第百八十九話:すごいこと
村の周りの殺気に気付いた啓吾と桜姫は、村に被害があってはならないことと、龍の医療行為の邪魔をさせないためにこちらから仕掛ける。
なんせ龍の邪魔をしたら、おそらく敵でも同情してしまうほど酷い目に遭うに違いないのだから……
「おお〜見るからにGODの差し金だな」
「気をつけてください、彼等はGODの超能力部隊です」
「超能力?」
「はい。とは言いましても、啓星様ほどの重力使いはいませんが」
「じゃあ、ただの雑魚だな」
啓吾は簡単に結論づけた。もちろん、自分以上の重力使いなんて出て来られたら厄介なことこの上ないが……
「桜姫、神様を裏切った報いを受けてもらうぞ!」
「そうだ! この罰当たりが!」
啓吾は心の中で深い溜息をつく。どうもこのGODという組織は神を絶対的な存在として崇めているらしく、自分達はその天罰を下す使者にでもなりきっているようだ。
もちろん世界一の権力を持ち、事実、啓吾はこの組織に縛られて来たのだから侮ることは出来ない。
しかし、雑魚はいくら集まっても雑魚。何より天宮兄弟が味方になってくれてると心から信頼できるので、負ける気が全くしない。
そして、心から守りたいと思うものが増えて少し強くなれる気がしていた……
「……啓星様」
「ん?」
「二百代前以上にいい表情をされてるように思われます」
「……かもな」
啓吾はニヤリと笑う。それに桜姫はくすりと笑った。
「啓星……いえ、啓吾様、主が天をひっくり返される前にこの刺客を」
「ああ、叩く!」
次の瞬間、花びらと重力の宴が始まった! 二人は瞬時に超能力者軍団の視界から姿を消す!
「おい! どこに行ったんだ!?」
「任せろ! 俺の千里眼からは逃れられん!」
超能力者の一人が全てを見渡す目を使い、二人がどこに隠れたかを探ると、
「いたぞ! その木の上に桜姫がいる!」
「死ね! 桜姫!!」
桜姫に向けて銃が乱射されると、その体は花びらに変わり超能力者達に降り注ぐ!
「気をつけろ! 奴は幻覚を使って来てるぞ!」
「ならば本体も近くに潜んでいる! 探すんだ!」
「その必要はございません」
響いて来た魅惑の声がする方に視線を向けると、そこには幾人もの桜姫がいた。
「私はここにおります、お好きなように攻撃されてはいかがですか?」
「くっ……!! ならばその場にひれ伏せろ!!」
重力使いが幾人もの桜姫を重力で押し潰すと、さらに花びらが舞い散った!
「また本体がいないのか!」
「でも俺は実物だぜ?」
「なっ!」
木の上から降って来た声に超能力者達は顔を上げた。そこには飄々として啓吾が座っている。
「ほら、重力でも催眠術でも銃でも好きなようにぶっ放してこいよ。俺だってGODに盾突く悪なんだろう?」
「……!! 神に牙を向いた罰当たりが……!! 死ねっ!!」
超能力者達は一斉に啓吾に攻撃を仕掛けたが、啓吾は目を閉じてふわりと別の木に飛び移る。
重力を自在に操っているだけあり、実に身軽としか言いようがない。
「あっちか!!」
超能力者達は啓吾が飛び移った木に視線を向けると、そこには桜姫も別の幹に腰掛けていた。
「う〜ん、なんでこんな雑魚を寄越したんだろうな」
「神の考えあってのことか、それとも彼等の独断か……」
「後者だな」
「何故です?」
「お前が一番分かってそうだけどな。GODは無意味なことはしない」
それに桜姫は微笑を浮かべた。おそらく啓吾の言うことは正しい。
「では啓吾様、この者達の始末をつけさせていただいてもよろしいですか?」
「殺すなよ?」
「はい」
「うわああああ〜!!!」
森の中で叫び声が響き渡った……
一方、村では……
「まだ我慢だ!! 深く呼吸して!!」
「うああ〜〜!!」
聞こえてくる声に天宮家の弟達はビクリと反応する! お産というものを実際に間近で聞くのは初めてだったからだ。
「秀兄貴〜大丈夫なのかよ〜!」
「秀兄さ〜ん! すごく痛そうだよ〜!!」
非常に不安そうな翔と純に秀は何とも言えない。ただ、いつもクールに人を切っている龍が昭和の産婆らしい声を張り上げているのに呆然としてしまうが……
