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天空記  作者: 緒俐
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第百七十三話:真相と怒れるテロリスト

 足場の悪い階段を下りた後、薄暗い一本の長い廊下を歩けば何とも重たく分厚い扉が目の前に現れる。その扉には神の絵が書かれており、美術的価値は非常に高いものだろうなと思う。


 だが、押しても引いても動いてくれそうになく翔と純がおもいっきり蹴ってもただ大きく揺れるだけだった。


「ダメだ、やっぱりそう簡単に開いてくれそうにないね」

「だったらこいつでも撃ち込むか」


 森は持ってきた大砲の中で一番破壊力がありそうなものを取り出す。その傍らで秀は沙南に尋ねた。


「沙南ちゃん、もう立てますか?」

「うん、大丈夫よ。ありがとう、秀さん」


 そして背から沙南を下ろすと、大砲を撃とうとしていた森を止めた。


「森さん、弾が勿体ないですから下がってて下さい」

「おい、だがこれくらいやらねぇと……」


 誰もが息をのんだ。秀はすっと片腕をあげると、一気に破壊力満点であろう巨大な火球を作り上げた。


「いや、兄貴、それは……!」

「おい、秀君!」


 しかし、秀は遠慮せず火球を扉に投げ付けるとそれはあっさり崩壊した。


「脆いものですね、この程度でかくれんぼが出来ると思ってるのですか、楢原首相」


 崩壊した扉の残骸の上に立ち、秀は王座に座っている楢原を見つけた。しかし、彼はうろたえる事なく秀を見据える。


「おや、残念だ。もう私の手駒を全て突破して来たのか」


 そう言ってククッと笑う楢原に秀は眉を顰る。人としての違和感を感じてならない。


「……肉体改造か精神操作でも受けたのですか?」

「違うさ。意志は私そのものだよ。ただ、神様から力を授かっただけのこと」

「なるほど、ならば納得できますね。あなたにしては小物臭が漂ってないと思いましたよ」


 秀は皮肉に満ちたことを言うが、どうやら息子と違ってそう簡単に挑発に乗ってはくれないようだ。


「さて、とりあえずあなたを締め上げる前にこちらの質問に答えていただきましょうか」

「ああ、好きなだけ答えてやろう。十年前お前の父親が死んだ理由か? 菅原紗枝が何故狙われているかか? それとGODの事か?」

「……ノヤロ!!」

「森!」


 殴り掛かろうとした森を土屋が止める。今は情報を聞き出すことが先決だ。


「そうですね、十年前の事件から話してもらいましょうか」


 あくまでも秀は冷静でいようと努めた。目の前の男を片付けるのは後で良いのだから……


「お前の父親は本当に運がなかったなぁ。こちらの狙いは菅原耕一だけだった。あの当時菅原財閥の権力を手にしたいと私を始め黒澤や所木、そして檜山はそれぞれ思惑を張り巡らしていてね、菅原耕一を狙撃するとこまでは成功したが息の根まで止められなくてね」

「だからトラックを突っ込ませたんですか」

「その通り。しかし、運ばれたのが聖蘭病院だったのは失敗だったな。トラックが突っ込む直前にお前の父親が菅原耕一のストレッチャーを突き飛ばした事で奴は命を取り留めた。しかも奴の執刀をお前の祖父がしたのだからな」


