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天空記  作者: 緒俐
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第一話:偶然は必然の前触れ

 突然降り出した雨は豪雨へと変わった。六月の梅雨時にはよく起こりうることである。夜も少し遅く、雨独特の湿度が辺りに立ち込めている。


 そんな不運に二人の少年も遊びの帰り道、見事に鉢合わせていた。


「あっちゃ〜かなり降ってきたな……」

「うん、通り雨だといいんだけど……」


 腕白、無鉄砲を絵に描いたような兄と純粋、無邪気の代名詞を背負った弟は雨宿りを余儀なくされてしまった。バス停の屋根からは容赦なく雨が流れ落ちていく。


「やっぱり兄貴達のいうこと聞かずに遊んでたのがまずかったかなぁ?」

「自業自得といわれるだろうね」

「お前は末っ子だから被害は少ないだろうな」


 苦笑するしかない状況とはまさにこのことである。末っ子はともかく、自分に浴びせられる説教は責任の重さと判断ミスにまで及ぶのが毎度のことなのだ。その悪寒を肌に感じながら弟は別の悪寒を感じ始めていた。


「ハックシュ!」

「おいおい純、頼むから風邪だけはひいてくれるなよ? 兄貴達から何て言われるかわかんねぇんだからよ」

「大丈夫だよ、翔兄さん。僕は風邪なんてひかないからさ、ハックシュ!」


 とてもそうとは思えない。まだ小学生の弟を風邪引かせたとなれば、おそらく兄から落ちるカミナリは大木十本ぐらいは軽く吹き飛ばすものだ。連発して出て来るくしゃみはまるで地獄へのカウントダウンのよう。ハンカチぐらい持ってくれば良かったな、と後悔しても時既に遅しだ。


 どうすればいいのかとこの問題を考えあぐねていたその時、それを解決へと導いてくれる女神がこのバス停に降臨する。


「随分濡れてるね、大丈夫?」


 傘をたとみ、鞄からハンドタオルを取り出して純の濡れた頭や頬を優しく拭いてやる。

 声はもちろん、その容姿からも優しさが伝わってくる美女はその場にいるだけで人を穏やかにさせる魅力の持ち主のようだ。


 それに触れて純は天使のような笑みを浮かべて礼を述べた。


「ありがとう、お姉ちゃん」

「いいえ、どういたしまして」


 ニッコリ微笑み返してくれる表情がとても可愛いらしい。自分の家で同居している姉と少々タイプは違うが、同じくらい好感がもてるなと翔は思う。


 その直後、バスはやってきた。乗客が数人が下りた後、彼女の待ち人はいかにもお疲れ気味な様子であくびをしながら下りて来る。


「お帰りなさい」

「おう、ただいま。傘すまなかったな」


 二枚目登場である。いかにも喫煙者で若いときは無茶もやりましたという雰囲気を漂わせながらも、どこか温かい青年は美女に軽く礼を述べた。


「じゃあ帰るぞ」

「ちょっと待って。はい、これさして帰って」


 ニッコリ笑って美女は翔に自分の傘を差し出した。


「えっ? でも」

「私は大丈夫。家も近いしもう一本あるから。それに弟さんも君も雨に濡れたら風邪引いちゃうでしょ?」


 今時、ここまで親切にしてくれる人って絶対いないよなぁと思いながらも、すぐに浮かんだ家訓を翔は実行した。


「ありがとうございます。じゃあ、今度返しに行きますから名前と電話番号」

「ああ、構わん。うちは人に関わる面倒は嫌いだからな。また偶然出会ったときにでも返してもらえばいいさ」

「偶然って……、それじゃあ家訓を守れなかったことになって兄貴達に叱られるんだよ。受けた恩は犬でも覚えてるって厭味まで付けられる。必要最低限の事ぐらい教えてよ」


 そう簡単には引き下がらない、といった表情を向けて来る翔に、青年は美女と顔を見合わせると、青年はやれやれと溜息を吐き出して答えた。


「そうか。じゃあ、篠塚啓吾っていう人に貸してもらったとでも兄貴達に言っとけ。柳、帰るぞ」

「ええ。じゃあ、気をつけてね」

「待ってくれ、俺は天宮翔だ!」

「ああ、分かった」


 勢いよく傘を差し、柳と呼ばれた美女が絶対濡れないように少し肩が濡れながら帰る青年が少しだけ大人の男を思わせた。


 それを見送って翔も反対方向を向くと勢い良く傘を開いて純を促す。


「純、帰ろう。とりあえずこれ以上遅くなったらお前の身も危ない」

「うん!」


 青年がしていたように、翔も純が濡れないように出来るだけ傘の面積を譲ってやり家へと歩き出した。



 そして、二人の兄弟と別れた二人の兄妹は仲睦まじくという言葉がぴったりした空気を醸し出しながら歩く。


「珍しいわね、兄さんがちゃんと名乗るなんて」


 くすくす笑うのは普段の兄らしくないから。しかし、妹としてはそれが少し嬉しかった。

 笑うな、と顰め面を浮かべながら言うがすぐに青年は穏やかな表情に変わる。基本、この青年は妹に甘い。


「ああ、まぁガキならすぐに忘れるだろうから問題ないだろ。ただ、柳の新しい傘買いに行かないとな」

「時間があるときに付き合って頂戴、啓吾先生」


 柳は優しく微笑んだ。まだ彼等がこの先、天宮兄弟と深く関わることになるなどと思ってもいない雨の日だった……




こんにちは!

今回の小説は「創竜伝」を題材にしちゃおうと思って書いています。

とはいっても、ドラゴンに変身するわけでもないですけどね(笑)


これから描いていく四兄弟は彼等のようなイメージですが、全てパクっても面白くはないので、何より恋愛面にも関わっていきたいので頑張って書いていきたいと思います。


以上、緒俐でした☆




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