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天空記  作者: 緒俐
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第二百七話:美酒

 太陽宮の廊下が一部破損したことを龍は光帝に謝り倒したあと、宴会会場へと歩みを進める。


「全くお前達は……!」

「すみません、兄上」

「いや、面目ない……」


 ばつが悪そうに二人は謝罪する。本来自分達が補佐しなくてはならない天空族の長なのだが、何故かその長が弟や従者や部下達の問題の数々に頭を抱える羽目になっている。


 そしてそれを反省してはいるものの、いつも騒ぎが絶えないのが彼等だ。


「はあ〜翔達は礼節を守ってるのだろうか……」

「柳泉と紫月がいるんだ。騒いでいても無礼を働かれない限りは問題ないだろ」

「ああ……二人の手に負える程度なら構わないが……」

「大丈夫だって。それにまだ竜巻一つ起こってないみたいだし」

「……本気で光帝に申し訳なくなるから勘弁してくれ」


 そうこう話してるうちに宴会会場にたどり着くと、そこはすでに見事なまでの賑わいを見せていた。


 酒好きな仙人達や兵士達が浴びるように酒を飲み、女神や女官達が舞い踊り、一部では恋を囁きあう者達までいる。


 そんな中、どんな姫達よりも一際美しさを放つ少女が龍を見つけるとパアッと華やかな笑顔で近付いてきた。


「殿下!」


 そう呼ぶ声に龍は表情が少し緩む。しかし、すぐに天空族の長として沙南姫に頭を垂れた。


「お久しぶりです、沙南姫様。本日はお招きにあずかり……」

「固い挨拶は抜きよ! 翔太子達が早くしないとご馳走全て食べちゃうんだから座った座った!」

「兄者達! 早く来いよ!」

「龍太子! 付き合え!!」


 翔や森が楽しそうに龍を呼ぶ。すでにそこは無礼講らしく、とても礼儀なんてものは存在してなどいない。しかも純や夢華にも酒を飲ませたのは明らかだ。


「あいつら……!」


 とりあえず何とかすべきところはしようと龍は翔達の元へ向かった。そして啓星はいつもその場にいるはずの女神がいないことに気付く。


「……沙南姫様、紗枝は来てないのか?」

「桜の木の下で太子達相手に飲み比べやってるから適度なところで止めてあげてくださいね」

「……あのバカ……今何人抜いた?」

「六人目かな」

「行ってくる……」


 面倒だと言いながらも行ってしまうのは啓星の性分。紗枝自身も宴の時に酔い潰れても誰かが助けてくれると思っているらしく、毎回遠慮せずに呑んでいるのだった……


 そして秀も自分の従者がその場にいないことに気付く。


「沙南姫様、柳泉は?」

「挨拶まわりというより挨拶されるからそこから抜け出せない感じかな」


 悪戯っぽく笑う沙南姫に秀は彼女の思惑に気付いて微妙な表情を浮かべた。


「沙南姫様……楽しんでいらっしゃいますね……」

「あら、好きなひとに助けられたら女の子は嬉しいものよ?」

「お気遣いは嬉しいですけど柳泉は私の大切な従者ですからね。あまりいじめないでくれますか?」

「それが無理なのは秀太子が一番分かってるんじゃない? それにまだ柳泉は秀太子のものになってないでしょう?」


 それに秀は苦笑した。沙南姫がいうことはもっともだったからだ。


「兄上が天空王になって沙南姫様を迎えられたら私もケジメは付けますよ」

「そうなの? 秀太子のことだから自分の感情のままに行動するかなって思ってたけど」

「ああ、その辺りはご心配なく。ただ今の状況を楽しむのも悪くないと思ってるだけですから」

「……啓星様が知ったら太陽宮は全壊しちゃうのかしら」

「それはそれで沙南姫様もうちに住む理由ができるのでは?」

