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天空記  作者: 緒俐
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第十四話:酒宴

 天宮家の酒宴が盛り上がるまで時間はかからなかった。酒の肴になる話題さえあれば、女性はいくらでも騒げるものだ。


「ええ〜っ! 沙南ちゃん婚約させられるの!?」

「紗枝さあ〜ん!」

「よしよし、お姉さんが全部聞いたげるからね。全く、龍ちゃんがさっさと婚姻届けなり既成事実なり作らないからいけないのよ!」

「紗枝ちゃん……飲み過ぎだよ……」

「いいえ、紗枝さんの言うとおりだと」

「さっすが秀ちゃん! どんどん言ってやれぇ!」


 大人達の酒宴は見事に盛り上がっていた。紗枝は明日が休みといいことにビール、焼酎、ワインと次々に空けていき、当然龍もそれに付き合わされている。

 大学生達は未成年ということもあって今のところ多少手加減されているが、間違いなく潰されるのも時間の問題だろう。


「すげぇな、大人達」

「そうだね」

「まぁ、紗枝もこの数日オペ続きだったから飲まなきゃやってられねぇんだろ。それにストレスを溜めるのが患者じゃなくて実力無しの医者達だからな」


 高校生以下の四人は大人達の酒宴を尻目に、沙南が翔達用に作ってくれていたカレーを食べながら会話を楽しんでいた。


「お兄ちゃんも向こうで混ざればいいのに」

「俺は逃亡して来たの。みろ、矛先が柳にまで向いて来てるぞ?」


 そんな面倒は御免だと啓吾はビールを飲む。そして、啓吾の言うとおり柳は紗枝の餌食となった。


「柳ちゃんは彼氏はいるの?」

「いえ、いないです……」

「勿体なあい! こんなに可愛いのに」

「だよねぇ〜紗枝さん! 柳ちゃん、秀さんはどう? すっごくリードしてくれると思うよ?」

「ええっ!! そんな……!!」

「きゃあ〜! 柳ちゃんって純情〜!」


 真っ赤になった柳は沙南と紗枝からギュウッと抱き着かれた。それを楽しそうに秀は見ていたが機嫌が悪くなっていくものを紫月は指摘する。


「兄さん、眉間にシワ寄ってません?」

「なんかこう思い出した気がしてな……」

「妹離れしてくださいね」


 酒宴の席でもシスコンを発揮する兄は本当にこれから先大丈夫なのかと心配してしまう。夢華が嫁に行くまでは結婚する気はないらしいが、それ以前の問題の方が厄介なのではと紫月は思うのだった。


 そして啓吾が難を逃れて持ってきたビールがちょうどなくなったと同時に、タイミングよく龍が一缶啓吾に差し出した。


「ほら」

「サンキュー」


 啓吾はそれを受け取り龍は縁側を親指で指し示す。長男組で静かに盛り上がろうということらしく啓吾は席を立つ。


「後の事は秀に任せて俺達はゆっくり飲もう」

「ああ、だがちょっと気になることがあってな」

「ん?」


 縁側に腰掛け啓吾は缶を開ける。


「お前がさっき燃やした写真に写ってた郷田ってやつ、もしかしたらあの郷田の馬鹿息子かと思ってな」

「ああ、そうだと思うよ。こうも早く相手が暴走してくるとは思わなかったが」

「沙南お嬢さんは美人だからな、お前がいなけりゃ俺が口説くね」

「おいおい……」


 啓吾は苦笑する。傍から見れば充分新婚みたいな関係なのだが、龍が真面目なのか本気で手を出していないのは一目瞭然。確かに紗枝が早くくっつけと言いたくなる気持ちが分からなくもない。


「まっ、冗談はさておき、息子が直接でしゃばってくるとやっぱり面倒だろ? お前の行動次第でまたあの医院長はいちゃもん付けてくるんじゃねぇの?」

「ああ。まあ、沙南ちゃんがあそこまで嫌がってるなら医院長も相手も考え直してもらいたいところだけどね。でもそれ以前に病院が政治と金に埋もれていくのは堪え難いな」


 やっぱり龍は医者なんだと啓吾は改めて思った。ここまで清々しく言ってのける医者はそういるものではない。


 基本、医者という職業で特に学会やら政治家やらと関わって来る病院で本来の医者として有り続けるということは至難であり、大抵はそれに飲み込まれてうまく立ち回ることが多い。


 しかし、龍は毎回医院長に食ってかかる。若さ故の無謀ではなく、それだけの実力と威厳が伴っているからこそ出来ることだとは思うが。


「だけど、俺は医院長に何と言われようが医者としての信念は曲げる気はない。くだらな過ぎる」

「確かにな」


 それは啓吾も同意見だった。どれだけ病院が腐敗していっても医者としての在り方まで誰かに決められることはしたくはない。


「それにしても、そんなに郷田がいいのかねぇ……」

「医者にとって権力と金は宝船だからな。その両方が娘一人の犠牲で手に入れられるなら悪くないんだろ。目先の利益しか医院長には見えてないし」


 龍はグッとビールを喉に流し込んだ。そんな姿を見て、自分と同じ歳とはとても思えないこの家長から一遍に余計な重荷を下ろしてやりたくなった。


 裏技、卑怯技が得意、ついでに根っからの黒さを持ち、さらに要領が良過ぎる啓吾は龍に提案する。


「……龍、やっぱりさっさとお嬢さんを自分のものにしたらどうだ? 医院長の企みも消える上に郷田家も手出し出来なくなって一石二鳥……」

「沙南ちゃんは未成年! 手を出したら沙南ちゃんのお母さんに顔向け出来ん……」


 本気でそう言ってのける龍に、しばらく啓吾は腹を抱えて苦しそうに笑い転げていた。




龍が沙南ちゃんに手を出さない理由が未成年で沙南ちゃんのお母さんに悪いからって……(笑)


天宮家はいつも紗枝がストレス発散したいといえば酒宴なり焼肉パーティーなり開いてしまいます。

理由は楽しいから(笑)


それと啓吾兄さんのシスコンぶり、この先期待してて下さいね!




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