進んでいく気がする……


「そういうことだ、龍。私は好きで付き合っているのだからお前は無意味な怪我人を出さないように暴れたらいい。それにたとえお前が重傷を負っても私が治療して必ず助けてやる。だから全てが片付いたら、この先医者として生きることを考えろ。啓吾、お前もだ」


 やはり敵わないなと思う。守るべき者達を守ることにしか目が向いていない自分達に、その先の事を示してくれる。そして自分達もまた先を望まなくてはならないと教えてくれるのだから……


 その気遣いが有り難くて、二人は穏やかに笑った。


「はい……」

「ああ……」


 そして二人は相変わらず賑やかな一行に目を向ける。どうしたものかなと龍は思うが、このメンバーなら必ずどんなピンチも切り抜けてくれるだろう。


「龍兄貴、そろそろ行っても良いか?」

「翔……そのワクワクした顔を何とか出来んのか?」

「そりゃ無理だ。それに龍兄貴だって顔緩んでるぜ?」


 確かにいつもよりは緩んでるなと本人も自覚しているところはある。だが、この一行をまとめる立場だからこそ弱気でいるよりはずっとマシだとも思う。


「まあな。天宮家の血筋でいる以上喧嘩好きの性はどうにもならん。だから翔、今から思いっきりGODに損害を与えてやっていいぞ」

「えっ!? マジで!?」

「ああ、構わん。こっちはさっさと面倒事は片付けてやらなければならないことが山ほどあるんだ。だから二度と俺達にちょっかいかけて来ないくらいに暴れてこい」


 そう命じた途端、翔の顔は一気に好戦的なものへと変わった。傍にいた紫月もこれは付き合わなくてはならないなと一つため息をつくが、けっして嫌なわけではない。なんだかんだ言いながらも彼女も好戦的な性格なのだから。


 そしてさらに桜姫もすっと龍の前に出て膝を折る。


「主、私にご命令を」


 青い装束を身に纏った桜姫はまさに主に害をなそうとするものを叩く気満々というところだ。それを感じてか龍も迷わずに命じた。


「翔達の援護を頼む。あいつはたまに油断するからな」

「はい、お任せ下さい」


 桜姫は良い笑顔で笑う。つまり彼女も暴れる側に回るということなのだから。


「あとのものは出来るだけ俺か啓吾の傍から離れないようにしてくれ。銃弾がどれだけ飛んで来るか分からないからな」

「良かったわね啓吾。弾避けの仲間が増えて」

「俺の存在意義は弾避けだけかよ……」

「それ以外に活躍の場があった?」


 紗枝にそう突っ込まれ啓吾はがっくり項垂れる。どうも戦闘において自分の存在は弾避けというポジションにおさめられているらしい。


 そんな気の毒な啓吾に、末っ子組はあくまでもフォローのつもりで啓吾を慰めた。


「お兄ちゃん、そんなに落ち込まないで」

「夢華……」

「弾避けも立派な仕事だよ?」

「……おい」

「弾避けになってる啓吾さんはかっこいいよ?」

「こら、弾避けばかり連呼するなよ末っ子組」

「いいじゃないですか、弾避けで」

「絞めるぞ次男坊」


 いつのまにか会話に加わる秀を思いっきり睨みつけ、応酬を繰り広げながら外に出るといきなり一行に強烈な光りが当てられる。


 全員その眩しさに目を細めれば、どうやらお尋ね者だった自分達はすっかり包囲されていたようだ、容赦なく銃口を向けられる。


「これは大歓迎されてるみたいですね」

「仕方ないだろう? 俺達は世界を敵に回してるんだからよ」


 軍に警察に消防、空にも特殊部隊がいておそらくGODの部隊も無法者達も襲い掛かって来るのだろう。


 秀は一行の人数と敵方の車両を見てふむと頷く。


「……消防車と戦車奪ったら十分ですかね?」

「僕、消防車乗ってみたいな!」

「夢華も乗りたい!」


 末っ子組は非常に楽しそうである。確かに滅多に乗れないだろうからなと啓吾は苦笑した。だが、ここに来ていないもう一つの緊急車両に森は気付く。


「相手もやられると分かってるなら救急車ぐらい配備しとけばいいのにな」

「お前と違って学習能力がないんだろう。確かに全て救急車だったらまだ破壊するなと命令が下ったかもしれないが……」


 土屋がそう告げた直後、周囲にいくつもの爆発が起こる。もちろんそんなことを一瞬にしてやるのは極悪非道の参謀だ。


「……秀兄貴」

「さっ、車両は確保しましたから行きましょうか」


 テロリスト達の破壊活動はまだ始まったばかりだ……




さあ、やってまいりました一行の破壊活動!

早速秀が容赦なく爆発を起こしてくれてますが、まだまだ彼はこんなものでは済ませません(笑)


そしてシュバルツ博士もやはり啓吾の父親だけあって、銃の名手でした。

そりゃ、医療指導に銃使うぐらいのスパルタですからね……

でも、やはり親であり師匠であるシュバルツ博士、ちゃんと龍達の先のこと喪示してくれる大きさはお持ちなようです。


だけど消防車と戦車を早速いただいた一行。

これからどんな活躍を見せてくれるのか楽しみですね(笑)




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