「紗枝さんいわく、女性は出産に堪えられる身体をしてるとの事ですけどね」
「だけどよ、こんなに大変なのかよ……」
聞こえてくる声にビクビクして、叫び声に本気で心配して……
しかし、それでも無事に産まれろと願ってしまう気持ちも消えない。
「おいおい、お前ら随分大人しくなったな」
「啓吾さん」
「どんな敵にも怯まない奴らも、命の現場の最先端にはまだ慣れないみたいだな」
そう言って啓吾は苦笑する。
「啓吾さん、無茶言うなよ。こんなすっごい痛そうな叫び声に平静でいられるかよ」
「うん、本当に痛そうだもんね」
「次男坊の感想は?」
腰ぐらい抜けそうだと言ってもいいぞと笑いながら尋ねてくる啓吾に、秀は肩を竦めて答えた。
「女性ってすごい生き物だと痛感させられてますよ」
「ああ、だったらお前ら全員医者になる資格あるよ」
「ん? どういうことだ?」
三人は首を傾げると、啓吾は傍の椅子に座りぐったりと背もたれにもたれ掛かった。
「こんな命が生まれる最先端でビビる事も出来ない奴が医者になってもたかが知れてる。
心のない医者なんてただの解剖マニアか論文しか書けない頭でっかちにしかなんねぇ。その点はお前達見込あるぞ?」
「だけど龍兄貴、いつもビビってる感じがないけどな」
常に命を前にしてるのに、いつも威風堂々としている龍しか翔は見たことがない。しかし、龍は名医な訳で……
「まあ経験の積み重ねで堂々としようと努めてんだけどな」
「おや? 啓吾さんらしくないですね、心臓にメスを入れてる人なのに」
「ハハッ。まあ、オペ中は怖いなんて言ってたら心臓外科医なんて勤まんねぇからな。
だが、何にも無いときに命の重たさを感じられなくなったら医者としては終わるだろうよ」
医者の顔をする啓吾に秀達は幻覚でも見たような反応をする。
「何だよ」
「いや……なんか一瞬、啓吾さんがすっごい医者だって思った」
「おい、三男坊……」
「うん、龍兄さんと同じぐらいかっこいいなって……」
「末っ子……さらりと俺に対する日頃の評価公表するな……」
「今のはなかった事にしておきますから」
「絞めるぞ次男坊」
何で医者としての自分はこんな評価をくだされているのだろうかと、啓吾は仏頂面になった。
「う〜ん、ですがこんなに出産が大変だとなると少し考えてしまいますね」
「何をだ?」
翔が尋ねると秀はあっさり答えた。
「僕と柳さんの子供ですよ。暫くは新婚気分を味わう予定ですけど、自然と授かるものですから」
「次男坊〜〜!!!」
怒り爆発寸前のシスコンと腹黒参謀がまたも対峙する。
「テメェ……柳に手ェ出したんじゃねぇだろうなぁ?」
「ふっ、そんなプライベートな事いくら兄でも教えるわけがないでしょう?」
「ふざけんじゃねぇ! 今すぐ圧死させてやる!」
「いいでしょう! かかってらっしゃい!」
二人が激突しようとした瞬間、突如二人を押さえ付ける重力が発生した。
「うっ……!」
「何だ……!?」
すると言葉にすることも出来ないほどの形相をした龍が隣室から出て来て静かに告げる。
「次に邪魔したら命はないと思え」
そう告げて静かに扉を閉めるとまた産婆に切り替わったらしい、龍の声と母親の声が聞こえる。
「純……」
「うん……」
「いま見た顔、忘れとこうぜ……」
「分かった……」
産声が上がる、数時間前の出来事だった……
医者やってるときの龍が怒ると……
はい、言葉になんて出来ません。
そして天空王に覚醒した性か、重力も操れるようになってました。
まずは啓吾兄さんと桜姫のバトル。
桜姫のはなびらって幻覚を起こしてるみたいですね。
それと彼女も結構身軽みたいです。
やっぱり天空王の力の一部を持っている性なんでしょうか?
そして出産にビビってる弟達(笑)
いつも無敵な彼等もこの状況には慌てるみたいです。
だけど、それほどすごいことだと感じることが大切だと啓吾兄さんもいってますし。
だけど秀……
すでに柳ちゃんとの未来予想図が出来上がってますね……
一体どこまで暴走するんだろう……