 耕一が葬儀の日、ひどく頭を下げていた理由が痛いほどよく分かった。そして最期まで自分の父は医者だったということも……


「しかし、まさか受け入れをしていたのが菅原森、お前の母親だったのは私の誤算だった」

「んだと……!!」

「あの美貌と知性は菅原耕一亡き後に私が手に入れようと思っていたからな。それとGODに三國という男がいるんだが、奴も非常に残念そうだったよ」

「三國……おい、それは三國弘世のことか!?」


 宮岡は尋ねる。啓吾に調べてもらいたいと頼まれていた男の名がここで出て来るとは思わなかったから。


「そうだ。奴は菅原咲からオペを受けて命を取り留めているからな、死んだと聞いたとき、三國が立てていた計画が多少ズレたらしくてな」

「計画?」


 一体なんのだという視線に楢原は気味悪く笑った。


「篠塚啓吾、いや、啓星に対する復讐の材料の使い道を修正しなくてはならなかったらしい」

「どういうことなんです」


 すると楢原の視線は柳に向けられた。


「十年前と聞いてそこにいる篠塚柳といったか、何か思い出さないか?」

「えっ……!」


 トクンと鼓動が鳴る。それは紫月も感じたこと。


「篠塚啓吾がアメリカの医学研究所を爆破したすぐ後にお前達の親が殺されているのだよ」

「おい、それが一体なんの関係があるんだよ!!」


 まさかと柳は思う。全て自分達が捕らえられた後に起こったことは必ず啓吾を苦しめるためにGODが仕組んでくること。


「自分が惚れた女の母親の死は、自分がやった罪の代償だと知れば奴はどう思うか」

「そんな訳の分からない理屈があってたまるか! 何でもかんでも啓吾さんに結び付けんな!」


 翔はもっともなことを叫ぶが、紫月がぐっと翔の腕を握ってきたことにそれは繋がっていく理屈になると物語っていた。


「訳が分からないことでもないのだよ、天宮翔。篠塚啓吾にとって菅原紗枝の存在は二百代前と同じになることなど分かっていたからな。君達の繋がりがいい例だろう?」


 否定できないのはまさにそうだからで……自分達が出会えたことは、二百代前からの絆を切り離せなくなっているのも確かだ。


「だからこそ菅原咲は殺されたのだよ。篠塚啓吾の罪は、これから関わっていくであろう親しき者達の大切なものを消していくことによって精算されて来た。

 だが、天宮聖だけは運がよかったな。少なくとも高原がいたせいかGODも傍観していたよ」


 たしかに祖父だけは寿命で亡くなったので楢原の話は説得力があった。


「しかし、篠塚啓吾が日本行きを決めて天宮家と関わり始めてから思ってた以上に苦しまなくてね。いくら天宮龍が天空王だったとしても、覚醒もしてない状態であれほど楽しんでもらっては困ると三國は動き始めたんだよ」

「まさか、紗枝さんを狙ったのも……!」

「そうだ。全ては篠塚啓吾、GODが奴に天罰を下すためだ。だがGODの力は素晴らしいものだよ。利害の一致さえすれば私達にも多くの力を貸してくれるのだからな」


 怒りが沸々と沸き上がってくるのを感じる。そんな勝手な理由で父達を殺されたのかと思うとすぐに目の前の相手を消したくなる。


「さて、次に」

「もう結構ですよ。あなたとGODの関係なんて知っても仕方がない。どのみち潰す組織には違いありませんからね!」


 秀は楢原の壁の後ろに火球をはなつと、そこには化け物の群れが潜んでいた!


「ほう、見破っていたのか」

「うるさいですよ」


 秀が指を鳴らすと瞬時に王座は爆発して崩壊するが、楢原はそれに対して怪我の一つもしていなかった。


「兄貴、俺達に害をなしたものに遠慮したら龍兄貴から説教受けるだけじゃすまないよな」

「当然です。それに僕だって翔君をこんな時に遠慮するような慎み深い子に育てた記憶のかけらすらありませんよ」

「じゃあ翔兄さんに育てられた僕も遠慮できないよね」

「ええ、思う存分やってしまいなさい!」


 怒れるテロリスト達を止める手段など誰も持ち合わせてはいなかった。




はい、ついに明かされた十年前の真相。


簡単に説明すると、楢原達日本の極悪人達は紗枝さんのお父さんの命を狙っていた模様。

しかし、救急車で運ばれた後、息の根を止めるために突っ込んで来たトラックから龍達のお父さんがかばって助けたようです。


紗枝さんのお母さんもちょうど受け入れだったらしく巻き込まれたのかと思いきや、実はGODの思惑が働いていた模様。


どうやら啓吾兄さんがアメリカで医学研究所を爆発させた報いとして、紗枝さんのお母さんがその代償を受けたとのことですが……

さらに詳しくはすぐに啓吾兄さんから語られることになるでしょう。


だけどこれを聞いて天宮兄弟はかつてなくキレた模様。

さあ、日本でのテロ行為もクライマックスか(笑)




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