表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天空記  作者: 緒俐
168/301

第百六十八話:騙し討ち

 食事も終わり、秀から闇の闇で遂行すべき作戦内容の説明を受けた一行はついに動き出す。人間オークション会場、そこで全てを片付けようという秀らしいあくどい作戦なのは言うまでもないが……


「夢華、純、何もお前達まで闇の闇に行かなくとも……」


 秀の作戦内容は末っ子組も多少危険な目に遭う可能性があったので女帝は心配で堪らないらしいが、しかし、兄達がいない分まで末っ子組は頑張る気らしい。


「うん、でも行かなくちゃ」

「また遊びに来るよ」


 そういって微笑む末っ子組の決意は固い。闇の女帝はそれを悟ったのか、ならば快く送り出そうとその目は二人の無事を信じていた。


「そうか、ならば必ずまた妾の元に来るのだぞ? いつでも歓迎するからな」

「うん! ありがとう!!」


 嬉しそうに末っ子組は笑って兄達の元へ駆けていった。


「さて、それでは僕は先に行きますから、皆さんは各自上手く動いてください」

「うん! 秀さんもやりすぎちゃダメよ?」

「沙南ちゃんもおしとやかにしてくださいね? それこそもう、大和撫子のように」

「あっ、それは聞き捨てならないな。私がすごくじゃじゃ馬みたいじゃない」

「いえいえ、とんでもない。沙南姫様の姿を見たら兄さんはいつも以上に見惚れてくれますよ」

「あっ、ごまかそうとしてるな?」

「おや、バレましたか?」


 いかにも危険な事を沙南にやらせようとしているのに、やけに緊張感のない会話が繰り広げられる。


 しかし、秀が翔を見れば一気に空気は殺気を含んだものに変わった。


「翔君、もしも女性陣や末っ子組に怪我の一つでもさせてみなさい、君の明日はないですから」

「……冗談だよな?」

「本気ですよ」


 どうやら翔にとっては別の意味で命懸けになりそうだ。だが、沙南達に何かあれば間違いなく悪の総大将とシスコンが暴れるに違いないが……


「それと先輩方も絶対沙南姫様から離れないで下さいね」

「ああ、何かあったら龍が恐いからな、任せといてくれ」

「まっ、よっぽどの事がない限り無理だろうがな」


 その点は全く問題ないだろうとのこと。そして……


「柳さん、すみません。出来れば力を使わせたくはないのですけど……」


 少し秀は心配そうに柳を見る。彼女は自分の力を人を守ることには使うが、秀のような所業をやるのは少し抵抗があるようで……


「いいえ、気にしないで下さい。沙南ちゃんが囮役をやってくれるのに私だけが戦わないわけにはいきません。

 それに兄さんがいないなら私も皆を守る役目がありますから」


 そう告げてくれる柳にそれでも心配そうな表情を秀は浮かべていると、末っ子組が秀の腕を掴んだ。


「大丈夫だよ! 僕達も頑張るもの!」

「夢華も頑張って敵をやっつけるもん!」


 自分を見上げてくる強い眼差しに秀は感謝した。これは何がなんでも相手に大打撃を与えてやらなければならないなと思う。


「はい、皆を信じています。そして、もしも兄さんがいたら間違いなく言ってる言葉を代弁しておきます」

「言うまでもねぇよ! どうせやりすぎるなって言うんだからよ」

「ええ、その通りですね」


 全員がいい顔で笑った。まさにそういうに違いないから……


「では、楢原とGODを片付けてアメリカへ行きましょうか」


 ニコッと笑って秀は一足先に闇の闇へと入り込んだ。そして翔と紫月もふわりと風を纏い浮かび上がると、


「んじゃ、俺達も行くよ」

「では、またあとで」


 空を飛んで二人も闇の闇へ入り込んだ。


「純君、夢華、私達も行きましょうか」

「うん!」


 二人がいい返事をしたその時だ、彼等の周りに闇の闇から出で来たのだろう、彼等を捕らえようと売人やマフィアが取り囲む。


「うわあ〜変なのが出て来たよ」

「おいおい、秀と腕白小僧がいなかったらあとは楽チンだってか?」

「そりゃ舐められてるな」


 森達は手榴弾やらショットガン、おまけに小型の大砲までを相手に向ける。


「お前達には用はない。沙南姫をよこせ」


 売人の一人がそう告げると、沙南は高らかに声を上げた。


「姫に向かって無礼な発言は控えてもらいたいわね、私を奪っていいのは天空王だけなんだから!」

「おっ! そりゃ龍が聞いたら喜ぶな」

