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天空記  作者: 緒俐
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第百八十二話:そして物語は最終章へ

性的な発言があります。

苦手な方はスルーしてください。



 秀達がジェット機から飛び降りて数時間後、無茶な運転と化け物から幾度も体当たりを受けた性だろう、機体は密林に不時着せざるを得なくなった。


 しかし、そんな状況になったのはほぼ八割がた騎馬隊長の責任である。土屋は一つため息をついて森に抗議した。


「……まったく、空港まで辿り着けないとは」

「仕方ねぇだろ。それよりちゃんと大陸に着いただけでも有り難いと思ってくれよ」

「秀君達が活路を開いてくれたにも関わらず、無茶な操縦をしたお前が悪い」


 土屋の指摘に森は反論できない。つい操縦席に座ると空軍時代の暴走をやりたくなるのだ。


 そして、リュック一つ背負った紫月は先に外に出ていた宮岡に尋ねる。


「宮岡さん、ここがどこだか分かりますか?」

「多分バージニア西部の山岳地帯というところかな。まっ、町に出れば菅原財閥か裏社会のツテの一つぐらいあるだろうから心配いらないよ」

「そうですね、だけど早く翔君達と合流出来ればいいのですが……」

「珍しいな、紫月ちゃんが少し心配そうな顔するなんて」

「まあ。自由の国に来たので暴れすぎやしないかと……」

「龍が大変だろうな……」


 もちろん、龍もやってることは一般的にどうなのだと言われそうだが、弟達の分まで背負わされてしまう彼の気苦労性には同情してしまう。


 きっと合流したのであろう、彼の弟達をこれからまとめなければならない悪の総大将は間違いなく眉間のシワが二割増しになっていそうだ。


「君達、待ちたまえ! 私をこんなところに置いていくつもりかね!」


 機体からした声に紫月達は振り返る。そういえばいたなと紫月は思う。楢原首相は何とも情けない表情を浮かべていた。


 ただし、答えはとっくに決まっている上に情けを掛けるつもりなどさらさらない。土屋はサラリと答える。


「ああ、情報はもらったし、参謀が自由の国に着いたら解放するって言ってたからな」

「それに食料も水も残していってるんだ。あの機長達が軍上がりなら守ってもらえ」


 ほら、どいたと森と土屋も機体から荷物を背負って下りて来た。楢原首相はどうしたものかと思うが、とりあえずテロリスト一行についていくことはやめる。


 そして、機体から下りた沙南はずっと不安そうな顔をして北の空を眺めていた。それに気付いて柳は声をかける。


「どうしたの、沙南ちゃん」

「うん……さっきね、空が近付いて来た感じがしたの」

「空が?」

「ええ、たぶん龍さんの力なんだと思うんだけど……」


 まるで全てを飲み込んでしまいそうな強い力。それを使った龍の心が大丈夫なのかと不安になる。


 二百代前の夢の中で、最後の戦いに行く前に見た龍の顔が凄く悲しかった所為かもしれないが……


「沙南ちゃん、大丈夫よ。秀さん達や兄さんも一緒なんだもの。それに龍さんはとても大きな人だから」

「だよね! 龍お兄ちゃんってすっごく大きいよね! お父さんみたいだもん!」


 そう言って励ましてくれる柳と夢華に沙南は笑った。夢華のお父さん発言に森達は笑いを堪えるのに必死だ。


 そして、沙南はいつもの明朗快活な主の顔になる。


「そうね! じゃあ、無事に再会出来たらカジノで勝った分だけ楽しい思いさせてもらおうかな。動態視力抜群の龍さんがスロットで損してるはずがないものね!」

「沙南ちゃん……」

「さすが天宮家の主ですね……」

「龍お兄ちゃん大変そうだね……」

「ふふっ、早く合流したいわね!」


 とびっきりの笑顔を浮かべて歩き出す。きっと大丈夫だ、あの兄弟達ならまた笑って再会出来るに違いないのだから……



 風が通り過ぎる。枯れ草が覆い繁る広大な野原に倒れていた紗枝は、心地よい体温に包まれて目を覚ました。


「……啓吾?」

「よう、目ぇ覚めたか」

「うん……」

「まっ、お互い生きてて良かった」

「ええ……」


 啓吾が生きていることが嬉しいと思う。きっと二百代前の自分の影響もあるのだろうが、この腕の中にいられることを幸せだと感じ……


「って!!」

「おっと」


 起き上がろうとした紗枝を楽しそうな顔をして啓吾は覆いかぶさる。


 覚醒後に忘れてはならないことがある。今の二人の状態はまさに裸だということ。どこかに服がないかと思うが、見るからに民家一つない場所でそれを入手することは不可能である。


 だが、紗枝にとってはそれどころじゃない! 顔を真っ赤にして啓吾に抗議した!


「ちょっと!! どきなさいよ啓吾!」

「何で?」

「なんでって……!! 当たり前でしょ!?」

「俺はこっちが当たり前」

「ひゃっ!!」


 全く遠慮せず啓吾は紗枝の頬に口づける。確かに思いは通じた、通じはしたのだが……!!


