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天空記  作者: 緒俐
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第百九十六話:月の太子

 月の輝きは太陽の光があるからこそ美しい。しかし、月が太陽を飲み込む日がある……


 二百代前、月の太子だった三國は天空族と夜天族の争いが激化していく中、この世の創造主である主上に呼び出されていた。


 問われた内容はどちらかに荷担する気はあるのかというもの。しかし、彼はどちらにもつかず中立を守ると告げた。

 天と夜の世界、そして太陽に力を借りる身としては全てを敵に回すわけにはいかなかったからだ。


 そして宮仕えを終わらせ、自分の居城へ戻ろうとした時、一人の女神が背後から声をかけて来た。


「月影殿、お久しぶり」

「これは紗枝殿、あなたも神宮にいらしていたのか」

「まぁね。主上に呼び出されたとあっては参内しないわけにもいかないし」


 自然界の女神は肩を竦める。どんな女神よりもさっぱりした性格なのに気品があり、その美しさは女神の中でも一、二位を争うほどで……


 そんな彼女が自分の一友人として接してくれてることに内心苦笑して、久しぶりに尋ねてみた。


「紗枝殿、よろしければ今宵、月宮の宴に参加せぬか? 多くの女神や仙人が来るのだが」

「う〜ん、折角だけど今日は先約があるのよね」

「先約?」

「ええ、天宮で女の会をやるの」


 悪戯っぽく笑う紗枝の顔を見れば、それは断られても仕方ないなと笑った。


「ああ、紗枝殿が妹のように可愛がってるという」

「そうよ、啓星の妹達なんだけどもうあれは反則の可愛さよね! 月影殿も会ったら分かるわ!」

「……その啓星と彼女達の主が見せないために数々の妨害をしてるとの噂だが」

「う〜ん、まぁ特に柳泉はね……」


 妹離れできない兄と従者を独占するためには手段を選ばない主だから……、と紗枝は一つ溜息をついた。


「だけど今度はお邪魔させてもらうわ。そうね、その時は啓星も連れていこうかしら」

「啓星を?」

「ええ、あいつと仲良くなれば妹にも会わせてもらえるんじゃない? それに結構面白い奴なのよね」


 そう言ってくすくす笑う表情に本人はきっと気付いていないのだろう。啓星の話だけなのだ、これほど優しく笑うことなんて……


「……そうか」

「あっ、それじゃあ私もそろそろ行くわね。天空王と沙南姫様をからかいに」


 ひらひらと手を振って神宮だと言うのに駆け出した。そして視線の先には楽しそうに天空王の傍で笑う太陽の姫君がいる。それをちらりと見て踵を返し、月影は彼の居城へと帰っていった。



 月の宴には多くの列席者がおり、天女達の舞や酒に溺れる仙人達で賑わいを見せていた。ただし、ここで比較する話は後を絶たない。


「う〜む、月の宴も悪くないが上玉の女子は少ないのう」

「だが酒の味は悪くないぞ?」

「おい、月の太子よ! 剣舞ぐらいやってみせぃ!」

「ああ、そういえば天宮での宴で天空王様が素敵な舞を見せて下さったわね」


 月影にとってそれはとんでもないことだった。何故宴を開いている主が芸をしなければならないというのだろうか。見下されているとしか思えない。


「申し訳ありませんが……」

「つまらんのう、やはり天空王は器のデカすぎる男ということか」

「光帝が沙南姫を是非天空王の妻にと言っておるぐらいだからのう」

「えっ? それは本当なのですか?」


 月影は仙人に尋ねると何を今更と言った表情で答えた。


「ん? 沙南姫が天空王に恋い焦がれていることは天界の常識じゃろう? だが今まで天空王が堅物だったから全く進展しなかったが、さすがに守るべき主からの命令では逃げられんじゃろうな」

「いや、めでたいじゃないか! 天空族はさらに繁栄を約束されたも同然。しかも自然界の女神殿も天空王の従者と恋仲らしいぞ」

「ほう、啓星というものだったな。確かあれも天空王に及ばずとも、南天空太子と張り合っておるらしいな」

「あの天界一の美貌を持つものに張り合うのか。それは自然界の女神も堕ちてしまうのう」


 そんな話を聞かされ、月影は失礼すると庭へと下りた。楽しいはずの宴が気分を害すもの以外の何でもなくなる。


「随分機嫌が悪そうだな、月影殿」


 月影は声がした方に視線を向けると、そこには神が微笑を浮かべて立っていた。


「……招かれざる神が何の御用ですか?」

「君に天下をとってもらいたい」

「なっ……!」


 突如言われたことに月影は絶句する。それに神は軽く笑って話を続けた。


「君が天下をとれば沙南姫はもちろん、紗枝殿も手に入る。そして君達月族を使って来た神族も思いのままだ。もちろん主上も……」


 ゴクリと唾を飲み込む。あの太陽が、そして天下が自分の手に入るのだという。


「悪い話ではないだろう? 天空王がいなくなればいいと思わないか?」


 天空王がいなくなれば、あの太陽は自分の傍に置くことが出来るのだと……


 月影はそれを了承した……



「クソッ!!」


 啓吾は紗枝を抱えて飛び上がり、容赦ない攻撃をかわすだけで精一杯だった。桜姫は三國と激しい攻防戦を繰り広げており、とてもじゃないが森達の催眠を解いてる暇はない。


「啓吾、いっそのことあのバカ兄達圧死させて!」


 随分思い切ったことを言うなと啓吾は笑うが、どうやらそう簡単にはいかないらしい。


「悪ぃな、あいつらにはかなりの重力かけてんのに動いてくるんだ。だから圧死は無理」

「……だったら」

「やめとけ。お前は覚醒してない時に自分の力を使おうとするな」

「でも……!」

「人の命を救う医者が人の命を奪うかもしれない力を使うんじゃない。自然界の力なんてこの現代で使っていいもんじゃないだろ」


 生死を決めてしまうような力なのだからと啓吾は止めた。


「だけどこのままじゃ!!」

「ああ、確かにまずい。それに中ボスの仕事も山積みだしな。だが、一つだけ勝算がある」

「えっ?」


 啓吾は上空で戦ってる桜姫を見上げた。


「今の桜姫の状態、あれは覚醒しているのに意識を保ってる状態らしい」

「って、そんなことやってるの!?」

「ああ、だから俺にも出来るかもしれないだろ、同じ従者なんだし。だけどまあ……」

「ちょっ! 啓吾!?」


 突如服を脱ぎ始めた啓吾に紗枝は真っ赤になる。


「何だ? 昨日全部見ただろ?」

「知らないわよっ!」

「ハハッ、まあ服までどうなるか分からないからさ、預かっといてくれ。あっ、そう考えたらやっぱお前にも覚醒してもらってまた……」

「さっさと行け! バカっ!!」

「へいへい!!」


 そして重力が暴れ出す……



はい、今回は何故か三國こと月の太子の話に……


とりあえず彼はこのようないきさつで神と手を組んだとのこと。

二百代前、自然界の女神様だった紗枝さんが油断して力を奪われたのは、

彼と親しい友人だったからというわけです。


まあ、話の内容からご理解頂けそうな、二百代前の秀や啓吾兄さんも相変わらずだったと取られるか……


そして現代、通常の力の解放で重力が聞かない森達相手に啓吾兄さんが覚醒することを決意。

なんせ中ボスは仕事が山積みらしいですし。


にしても……いくら紗枝さんの前だからって堂々と服を脱いでそのセリフですか……

らしいっちゃらしいですけど(笑)




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