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天空記  作者: 緒俐
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第百九十七話:予測される結末

 花びらと神通力の攻防戦は激しさを増していた。互いに傷を付けながら、そして一瞬の隙も逃さぬという戦いだが、体力差があるのか桜姫の力が鈍ってくる。


「神の力の前では天空王の力の一部しか持たないお前では無力だ」

「くっ……!」


 より鋭く放たれてくる神通力を花びらの盾で防ぎ切れず、桜姫の肌に数ヶ所切り傷を作る。

 本来なら実力は互角のはずだと桜姫は思っていた。だが、先日よりも三國の力はやけに上がっている気がする。


「何故押されているのかという顔だな」

「……理由は神から覚醒させられ、無理矢理力を引き出されてるように見受けられますが」

「残念だが自分で望んだ結果だ。それに無理矢理引き出された力ならばとっくに身は滅びているさ」


 そう告げてニヤリと笑みを浮かべる三國に、桜姫は一つの仮説が立った。


「……主上ですか」

「そうだ。体に負荷をかけないよう、潜在能力を引き出してもらった」

「言葉を改めなさい。主上を唆して得た力だと」

「なにっ!?」

「そう反応なさるのは多少なりとも心辺りがおありのようですね。二百代前からずっと天空王様の影に怯え続けて来た貴方は、またいつあの天界を滅ぼす力を味あわなければならないのかと」

「くっ……!!」


 三國の顔が歪む。少なからずともそれは事実に違いなかった。


「そしてこの現代で天空王様が覚醒されたときに貴方は気付かれたはず。天空王様は」

「黙れ!!」


 三國が放った神通力が桜姫を消し去ろうとしたが、その力をもう一人の青い衣を身に纏う青年が掻き消した。


「啓星様……」

「桜姫、将軍達は縛り付けた。早く催眠を解きに行け」


 地上を見渡せば完全に森達は縛り付けられているようで身動き一つ取れない状況だった。


「かしこまりました」

「行かせるとでも思うか!」


 再度、桜姫に放たれた神通力を啓星は掻き消す。


「お前の相手は俺。天に挑む度胸もない月の太子なんか俺が潰してやる」

「ほざくな!! たかが従者ごときが!!」

「だからお前は負けんだよ!」

「ぐっ!!」


 三國の体に重力の枷がかかる。それは先日、天空王が止めなければそのまま圧死させていた力と同じものだ。


「太陽の光を求める、月の人間なら当然だろう。だが、この世界でも天がなければ月は輝く意味すらないことを忘れてもらっては困る。さらに」

「くっ……!!」

「お前と俺の戦いの相性は悪過ぎんだよ。神に与えられた力程度で俺の重力下で支配される月が敵うわけがないだろ」


 潮の満ち引きにも関わる力そのものを支配下に置く啓星の力に、適うはずがないということ。


「お前に……お前達天空族に我々の何がわかる!」

「知るか。俺は龍が守ろうとしてるものを守ることだけが仕事なんだ。それに人の大事なもんに手を出したお前を、またこの現代でも潰す俺の労力の方を考えろ」


 面倒なことこの上ないと啓星は吐き捨てる。その態度に三國はさらに激怒した!


「だから全てがお前達に敵意を抱くのだ! そしてそれを全て滅ぼす力を持つあの男が憎い! 自然界の女神も、太陽の姫君も、何故天空王に膝を折る!!」

「天に唾を吐くと罰が当たるからだよ。世の中の常識だろうが」


 そう告げる啓星の内心が半分本気だと三國が悟ることもなく、彼から一気に力が吹き出した!


「ほざくなっ!!」

「冗談じゃねぇんだけどな……」


 そして激しい力のぶつかり合いが雲を弾き飛ばした。



 それから地上に下りた桜姫は、本当に一分以内に催眠を解いていくあたり律義である。


「大丈夫ですか? 森将軍」

「……ああ、夢なら醒めないでほしい美女が目の前に」


 虚ろな目をして桜姫に抱き着こうとした森に、土屋と宮岡の蹴りが入る!


「ってえ!! 何しやがんだ!!」

「恩人に失礼なことをするな!!」

「はっ? 恩人?」

「お前今まで何してたか記憶にあるのか?」

「目の前の美女と戯れてた気がするんだが」


 その返答にさらなる力で殴り付けた妹が一人。


「紗枝ちゃん!」

「久しぶりね、あっちゃん、良ちゃん!」

「ハハッ、そんなに時間も経ってないのに随分長かった気がするな」


 そんな和やかな会話を繰り広げ恭しく桜姫が挨拶すると、ご丁寧にと土屋と宮岡も頭を下げる。


「それで、啓吾君が覚醒して戦ってるみたいだが」

「はい、ですが啓星様は大丈夫です。それよりも柳泉様達が……」

「柳泉っていうと柳ちゃん達か。彼女達も操られてるのか?」

「ええ、しかも覚醒状態ですから一刻も早く正気に戻さなければ……それに天空王様の事も気になります」

「大丈夫だろ」


 森があっけらかんとして答える。


「お姫様が絡んだときの龍は半端ないしな」

「ハハッ、それは言えてるな」


 森達は笑う。確かにそれは心配ないだろうなと紗枝もクスクス笑うが、桜姫は首を横に振った。


「必ずしもそうとは限りません」

「ん? どういうことだ?」


 森が尋ねると桜姫は一度ふわりと花びらを散らし、啓星の重力下にいた者達を眠らせて大人しくさせた。


「沙南姫様は最近不安定ではございませんでしたか?」

「ああ、龍がいなくて心細かったんだろ? いろいろあったんだし」


 無理もない状況だろうと誰もがそう思っていた。それに誰よりも沙南が龍を思ってることは知っているため、傍にいてほしいと思ったのだろう。


「やはり……」

「やはりって、普通なんじゃねぇのか?」

「ええ、世間一般的にはですが」

「んじゃ、問題は」

「……あります。おそらく沙南姫様が覚醒の兆しをみせているように思われます」

「……それってやっぱり暴走の可能性があるってことか? それも太陽が」

「はい、沙南姫様のお力も天空王様と同じように巨大なものですから」


 太陽の力と聞いただけでその強さは半端なものではないと森達は思う。


「ただ、天空王様が覚醒したとき、まだ主は多少なりとも現代の意識を残しておいででした。

 沙南姫様もそのように意識を保てるならば問題はありませんが、現在の御様子が不安定ならばその可能性は低く、場合によっては最悪の結末を迎えます」


 桜姫の言葉に全員が息をのむ。


「この現代は沙南姫様が消し去ります」


 しかし、まだ夜明けまでには時間があった……




はい、二日もお待たせして申し訳ありませんでした!

ちょっとこれから忙しくなる時期な緒俐です(笑)

でも、出来るだけ毎日更新していきますからね☆


そして、今回は啓吾兄さんが自分の意志で覚醒しました。

基本、従者の覚醒は主に引きずられてますからね。

だから結構成長してるんです、啓吾兄さん(笑)


それから森達の催眠が解けまして桜姫から語られた予測。

太陽の姫君こと沙南ちゃんが覚醒して暴走したらまずいってもんじゃないでしょう!


しかし、神はどうも龍達の前で沙南ちゃんを覚醒させたいらしく……


さあ、次回はどうなるやら……




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