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天空記  作者: 緒俐
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第百十一話:対話

 龍が一行と合流する前、自分達が悶絶させた犯罪者達が次々とSATに確保されていき、上空はヘリが飛び交う。

 おそらく、そろそろ中に入らないように命じられていた自衛隊や警察も介入してくることだろう。


「ご協力ありがとうございます!」

「いえ」


 菅原会長のおかげか土屋の口添えがある性かは分からないが、とりあえず自分の身はここにあって突っ込まれない状況下にいるらしい。


 龍は廃人になった黒澤をSATに渡し、テロリスト御一行様と合流しようと元いた倉庫に歩みを進めようとしたところ、いきなりヘリ内と隊員達の通信機が全て鳴り響いた。


「何だ」


 ヘリの中にいた隊員の一人が応えると、いかにも楽しそうな声が耳に当たる。


『すまないけど、近くにいる謎の青年に変わってくれないか?』

「何なんだお前は!」

『急いだ方がいい。じゃないとその辺り一帯が吹き飛ぶかもしれないからね』


 嫌な予感が隊員に走り、彼は龍を呼び止めて通信機を渡す。一体何だという表情を浮かべて龍は尋ねた。


「誰なんだ、それに何の用だ」

『ハハハ、相変わらずの活躍みたいだな、天宮龍。いや、天空王というべきか』


 龍は眉間にシワを寄せる。また二百代前の因縁かと心の中で舌打ちして。


「お前は……」

『初めてだね、君と話すのは。私はダニエル・フラン。現代ではしがない科学者だが、二百代前は夜天族の王子だったんだよ』

「……それで何の用だ」

『おっと、そうだったな。何、たいしたことではない。西天空太子と従者を拉致させてもらった。どこにいるかは君達ならすぐに分かるだろう?』


 挑戦的な声が気に食わず通信機を持つ手が震え始めるが、その反面声は冷静に紡いでいた。


「……あいつを捕まえてどうするつもりだ?」

『そうだな、解剖学と科学の発展のために尽力して貰いたいが大人してくれるといいね』

「そちらに大きな損害を出したくなければ早く解放することだな。それに二人にもしものことがあれば、ハワードの存在そのものを消してやる」


 天空王からの宣戦布告にダニエルはニヤリと微笑を浮かべた。そして話は切り替わる。


『……天空王、君は二百代前の記憶が全くないのかい?』

「ああ、だからお前達の都合など知ったことじゃない」

『ハハハ、さすがだ。君は科学者の性質にも近いところがありそうだ。

 だが天空王、君が二百代前にやった所業はとても許されることではないよ? それに沙南姫様なんだけどね、二百代前に君の所為で死んだって早く思い出しなよ?』


 それだけ言い残してダニエルは通信を切った。



 そのいきさつを、沙南が自分の二百代前に命を落としたということだけ伏せて話すと、一行からは何も返答がなかった。


「……どうしたんだ?」


 翔と紫月が拉致されたというのに全員の反応がこれでもかというほど薄い。一応秀が携帯を取り出して発信機の反応を辿ってはいるが。


「いや、一体どうやったら三男坊が捕まるのかとな……」

「どうせ油断したに決まってますよ」

「でも奇跡に近いわよね、翔ちゃんを捕まえるなんて」

「だよなあ、あの腕白小僧がなあ」


 なぜか翔の心配をする言葉が一言も出てこない。本人がいれば間違いなく少しは心配しろと抗議するだろう。


「だが紫月ちゃんが」

「ああ、心配するな龍。紫月はしっかりしてるから」


 寧ろ紫月に何かあったら三男坊を消してやると思いながら啓吾は立ち上がった。


「兄さん、掴めましたよ。千葉のハワード医学研究所みたいですね」

「少し距離があるな」

「戦車でも使うか?」

「却下です」


 森の提案は即刻秀に却下された。わざわざ戦車で市道を滑走などしたくない。何より楽にハワード医学研究所に行かせてくれるはずもないだろう。


 じゃあ陸路がダメならと、森は空を見上げた。


「ヘリを呼ぶにしても、この有り様じゃあ時間がかかりそうだしなぁ……」

「その前に誰が操縦するんですか」

「もちろん俺」

「落とされるのがオチです」

「秀、俺は結構操縦うまいぞ? アメリカで航空ショーやってたこともあるし」

「えっ! 森お兄ちゃんすごい!」

「そうだろ、カッコイイだろう!」

「うん!」


 夢華は目をキラキラさせた。しかし、なぜアメリカの航空ショーまで経験しているのか非常に謎であるが、無数のヘリが飛び交う現状なら時間がかかると空路も却下された。


「他に移動手段は」

「船だ」


 土屋が話を遮って意見した。歩いてくる二人の姿に龍と秀は友好的な笑みを浮かべた。


「土屋先輩!」

「宮岡さん!」

「久しぶりだな、秀君」

「昨日は兄がお世話に……」

「いや、警察も秀君にはお世話になってるからね」

「秀、何かやってるのか?」

「捜査協力ですよ」

「そうか」


 龍のあまりにもあっさりした返答に「それで納得していいのか!?」と啓吾は心の中でつっこむ。土屋が一応真面目だという印象は受けてはいるが、秀と関わってる時点で只者とは思えず……


