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天空記  作者: 緒俐
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第二百二十三話:君が欲しい

いつもより恋愛色濃いめです。

苦手な方はスルーしてください。

 アメリカに来た初日に泊まったホテルから全員の荷物がミズーリホテルへと届けられたのは、ホテルに到着して二時間後のことだった。

 全員の荷物となるとやはり多いのは当然なのだが、その半分が一体中身に何が入ってるのだと疑いたくなるというのはいかがなものか……


 しかし、おそらく一番危険物を持ち込んでいる青年は、ロビーで満面の笑みを浮かべてそれらを受け取った。


「これで全てです」

「ご苦労様」


 彼の性格を知る大人三人組は、黒のアタッシュケースの中身を想像もしたくないなと思うが、彼の恋人は秀の腹黒さを全く知らないためか自然な会話の流れとでもいうかのように尋ねた。


「秀さん、その中に何を入れてるんですか?」

「パソコン関係の機材ですよ。さすがに宮岡さんのパソコンだけじゃ仕事も片付きませんしね」

「でも、前回より数が増えてるような……」

「まあ、薬も数種類持ってきてますからね。兄さん達が医療行為に困らない程度ですけど」


 毒薬の方が多いのでは……と言える強者はここにはいない。だが、それで納得するのが柳である。寧ろ賛辞の言葉まで出てくる純粋さに大人達は心の中で拍手を送った。


「秀ってあの龍の弟なんだよな……」

「ああ、しかも龍が育てたな」


 それがどうしてこんなに腹黒く……と思うのは無理もないことだろう。確かに天宮兄弟は全員かなりの個性派揃いである。よくそうなったなと言わんばかりのだ……


 しかし、答えが出るはずもないため、宮岡は自分の荷物をベルに頼み、愛用のパソコンを久しぶりに開いた。数日でかなりの情報が送られて来ているらしく、彼は微笑を浮かべた。


「これで仕事が出来る」

「良は相変わらず仕事好きだよな」

「お前がパソコン操作を覚えないからだろ」

「別にインターネットさえ出来れば俺の欲求は事足りるからな」

「だろうな。まあ、お前に道具を与えてろくな使い方はせんだろうから精々一般的な情報で満足してろ」

「平気でハッキングする奴に言われるのも微妙だよな……」


 森は言葉通り微妙な表情を浮かべる。宮岡は裏社会の情報のセキュリティすら破壊できるほどのパソコンマニアだ。森の言うとおり、使い方に関しては注意を受けるのはどうなのかと言いたくなる。


 そしてそれぞれの荷物を振り分け、出てきた天空記の正史と演技を柳は手にとった。浮かぶのはあの活字中毒者達の顔……


「天空記、どうしましょうか……」

「龍達には天空記を与えないほうが良いんじゃないか? 今度は一週間出てこなくなるぞ」

「いや、それはそれで面倒だろ」

「何でだ?」

「あの二人に天空記を読ませないことで不機嫌になられたら地球の重力のバランスが絶対壊れるぞ」

「否定できないよな……」


 間違いなくあの長男達は最悪なレベルでいろいろな事象を起こすに違いない。そばにいたベルにとりあえず龍の部屋にでも置いといてくれと頼むことにした。


「では僕達も一旦休みましょうか。集合は夕食の時に」

「そうだな」

「じゃあ秀君、柳君、また夕食の時にね」

「はい」


 柳は森達に一礼して分かれたあと、沙南と同室の部屋に戻ろうとしたが秀に腕を掴まれた。


「秀さん?」


 どうしたのだろうと首を傾げれば、秀はニッコリ笑って答えた。


「柳さん、君の部屋は僕と一緒です」

「えっ?」

「沙南ちゃんもいないことだし、一人で過ごすのは危険でしょう?」

「あっ、だったら紫月達と一緒の部屋で今日は寝た方がいいのかしら……」


 その方が自分も安心するし……と本気でそう考えているだろう柳に、自分の気持ちを知らせる方法を秀はストレートに表した。


「柳さん」

「えっ?」


 ふわりと柳は秀の腕の中に閉じ込められた。それに柳は相変わらず慌てふためくが、秀は柳の耳元で囁いた。


「君を抱きたいんですが」

「えっ……! あっ、えっ!?」


 突然落とされた予告なしの爆弾に柳は真っ白になった。そして秀の手が優しく頬に触れる。


「ずっと邪魔ばかりされてましたからね。おまけに少し離れてましたからとても今夜、君を手放せそうにないんですよ」


 悪戯な笑顔を向けられるとさらに心は跳ね上がる。本当にこのストレートを受け止めるのは心臓に悪い。だが、さらに顔が間近にまで迫ってきて心は囚われる。


「どうしますか? 僕は本気ですが」


 選択権は与えられていても目が逃さないと告げている。いや、寧ろ逃げ出そうとしたらそのあとが恐い。

 そして頬に触れていた手がすっと動き、親指で唇をなぞると柳はビクンと震えた。もう、心臓がもちそうにない。


「し……秀さん……」


 目に涙を溜めながら震える柳の目元に口づけを落として、秀は自分の中に小さな体を閉じ込めてしまう。


「すみません、それだけ余裕がないんです。こんなに君を好きになるなんて予想もしてなくて、何より自分のものにしたくて堪らなくなりました」


 それは出会うたびに、触れるたびに止まらなくなっていく。きっと柳を壊してしまうほどの情熱で、何より愛おしくて自分のものにしたくて、一つになりたいと願ってしまう。


「しゅ……さん……」


 声が声にならない。体が動かない。鼓動だけは激しく、しかし、どこかで冷静な自分がいる。秀を愛しているという気持ちだけは嘘偽りないと思う自分が……


 すると秀は柳にもう一度自分の思いをストレートに伝えた。それこそ一番彼が望んでいることを。


「柳さん、君を僕に下さい。いえ、篠塚柳が欲しい」

「あっ……」


 熱が伝わって来る。それが心の中に一石を投じて波紋を生む。その気持ちは恐怖と秀に対する深い思いだ。

 そして秀はもう一度柳の目を見て尋ねた。


「柳さん、どうしますか?」


 堕ちた。もう堕ちていたのだ。心は出会ったあの時から秀のものだったのだから……


「……秀さん」

「はい」


 柳は秀のシャツを掴んで答えた。


「私……私も……欲しい……。秀さんが、欲しい……」


 そう伝えると同時に柳の体はすっと抱き抱えられた。その行動に驚いて柳は真っ赤になったまま秀を見れば、彼は非常に楽しそうな笑みを浮かべている。


「柳さん」

「は、はい……」


 今度は何をいうつもりなのかと心臓はまた跳ね上がるが、耳元で彼は柳が逃げたくなるようなことを言いきった。


「沙南ちゃんが戻って来るまでのしばらくの間、寝せませんから」

「なっ……!」


 思わず抱えられた腕から猛ダッシュで逃げようとしたが、時既に遅し……秀の部屋の扉が閉まり、彼女は完全に囚われの身となるのである……




秀〜〜!!!

いや、やるとは思っていましたよ、

言うとは思っていましたよ!

だけどいつもあなたは有言実行ですか!!!


うん、まあ君が欲しいとストレートにぶつけちゃうあたり秀らしいですけど、

相当秀は離れていた間、柳ちゃんへの愛が異常なほど募っていたようで……


まあ、彼の言うとおり邪魔がいつも入りますからね。(シスコンとか……)

邪魔されないうちに自分のものにしてしまおうというのは秀らしいけど……


だけど柳ちゃん……

うん、無事?ではないでしょうね……

そして啓吾兄さん、一体どうなるのか……




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