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天空記  作者: 緒俐
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第二百四話:全ては二百代前に

 業火が静まったことを確認すると、啓星は結界を解いてホテルの方に視線を向ける。それから上空も見上げてまだ何も起こっていないことを確認した。


「紗枝達は……あそこか」


 派手に暴れてくれてるおかげで位置がすぐに分かるので有り難い。啓星はふわりと天を蹴ると、すぐに紗枝達の元に追い付き一行の前に降り立つ。


「啓吾!」

「啓星様」


 無事だったかと一行が安堵すると、啓星は紗枝の前に歩み寄ってすっと頬に触れる。


「啓吾……じゃなくって啓星?」


 言い直す紗枝に啓星はくすくすと笑った。二百代前も愛しいと思っていた自然界の女神となんら変わりない女に、啓星は甘い空気を纏って尋ねる。


「怪我は?」

「ないわよ。だけどそろそろ現代の啓吾に戻った方がいいんじゃないの? 結構力使ってるんでしょう?」


 現代ではようやく恋人同士になれたというのに、どうやら彼女の態度は変わらないらしい。啓星はそれがあまりにも彼女らしくて苦笑した。


「相変わらずだな。お前さえ望めば、私は啓吾より甘やかしてやれるというのに」

「必要ないわよ。それに自然界の女神もそんな女じゃなかったでしょう?」


 全くその通りである。女性らしさを兼ね備えながらいつも勝ち気な態度で自分と接して来た女神は、現代の紗枝となんら変わりない。


「ああ。ならば現代の私を頼む、紗枝……」


 そう告げると啓星は彼女を抱きしめたあと光に包まれると、現代の篠塚啓吾へと戻り体はガクリと崩れる……が!


「あっ……」

「そういえばそうだったな……」


 さすがの紗枝もこれには冷静でいられなくなった。いや、啓星の性格上、最後に自分を抱きしめたのは絶対嫌がらせ以外の何でもない。


「桜姫君、覚醒後ってどうにかならないのかい?」

「はい……服そのものを維持するのは個々の力では難しいかと……特に皆様は服が力に耐え切れず、覚醒時に弾け飛んでいますし……」

「桜姫は弾け飛んでないみたいだが?」

「私は天空王様に力を与えられている存在なので、その力さえコントロールできれば服に関しては問題なく……」

「なんだ、いいスタイルしてるのにもったいな」


 全てを言い終わる前に土屋と宮岡は森を蹴った。森の発言は間違いなくセクハラである。


「桜姫君、構わないからこいつを眠らせてやってくれ」

「いや、むしろ棺を用意するから花で囲んでやってくれ」

「いえ、そこまでは……」


 容赦ない土屋と宮岡の意見にさすがの桜姫も戸惑った。どうやら自分の主に対して無礼な発言をするものには容赦ないが、自分のことに関しては多少寛大でいられるらしい。


「ちょっと皆! 啓吾を何とかしてよ!」


 抱きしめられたままではさすがに身動きが取れず、紗枝は相変わらずなやり取りをしている一行に助けを求める。


 とりあえず桜姫が背を向けたことは許せるとしても、他の三人は全く動こうとしない。


「ちょっと、何で?」

「ああ、そのままの状況で目覚めたら啓吾君が紗枝ちゃんを貰ってくれないかなと……」

「あっちゃん!?」

「いや、啓星が紗枝ちゃんのことを思っていたのは分かったからさ、悪くないのかと……」

「良ちゃんまで!!」

「紗枝」

「何とかしないと殺すわよバカ兄」

「何で俺だけそんなに差別されるんだよ……」


 自分に対しては遠慮なく殺気を向けてくる妹に、森はとりあえず何とかしてやるかと動く前に啓吾の瞼がゆっくり開いた。どうやら非常にだるそうな表情だが……


 そして自分を支えてくれる紗枝に気付いて啓吾はふわりと笑うが、ふと自分の姿に気付いて彼は羞恥心のかけらもなく尋ねる。


「ん? 何やってんだ紗枝」

「やってるのはあんたよっ!!」

「だあっ!! うっ!!」


 ストレートをお見舞いされてさらに啓吾の服が顔面に直撃する。


「何しやがっ!!」

「さっさと着ろ!!」

「今更」

「自然に帰りたいの?」


 紗枝が言うと本気で冗談ではなくなるため啓吾はすぐに衣服を身につけた。


「とりあえず啓吾君、久しぶりというほどでもないが無事で何より」

「ああ、こっちも妹達が世話になったみたい……で……」


 宮岡に背負われている夢華を見てシスコンはフリーズした。


「啓吾君?」

「良二、夢華って覚醒したんだよな」

「ああ」

「それに末っ子も服着てなかったんだよな!」


 段々声が鬼気迫るものになって来たシスコンに、とりあえず純の弁護は全員ですることにした。


「まあ……だけど二人は元に戻った後すぐに服着せたから別に問題は……」

「はい、覚醒が解けるところでお二人とも意識はなかったことは確認しておりますし……」

「というよりこの二人はまだ小学生なんだし、いろんな意味で問題ないだろ?」

「そうそう。純ちゃんってそういうところは心配なさそうだし」

「龍以上に心配いらないよ」


 全員に言われた性なのかシスコンは純への殺気はおさめるが、残りの者にその分が向く。


「んじゃ、三男坊と特に次男坊は殺していいな」

「秀君は報復が……」

「その前に消す」


 光陰矢の如し……啓吾は瞬時にその場から消えるのだった。


「桜姫」

「はい、紗枝様」

「翔ちゃんと紫月ちゃんに服届けてあげてくれる? 下手すると翔ちゃん無実の罪まで背負わされて殺されちゃうから……」

「はい……かしこまりました……」


 近くに倒れていた者の服を拝借し、すぐに戻りますと告げて桜姫は姿を消した。



 そして、ホテルの中でこの世の創造主こと、主上と対峙していた龍は……


「神に力を貸す理由か……」


 龍に尋ねられた問いに、神は時の流れを感じるかのようにゆっくり目を閉じた。


「天を従える王よ、ならば逆に問う。お前は何故神に逆らおうとした」

「何だと?」

「悪神と呼ばれようとも神は神族。それは紛れも無い事実であり本来なら戦いを挑むべき相手ではなく膝を折るべき者だ」

「ふざけるなっ!! あいつが天界でどれだけ……!!」

「だが、全てを滅ぼしたのは天空王、それはどんな理由があろうとお前だ」


 龍は言い返せなかった。そしてさらに追い打ちをかけるかのように主上は続ける。


「そしてお前はあの戦で何を守れた? 自然界の女神はおろか、自分の負の力を封じた従者も弟達も、そして……沙南姫も」

「黙れ!! 俺達はただ平穏をのぞんでいたのにそれを壊したのは」

「お前だ、天空王。お前が天空王へと覚醒した儀式、あれこそが全ての始まりだ……」


 時は二百代前へと遡る……




さあ、次回から少しの間お話は二百代前に遡ります。

ところどころで今まで入れて来た話の全貌が明らかになるという感じです。

一体どんな感じの話になるやら……


そして啓吾兄さんのシスコンが……

紗枝さんみたいな彼女が出来ても相変わらずシスコンは治りません(笑)

それどころか最近は殺人までやっちゃいそうな勢い……


桜姫! 翔の命が危ないぞ!

早く服を届けてあげてくれっ!

ん? でも今回は翔も恋愛要素入ってたから啓吾兄さんから処刑されても仕方ないか?


まあ、どうなるのかはもう少しお待ちください(笑)




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