「あっ、それはいいかも?」


 龍が聞いたら間違いなくいろんな点で頭を抱えそうなことを二人は平然として言ってのける。

 まあ、よく柳泉のもとに遊びに来てるので理由なんて今更作る必要もないのだけれど。


「とりあえず柳泉のところへ行ってきます」

「あっ、やりすぎちゃだめよ? また殿下が頭抱えちゃうから」

「大丈夫ですよ。彼等は元々存在しなかったことにすればいいんですからね」


 それってどうなのかと思いながらも、沙南姫は騒がしい天空族の宴の中に入って行くのだった。



 そして太陽宮一の大きさを誇る桜の木の下で、すでに自然界の女神はかなり酔っ払っていた。

 酒にはかなり強い彼女だが、太子達が持ち込んだ美酒と飲み比べに陥落寸前だったのである。


 しかし、あと少しで落ちるはずだった彼女の前に親しい悪友が現れたのだ。


「あ〜、けえ〜せぇ〜」


 かなり幸せそうな彼女に啓星はそれは深い溜息をついた。


「自然界の女神がどんだけ呑んでるんだよ……」

「ふふふ、わかんなあい?」

「はあ〜、訳のわからない奴に襲われてもしんねぇぞ」


 そういって遠慮なく紗枝の隣に座り、彼女を酔わせて持ち帰ろうとした男達に刺すような冷たい視線をくれてやる。


 しかし、酔ってる性なのか紗枝は全くそれには気付かず非常に上機嫌だ。


「らいじょうぶ! 今日は〜けえせいがつえてかえつて〜くえゆのでひょ?」

「俺はいつからお前のお守りになったんだよ……」

「いひからきようは天宮にとまゆの!」

「へいへい。んじゃ、今日は一緒に寝てやるからな」

「ふふふ……!」


 抱き込まれてふわりと頭をなでられるのが気持ちいいのか、ピタリと紗枝は啓星に体を預けた。


 彼は心中で「酔ってれば可愛いげがあるんだけどなぁ」と、苦笑する。滅多にこういうことはないからだ。


「王子様方、悪いがそういうことだからさっさと散ってくれるか?」

「なっ……! 天空族の一従者が何を!!」

「自然界の女神様を泥酔させなけりゃ手ごめに出来ない奴に文句言われる筋合いはねぇよ」

「くっ……!」


 すぐに言い返せないのはまさに図星だからだ。


「まっ、ここで戦ってもかまわないが、理由を知った天空王様を敵に回す覚悟か無ければ引いといた方がいいぞ?

 それにこいつはやがて俺のものになるからな、手ぇ出すなら天空軍総動員してお前ら一族を潰してやる!」


 啓星の青い目が僅かに光ったことに恐れをなして太子達は散っていった。


 そしてそばにおいてあった美酒を発見するなり、啓星は重力でそれを寄せてぐっと飲む。確かに紗枝がいくらでも飲みたくなるような味だなと納得した分、溜息は大きくなる。


「はあ〜人の気も知らずに……」

「けえせ〜」

「なんだよ……」

「気もひいいかや髪撫えて〜」


 さっきまで撫でていてくれた手が酒に取られた性か、紗枝は啓星に擦り寄って来る。所々、自分達を見る視線を感じるが啓星はくくっと笑って答えた。


「俺も酔わされたな……」


 そう言って唇を重ねるのだった……




太陽宮の宴。

天界のなかでもかなりの権力をもつ光帝の宴となれば、やはり多くのものが集まってきてるようで……


そこで当然のように柳泉も紗枝さんも狼達に狙われてた模様(笑)

だけどそれを蹴散らすのが天空族の男達です。

さぞやいろんな意味で彼等は恐れられていたでしょう。


だけど、二百代前の啓吾兄さんこと啓星ってけっこう表現がストレート。

少し秀に近い部分があるかも。

人前で堂々とキスしてますからね(笑)


ちなみにこれが理由で紗枝さんがやけに不機嫌になったことは言うまでもありません……




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