「ようやく来たか、淳と良」

「お前と違ってこっちは休みでも事件追ってるんだよ」

「真面目だな〜相変わらず」

「仕方ないだろう? お前の祖父さん、紗枝ちゃんのことでカンカンだったぜ?」

「何だ、良。お前祖父さんに会ってたのか?」

「昨日な。財閥のコンピューターを借りにいったついでにね」

「ふ〜ん、だからお前も前線に出て来たのか」


 その後柳達に二人を紹介し、現在の状況を龍が説明すると、やはり土屋も宮岡も目を丸くした。翔が捕まったなどとあまりにも意外だったらしい。


 そしてSATから入った情報を土屋は簡潔に説明した。


「医師会の檜山がまだ見つかっていないんですか?」

「ああ、あいつは今回の件以外にもまだ多くの余罪がある。上が何と言おうと必ず捕まえなければまずい」

「何があるんですか?」


 その時だ! いきなり倉庫が大破し辺り一帯が大火災に見舞われる!

 さらに中の手榴弾や薬品が科学反応を起こしたのか爆風が一行を襲った!


「うわあ!!」

「きゃあ!!」


 体重の軽い末っ子組が吹き飛ばされそうになったところを龍が抱え、他の者達は啓吾が重力で縛り付けた。


「全員無事か!!」


 龍が叫んで辺りを見渡せば辛うじてと反応が返ってくる。


「ありがとう龍兄さん」

「ありがとう龍お兄ちゃん」


 末っ子組が礼を述べ、とりあえず二人とも怪我はないなとホッと安心する。そして沙南は無事かと視線をやれば宮岡が庇ってくれていたようで良かったと思った。


「にしてもここまで吹っ飛ばしやがって!」

「さすがにこの火の中は歩き回りたくないな」

「森、お前なら行ける。戦場を経験してるならさっさとこれをやった敵を撃ってこい」

「淳、お前本当に警察か!?」

「今日は休みだと言っただろう。後から逮捕してやるからさっさとやってこい」

「それに別にくたばって来ても構わないぞ。何なら今のうちに葬式用の写真撮ってやろうか?」

「テメェら!!」


 こんな緊急事態で逞しい一般人がいたのかと啓吾は不思議そうに男三人組のコントを聞いていたが、よく考えれば天宮家と付き合ってる時点で特殊だと気付く。


 そしてコントがようやくおわり、土屋は結論を出した。


「ならばさっさと船を出せ。クルーザーの一隻ぐらいあるはずだろ」

「クルーザーっていってもここ大型船がほとんどなんじゃ……、きたな」


 退路を絶たせて海からアメリカ海軍がやってくる、何隻もだ。それを見て動かない次男坊はいない。


「啓吾さん、一隻だけ残して転覆とかさせられます?」

「無茶言うな!」

「ならば仕方がない。僕がやりますか」


 秀がパチン!と指を鳴らすと、一隻だけ船を残して他は炎上する。そして残った船に飛び移り乗組員をひょいと海に投げ込んだ。


「森さん、さっさと運転してください」


 容赦なく船を炎上させた秀に、土屋は龍に尋ねる。


「龍、秀君去年より過激になってないか?」

「……あいつを止められる奴なんてこの世にはいません」

「お前も苦労が増えたな……」


 土屋はポンと龍の肩を叩いた。



ようやく龍達も翔君達を追い掛けることに。

にしても全く心配されない翔君が不敏!


そしてようやく紫月ちゃん以外土屋さんと宮岡さんと会えました。

あっ、紫月ちゃん宮岡さんとはちゃっかり面識あります。

一度天宮家で会っていますが、

秀と紫月ちゃんのバイト先の喫茶店に来ることもあるそうで。


またいろいろ伏線張り巡らして大丈夫なのかと言われそうですが、

ちゃんとそのうち繋げますので。


いよいよ視点は翔君と紫月ちゃんに移ります。

二人は一体どうなってしまうのか!?




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