「いや、真っ赤になって倒れるんじゃないか?」

「ああ、そういうところはヘタレだもんな」


 森達は好き放題に感想を述べるが、売人が彼等の足元に一発銃を撃った。


「寄越すのか? 寄越さないのか?」


 やはり闇の闇で生き抜く売人だ、殺気が違う。しかし、それでも彼等は全く動じていなかった。


「危ねぇなぁ。だが答えは決まってる、渡さねぇだ」

「……そうか、ならば死ぬがいい」

「させるかよ!」


 三人の大人達と純は四方に散り売人やマフィア達に攻撃を仕掛け、柳と夢華が沙南を守るために彼女の前後に立つ。


「オラオラ! 吹き飛びやがれ!」

「うわあああ!!」


 大砲や手榴弾を使い、次々と取り囲んでいた者達は吹き飛んでいくが、数が半端じゃなかったためにすぐ沙南のもとに近づかれてしまう!


「お前達は売り飛ばしてやる! 大人しくしてろ!」

「嫌だ! 離してェ!!」

「夢華!」

「夢華ちゃん!」


 女子大生達は叫ぶが、すぐに彼女達もマフィアに腕を捻られて拘束される!


「オラ、大人しくしてろ!」

「くっ……! 離しなさいよ!」

「沙南ちゃん!」


 何とか沙南を助けようと柳は必死にもがくが、容赦なく頬を殴られた!


「へへっ、お前も沙南姫と同等の美貌だからな、オークションで売り飛ばす前に俺達が買ってやるよ」

「誰……が……!」

「おお、逆らう気があるのか、だがすぐに薬漬けにしていい雌豚にしてやるからな」

「そうですか、だったらあなた達は豚の丸焼きにしてあげましょう」

「なっ!」


 柳の頬を殴った男は顔の原型を留めないほど殴り飛ばされる! そしてそのあまりに無残な姿をさせた人物に全員の視線が集まった。


「お前は……!」

「悪の総大将を支える冷徹非道の参謀ですよ。まあ、二百代前は南天空太子と言いますが」


 秀はそう告げて穏やかな笑みを浮かべるとリモコンのボタンを押す。


「なっ!!」

「何だと!?」


 さっきまで人の形をしていた者達が一気に銀色の人形へと姿を変えた。


「おや、闇の闇に関わってる割には情報不足のようですね。それはハワード財団が開発した人の形を真似する人形でして、容姿も声もそっくりになるんですよ。

 ですが、人形といえども僕が守りたいものに手を出されるのは不快なので少し作戦を変更することにしました」


 さらに秀はニッコリと微笑む。見るものから見ればもうこの場所から逃げなくては危険だという合図だが、ここにはそれに気付くものはいない。


「さて、僕は二百代前は南天空太子なので火や熱を操ることなんて余裕ですが、そうじゃないあなたたちがこれほど爆発物の多いところにいたらどうなるのでしょうね」

「えっ……?」


 それが最後だった。秀はパチンと指を鳴らすと銀色の人形が爆発し、さらに近くに落ちていた大砲や手榴弾も爆発してその場は大惨事となった!


 そしてそれを闇の闇にいた秀以外の一行は口々に感想を述べる。


「おいおい……秀の奴やりすぎじゃないか……」

「ああ、少しでも邪魔なのを消すためとは言ってもな……」



 それは作戦会議の時、秀が立てたあくどいものの一つだ。


「まずは騙し討ちします」

「騙し討ち?」

「ええ、僕と翔君と紫月ちゃん以外、皆の人形を囮にしてそれに爆弾を仕込み、僕達三人が離れた後なら必ず敵は寄ってきますからね、そこで爆発させるって魂胆ですよ」

「うわっ! やっぱり兄貴らしくてあくど……」


 秀がニッコリ笑うので翔はそれ以上何も言えなくなった。


「まあ、それで少しは大騒ぎになると思いますから、各々さらに作戦を遂行してくださいね」


 闇の中のさらに闇、まだ秀の作戦は始まったばかりである。




さあ、闇の闇へ。

テロリスト一行のとんでもない騒動が始まります。


まずは先陣をきって秀がやってくれました、彼らしい騙し討ちです(笑)

秀と高校生組以外、ハワード財団が開発していた姿形を似せる人形に爆弾を仕込んでおいて、

三人が離れた後に近づいてくる敵を人形を爆発させて一気に片付けてしまおうと……


なんせ敵の数は万台ですからね、減らしておくに越したことはなかったのでしょう。

にしても爆発に巻き込まれた皆さん、本当に気の毒……


そんな参謀の策はまだまだ序の口。

龍が責任から逃れたくなる騒動を期待してるぞ(笑)




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