「っていうか、惚れてる女がこの状態で欲情すんなって方が無理。諦めて大人しく抱かれてろ」

「ふざけるな!! 節操無しになんか」

「ああ、その心配はするな。他の女に手を出すのやめるし、何よりお前に対して避妊するつもりないから」

「なっ……!!」


 とんでもない爆弾発言に紗枝は真っ赤になるより真っ青になった。こいつは恋愛ごとに関しては、秀以上に性質が悪いのではないかと思い知らされる。


 そして、啓吾は紗枝の頬に触れて悪戯な笑顔を向けてきた。ただ、纏う空気は喜びに満ち溢れているけど。


「まっ、そんだけ惚れてるって死にかけてようやく気付いたんだ。それに言っただろ? また生き返ったら遠慮なく抱くって」

「知らないわよっ!! 嫌いよ嫌い! あんたなんか大嫌いよ! この変態重力節操無し!!」

「テメェ……! 人の腹刺した上にそこまで罵倒するとはいい度胸してるよな……!」

「そんな痕なんて全くないじゃない! それにあんたがやろうとしてることの方がよっぽど犯罪よ!」

「うるせぇ! 俺が好きだって言ったんだからガタガタ抜かすな!」

「ふざけんじゃないわよって! どこ触ってんのよ! このドスケベ!!」


 そんな二人の応酬に、傍に倒れていた龍は起こされる。何となく体は妙な感じがするが目覚めはけっして悪い気がしない。

 むしろいつも以上に空が優しい感じがしていたのだが……


「龍ちゃん! こいつなんとかしてよ!」

「てか、龍! ちょっと聞け!」


 目覚めは確かに良かった。だが、目覚めて目にした光景に二十三歳の恋愛初心者は見る見るうちに真っ赤になっていく。それはもう可哀相としか言いようがないくらいに……


「……龍?」

「すまなかったから……、もう俺が全部悪くていいから……頼むからこれ以上苦労の種を増やさないでくれ……」


 その時、ふわりと花びらが舞い散ったかと思うと桜姫が柔らかい笑みを浮かべて姿を現わす。そして、秀達が近くを通り掛かったアメリカ兵を叩きのめして入手した服を差し出した。


 秀達はといえば、さすがに紗枝が倒れているので行くわけにはいかず、桜姫に託したとのこと。


 因みに彼女だけは何故か服が弾け飛んでおらず、青い装束のままだ。


「天空王様、紗枝様、啓星様、どうぞこちらを」

「……ありがとう、桜姫。お前がいてくれて良かった」

「はぁ……、どうかなさったのですか?」


 龍があまりにも疲れた顔をしているのに桜姫は首を傾げる。そして、三人はすばやく服を身につけた。


 しかし、服を着た紗枝に舌打ちする啓吾を紗枝が本気でど突く場面にまた龍は深い溜息を吐くが……



 それから数分後、彼等は弟達がアメリカ兵から奪ったジープに乗り込んで再会の挨拶をかわし、とりあえず車を走らせる。


「啓吾さん、ここはどこなんだ?」

「さぁな? どっかのド田舎には違いないが」


 翔の問いにあっけらかんとして啓吾は答える。それに運転していた秀がつっこんだ。


「啓吾さん、アメリカ長いんでしょう? 東西南北中央のどの辺かぐらい予測が立たないんですか?」

「無茶言うな。自由の女神どころか川や湖の一つ見えやしないんだ。検討がつかん」


 それにアメリカにいるかどうかすら危ういところである。


 自分達が目を覚ました場所は元いた場所とはまったく違っていた。龍の力に飲み込まれてどこかに飛ばされたのは確かなのだが……


「それに神もどうなったのか……」


 空の中で一度捕らえた感覚はあった。しかし、完全に倒せたという確信が持てない。それに例え神を倒したとしてもGODの存在そのものは消えてはいないのだ。


「でも兄さん、まずは離れている沙南ちゃん達と一刻も早く合流しましょう。敵が滅びたわけではないですし」

「そうだな、それに柳ちゃん達や先輩達にもかなり迷惑をかけてるみたいだし」

「迷惑……ですかねぇ?」


 龍以外の全員が苦笑した。後から報告するつもりではあるが、秀達が日本でやった数々の所業に龍はどんな反応を見せるのだろう。


 そして、助手席に座っていた龍は自分の後ろの席に座っている桜姫に視線を向けて問う。


「桜姫」

「はい」

「君が持ってる情報を全て俺達に教えてくれ。もちろん話せるだけで構わない」


 そんな兄の言葉に秀は甘いと思う。純がすぐに桜姫を信用したことと、天空王の従者だと彼女が自分達に膝を折ったからこそ言わないが、今まで敵だったものをそう簡単に秀は信用できなかった。


 一方、桜姫も秀の警戒心に気付いていた。いくら二百代前の自分が、天空族に与えた苦しみの記憶を封じて欲しいと天空王に願ったにせよ、今まで敵として動いて来た自分をたやすく信じてもらえるはずがないのだから。


 しかし、龍はそれすら全て受け入れようとしている。その大きさは本当に変わってなくて……


「我が主、全てお話致します。二百代前から現代にかけて続く因縁とGODの狙いを……」


 まるでお伽話の語り手のように、ゆっくり桜姫は切り出す。


 全ては天空記最終章へと繋がる……




はい、これにて第四章は完結!

第五章、おそらく最終章へと繋がっていきます。


まあ、第五章はまず沙南ちゃんが覚醒してくれることだけしか決めてない(笑)

本当にノープランです(オイっ!)

でも、今までの中で一番長い章にはなりそうです。


そしていろんなツッコミどころが……


まず啓吾兄さん、紗枝さんと思いが通じた途端どれだけ爆弾発言してるんだ!

まあ、啓吾兄さんだからある意味秀より性質悪い暴走するとは思っていたけど……

でもそこで可哀相になってくるのが龍という……妙な話です(笑)


そして気になってるでしょう、桜姫の服が弾けなかった理由。

それは彼女が花びらになれるからです。

服もそれと同じような原理と考えて下さい。

とりあえず天空記でもっとも覚醒後に困らない女性です(笑)


では第四章の意見・感想、そしてキャラクター達の恋愛についてどこまで書いても大丈夫なのかコメントいただけると幸いです(今回の啓吾兄さんの発言はまずいかもしれないですし……)


以上、緒俐でした☆




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