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天空記  作者: 緒俐
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第百九十四話:敵は守りたいもの

 世界最大、最高級がそろうテーマパーク、その名も「ヘブンランド」。アトラクションの数も施設の多さもそしてその広さも……夜だというのに光り輝く幻想世界は招かれた者達を歓迎しているようだ。


 そしてけっして来たくて来たわけじゃないが、テーマパークの入口前で各々感想を述べる。


「うひゃ〜! 絶対あのジェットコースター面白いぜ! やっぱり世界最速なのかなあ?」

「いいなぁ。あっ、だけど身長制限とかに引っ掛かるのかな?」

「大丈夫よ、純ちゃん。百四十センチあれば乗れるはずよ」

「よかったぁ、小さい頃乗れなかったんだもん」

「まっ、純はチビだったからな! 今も小さいけど」

「良いんだ、今に翔兄さん追い越すんだから!」

「追い付くまでにも最低後五年はかかるぜ。なにより俺もいま成長期だからな!」

「そういえば翔ちゃんまた少し背伸びたかしら?」


 そんなほのぼのとした会話の傍でシスコンと腹黒も相変わらずの応酬を繰り広げる。


「天国の門ね……地獄の門に改名した方が正しいんじゃねぇのか?」

「じゃあ、啓吾さんだけくぐったらいかがです? むしろそのまま地獄に落ちていただいても構いませんが」

「落ちるのはお前だ。寧ろ奈落の底まで行ってこい」


 なぜ敵の要塞に乗り込む前、毎度の事ながらこの一行はこんなに緊張感がないのかと龍は頭を抱える。


「主、大丈夫ですか?」

「ああ……いつものことだ。桜姫が常識人で良かったよ……」

「畏れいります」


 恭しく頭を下げるが、彼女は常識人ではなく律義で強い忠誠心を持つ人物である。


「桜姫さん、ここでオススメのデートスポットあります?」

「はい、あの観覧車の一番上で愛を誓ったものは幸せになれるというジンクスが売り出されると」

「そうですか、それは柳さんと楽しまないと」

「んなことさせるか! 頂上に行く前に落としてやる!」

「やれるものならやってごらんなさい! まっ、その前に今夜を楽しみましょうかね。二日も会ってないと悪戯心が抑えられなくなるんですよ」

「今すぐ殺してやる!!」

「お待ち下さい啓星様、もう一つジンクスがございまして、その説明がまだ……」


 なんでこうなるんだと龍は本気で考え込んだ。自分達は捕まっているだろう沙南達を助けに来たのではないのかと、どうしてこんなに緊張の糸すら張らないのだと思う。


「おい、桜姫」

「はい、何でしょう」

「俺は先に行くからお前は紗枝ちゃんを守ってくれ」

「かしこまりました、我が主」


 龍の命令は絶対である桜姫は頭を下げる。それでようやく龍が命令を下せる状況になった。


「秀」

「はい」

「お前達は柳ちゃん達を見つけ次第すぐにこの場から離れろ」

「兄さんは?」

「今度こそ神を叩く」


 そうあっさり告げて入場ゲートをくぐった瞬間、侵入者を告げるサイレンが園内中に鳴り響き、GODに属する者達が武器を手にして一行を取り囲み始めた。


「さすがはGOD、侵入者には神兵が相手をしてくれるってわけか!」

「気を付けて下さい、翔様。彼等が手にする槍は数百万ボルトの電圧を帯びています。そして催眠術にかかっていますので動きも並ではございません」

「へっ! それぐらいじゃないと楽しくねぇや! 兄貴、すぐに道を開けてやるから」

「いや、その必要はない。それにこんな場所で時間を食うつもりもない」


 龍が一歩踏み出した瞬間、龍が向かう方向の神兵達は冷や汗を流し早くも意識を飛ばすものまで出始めた。


 しかし、それでも道を開けるつもりがなかった神兵達が龍に槍を振り下ろした瞬間!


「道を開けろっ!!」

「うわあああ!!!!」


 重力と威圧感が取り囲んでいた神兵達を一気に片付け、龍は開いた道を一気に駆け出した! 感覚で分かる。沙南はこの先にいる! 


 しかし、敵は龍が片付けた神兵達だけではない。潜んでいた者達が龍の命を奪おうと飛び出して来た瞬間!


「うわあ〜!!」


 飛び出して来た者を一気に片付ける突撃隊長は、勝ち気な表情を浮かべて颯爽と風を身に纏い高らかに叫んだ!


「悪の総大将の恋路と俺の文明的な生活を脅かす奴は遠慮なくぶっ飛ばす!!」


 ぶっ飛ばしておいてそれを言うかと誰もがつっこみそうだが、天宮家にとっては切実な問題であるため啓吾はポツリともらす。


「個人的な理由なのになんでこんなに納得しちまうんだろうな……」

「少なくとも兄さんの恋路を邪魔する奴は消されて当然なんですよ。だけど彼等は幸せな方なんじゃないですか? 原形は留めてますし……」

「だけど痛そうだよね? 翔兄さんの個人的な理由も入ってるし」

「コラ、純! お前だって俺と同じ立場なんだぞ! 沙南ちゃんが家からいなくなったら俺達は文明的な生活が送れなくなるんだからな! 沙南スペシャルのない食生活なんて考えられるか!」

「くあっ!」


 個人的な理由を述べながら槍を振り回してくる敵を倒す翔に、戦闘に関しては本当に器用だなと啓吾は思う。


 ただ、八つ当たりに近い言葉を発していたときの翔に顔面を殴られた者には同情したくなるが……


「まあ、翔君の言うことは間違ってはいませんね。少なくとも兄さんは沙南ちゃんがいないと生きていけないのは確かなんですし」

「そりゃ違いないな。というか、沙南お嬢さんいてこその天宮龍だし?」

「全くね。桜姫、従者としての意見は?」

「皆様のおっしゃるとおり、主には沙南姫様が必要です。二百代前も現代も変わりません」

「では」


 秀がパチンと指を鳴らすと爆音が響き渡った!


「……容赦のない奴」

「啓吾さんだって後ろから狙ってた奴ら気絶させたでしょう?」

「なんだ? レーザー砲の実験台にでもなりたかったのか?」

「まさか。そんなもの啓吾さんが受けてれば良いんですよ!!」


 そう秀がいった瞬間、無数の火球が一行を狙ってくる!


「なんだぁ!? 火の玉製造機でも作り出したのか……! うわっ!!」


 火球を避けるため宙に浮いていた翔を切り裂こうとかまいたちが襲うが、翔は間一髪それを避けた。


「一体なに!? うわっ!!」


 純は地面を転がって襲って来た水砲を避ける。


「まさか……!」


 火、風、水。これだけの威力を持ち、なにより自分の妹が繰り出す技を間違えるはずがない。


「……嘘だろ」

「そんな……」

「最悪の事態ですね……」


 一行の前に現れた敵、それは彼等がもっとも守りたい存在達だった……




はい、ようやく大乱闘編に入りました!

しかも今回の敵は操られている柳ちゃん達!

はたしてこのピンチを彼等はどうやって乗り越えるのか!?


にしても……本当この一行をまとめなくちゃいけない悪の総大将こと龍……

日本でも大変だったけどアメリカに来てからもさらに気苦労してます……


あくまでも沙南ちゃんを助けなくちゃいけないので、

もう少し怒りやら緊張感やら出てもいいシーンなんだけど……

うん、でもこのメンバーには怒りはまだしも緊張感を求めるのは無理かも(笑)


だけど今回ばかりはコントだけでは終わりません(翔は分からないけど……)




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