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天空記  作者: 緒俐
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第十八話:心待ちにする出会い

 篠塚姉妹が天宮家で課題を終わらせて家に戻ったのは六時半。家には柳が先に帰って来ていて家事を全てやり終えていた。


 それに紫月は礼を述べ、ここのところ多忙な癖して読みたい本があるからと睡眠より読書を優先している啓吾の向かい側に座れば、本には目を離さず彼は尋ねる。


「どうした、紫月」

「いえ、珍しく良いタイミングでうちにいてくれたものだと思いまして」

「文句は医院長に言ってくれ。で、何かあったのか?」

「はい、ちょっと気になることが」


 それも珍しい、と啓吾は思う。普段、間違いなく自分より柳に相談する紫月が直接自分に相談を持ち掛けて来たのだから。

 しかし、紫月が今日起こったことを報告すれば、確かに自分に言いたくなる内容だと啓吾は本を読むのも止め、最後には神妙な顔付きになった。


「で、三男坊のファンクラブが雇った不良どもに囲まれたところを末っ子が半分叩きのめしたと……」

「純君、すっごくかっこよかったんだよ! 夢華、純君大好き!」


 それを聞いたシスコンは面白くなさそうに眉間にシワを寄せた。そんな啓吾に苦笑しながら紫月は続ける。


「でも、全て空手でやっつけましたから安心してください」

「ああ、お前だから信用してるよ。にしても、天宮家は本当にトラブルの目だな」

「そうですね。医者の家系といっても警察官まで出て来るなんていい迷惑ですし、ファンクラブの性質の悪さも翔君の性格以上でした」


 そりゃひどい言われようだな、と啓吾は笑った。確かに翔は高一にしては腕白小僧だと篠塚家は認識している。というより、紫月がかなり大人びているため、比べてしまうとやけに精神年齢が低いような気もするが……


「ですが、翔君と純君の暴れっぷりを見て思ったんですけど、その……、私達と近いところがある気がするんです。

 普通の小学生が不良を一撃で気絶させるなんて、よっぽど相手の急所に入らない限り不可能だと思いますし」

「一撃だと?」

「はい。それに二人とも本気を出さずに喧嘩していたようにしか思えなくって……」

「まぁ、あの末っ子は見るからに力がありそうって訳じゃないもんな」


 ふわふわした純を思い出し、とても紫月より喧嘩上手とは言えないなぁ、と啓吾は視線を宙にさ迷わせた。


 ただ、夢華はそんなことなど気にせず、純粋に彼女の思いを可愛らしい笑顔で述べる。


「だけど、私達と一緒だったら嬉しいよね!」

「それはそれで俺は面倒に巻き込まれるからゴメンなんだけどなぁ」


 啓吾は苦笑しながら隣に座る夢華の頭を撫でてやり立ち上がった。そろそろ時間だったからだ。


「それじゃ、俺はまた病院に戻るよ」

「お兄ちゃん、最近働き詰めじゃない?」

「龍ほどじゃないさ。あいつ三日は家に帰ってない上に徹夜してるぞ?」

「沙南ちゃんが心配してたわ。自分の父の性で二人がハードにされてるんじゃないかって」


 沙南お嬢さんらしい心配だな、と啓吾は穏やかな表情を浮かべた。


 確かに医院長の陰謀がシフトに出ていることは明白だが、それに付き合ってやってもいい同僚がいることも確かだ。


「沙南お嬢さんに大丈夫だって言っといてくれ。それに早く龍の嫁さんになってやった方が世間体はこっちの味方になるだろうってな」

「分かったわ」


 まぁ、すぐにくっついてもらったらあのからかいがいのある堅物の朱くなる顔を見られなくなるので、それも惜しいのかもしれないが。


「あっ、だけどお前ら全員天宮家に嫁ぐとかやめてくれよ!?」


 シスコンにとってそこだけははっきりさせておかなければならない。だが、妹達の反応は啓吾を煤けさせる……


「え〜! 夢華は純君のお嫁さんになるよ?」

「手のかかる子供ですよ、翔君は」

「秀さんとはそんな仲じゃ……」


 実に誰が誰とくっつきそうなのかが恐ろしいまでに伝わってくる。龍や紗枝がいたら「諦めろ」の一言で片付けられることだろう。


「はぁ〜、本当やめてくれよな……」


 そうぼやきながらも、啓吾は病院へ戻るのだった……



 同時刻、郷田は再度大君の屋敷に訪れていた。命の危険性はもちろんあったが、それ以上に大君の機嫌は頗るよろしいらしい。


「郷田よ、まだ少し時間がかかるようじゃの」

「はっ、大君のおっしゃるとおりなかなか手強く……」

「よい、御主はゆっくり駒を進めよ。それに天宮家以外にも面白い者達が出て来た。けっして天宮家の変わりにはならぬが興味深い」


 和装美女は優雅な手付きで大君の猪口に酒を注ぐ。妖艶な笑みは大君が興味を持った対象に彼女自身も関心を寄せて作られたもの。


「ところで郷田よ、御主はお伽話は好きかの?」

「お伽話、でございますか?」


 突拍子もない質問に郷田は言われた内容を復唱した。


「そうじゃ、なに、素直に答えればよい」

「はぁ…、恐れ多きながらも申し上げますが、私はあまり好みません。どうも子供地味た気がして……」


 郷田は素直にそう答えた。それを大君は微笑を浮かべて返答する。和装美女もクスリと口元を隠して笑みを浮かべた。


「そうか、確かに御主の意見は素直じゃが学のなさも露呈しておる。

 天宮家の長男ならたとえ御主と同じ意見だとしても、もう少し違った答え方をするかもしれんの」


 そう告げて大君は酒に口を付ける。彼は龍と出会えることを心待ちにしていた……




龍も啓吾兄さんも相変わらずお忙しいみたいです。

そして啓吾兄さんがいない間に妹達はどんどん天宮家と仲良くなっていってる模様。


シスコンとしては妹達が楽しく天宮家と付き合ってくれることは嬉しいみたいですが、恋愛となると勘弁してくれと言いたいようです。



そして、ちょくちょく出て来る郷田と大君。

何やら大君は天宮家の周囲にも興味を持ち始めた御様子。

彼の狙いは何なのでしょうか……




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