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もしも女神になったなら  作者: 雨戸紗羅
第一章 消えた神の剣
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第七話 耳神の末裔








「いつまで寝ておるのじゃ!」


「……はっ!私は何を!」


 ドレイクがクラエを叩くと、石化が解けたのか、クラエは意識を取り戻した。


「大変申し訳ございません…とんだ醜態を…」


「全くなのじゃ!」


「いえいえ、とんでもないです!こちらこそ、ドレイクさんのお仕事の邪魔をしてしまっていたみたいで…」


「そ、そうなのじゃ!ワシが仕事をしなかったのは、この者達の手伝いをしようと思っていたからなのじゃ!!」


「手伝い…?」


「ええ、えっとですね…」


 俺はクラエに簡潔に事情を話した。


「なるほど、かしこまりました。ですが、ドレイク様。業務を放ったらかしにしてはいけません!私が彼女達の手伝いをしますので、頼んでいた書類、早く片付けてください!」


「そ、そんな〜」


 こうして、ドレイクは自身の業務へと戻り、青龍神剣の捜索には、クラエが手伝ってくれることとなった。


 「人や物の捜索なら当てがある」と言うクラエに連れられて、街の大通りに出ると、出店や売店が立ち並んでおり、客を呼ぶ声が飛び交っている。時折、街中で音楽を奏でている人物がおり、大通りの活気づけに一役買っている。


「そういえば、街中でもシルバの鼻は効くの?」


「うーん、これだけ人が多いと、私では嗅ぎ分けられませんね」


「ご安心ください、大通りから少し外れたところに、情報屋があるのです。そこに行けば、この街の大抵の情報は手に入ります」


「へぇー!すごいですね!何でも知っているのですか?」


「詳細な情報とまではいかないかもしれませんが、本人は何でも知っていると言っています。と言うのも、その方は耳神の末裔でございまして、どんな遠くの会話でも、聞き取れると言います。恐らく、この会話も聞いていると思われます」


「な、なるほど…」


 その人が街中の会話を全て聞いていると思うと、なんだかプライベートがないようで嫌な感じもする。しかし、それだけ多くの音という情報を入手できるのであれば、青龍神剣の在処の手がかりが見つかるかもしれない。


 クラエに着いていくこと十数分、大通りを横に曲がると、少し狭い入り組んだ道に入る。


 汚れや埃が目立つその道を進むと、一つの小汚いドアにたどり着いた。


「ここが情報屋でございます」


 クラエはそう言うと、ドアを開けて中に入っていく。流石の俺も、不気味な様相に少し躊躇したが、シルバ達と共に中に入る。


 建物の中は狭かったが、意外と綺麗に整頓されており、生活感を多少感じるものの、アンティークな印象を受ける空間だった。


 部屋は本棚に囲まれており、色とりどりの本が並んでいる。ドアから正面には受付のようなカウンターがあり、そこには一人の年老いた男が、本を読みながら座っていた。


「何か用かね?」


「はい、情報を買いに来ました」


 男の問いかけにクラエが答える。


「ほう、話を聞こう…」


 男は本をそっと閉じ、こちらに向かって座り直す。


「とは言っても、内容は把握済みだ。青龍神剣だろう?」


「は、はい!青龍神剣を持ち去った人物について聞きたいです!」


「うむ、いいだろう。ただし、勿論タダではないぞ。それなりの報酬は頂く」


「お金から私が用意しました。いくらですか?」


「ホッホッホ、金も欲しいが、ワシは情報屋。欲しいのは情報だ」


 男の目が鋭くなった気がする。というか、俺を見つめている気がする。


「ワシが欲しい情報は…そう!!そこの女神様のパンツの色じゃ!!!」


 男は老獪な目を血走らせながら叫ぶ。


「殺しますか?」


「ちょっと待ってシルバ!!落ち着いて!!」


 シルバは軽蔑の眼差しを年老いた男に送りながら、右手の爪を立てる。俺は今にも飛び出しそうなシルバを押さえながら、男に話しかける。


「パンツの色を教えれば、情報をくれるのですか?」


「うむ、もちろんだよ。別にワシが女神様のパンツの色を知りたいわけではないのだよ?ただ、知的好奇心というか、何というか……ね!ほら、女神様のパンツの色の情報…高く売れそうだろう?」


 男は聞いてもいない言い訳をタラタラと並べ始めた。しかし、そんなことしなくても、俺は元男なので、目の前の男に下着の色を教えることに抵抗はあまりない。その程度の対価で済むならば、クラエにお金を立て替えてもらうよりも良い。


「わかりました!」


「ツバサ様!!無理なさらないでください!!こんな下郎、力づくで情報を吐かせましょう!」


「待ってください!私は大丈夫です!穏便にいきましょう!」


「ムフフ…わかればいいのだよ…」


 俺は改めて自身の服装を確認する。女神様に姿を変えられた時、服も変化しており、白いワンピースのような服になっていた。そして、これまで下着を確認していなかったことに気づき、「ちょっと色を確認してきます!」と言って後ろのドアを開けて外に出る。


 そして気づく。


 なんか股間がスースーすることに。


 そして理解する。


 自分がノーパンであることを。


 俺は背後のドアを開けて、皆が待つ場へと戻る。心配そうに俺を見つめるシルバ。笑いを堪えているラッキー。恐らく罪悪感を感じながらも、好奇心を隠せず、落ち着かない様子のソルド。カウンターから身を乗り出して息を荒くしている男。


 皆からの注目を浴びながら、俺は口を開く。


「私………せんでした…」


「え?なんだって?」


「私…パンツ履いてませんでした!!」


 俺の声が静かな部屋の中に響く。


「は、は、履いて無いだとおおおおおお!!!」


 男は興奮のあまり鼻から勢いよく血を吹き出し、宙に弾け飛ぶ。そして背後にある本棚にぶつかって下にズルズルと落ちるも、満足げに笑顔を浮かべている。


「グハァ!!」


 そして何故かソルドは、自分の顔を殴り、血反吐を吐いている。


「いやぁ…まさか、ノーパンとは…こりゃあお宝情報だ……。女神様がノーパン…想像しただけで寿命が伸びそうだ…」


 男は恍惚とした表情でそう呟くと、「よっこらせ」と立ち上がり、カウンターの席に戻る。男は、シルバからの軽蔑の眼差しを受け流しながら、話し始める。


「ここまでの情報を貰っておいて、話さないわけにはいかんな。まず、改めて自己紹介をしよう。ワシの名は、フテイ。フテ爺と呼んでくれ」


「よろしくお願いします!フテ爺さん!」


「うむ。それで、青龍神剣の情報だが、丁度今朝の話だ。大通りに、青く綺麗な剣を持った、見知らぬ黒いローブの女がいるとの話があった。恐らく、それが青龍神剣を持ち去った犯人だろう」


「黒いローブの女…その方が今どちらにいらっしゃるかわかりますか?」


「ちょっと待っておれ…」


 フテ爺は、右手を右耳に当て、目を閉じる。


「うーん…今話題にしてる奴おらんな。だが、最新の目撃談としては、大通りの近くにある噴水広場で見かけたというものがある。そこへ行ってみて、聞き込みをするのが最善だろう」


「なるほど…わかりました!情報ありがとうございます!」


「ハハハ、これが仕事だからな。…それじゃあ、達者でな」


「はい!ありがとうございました!」


 俺たちはフテ爺の店から出ると、クラエに案内してもらい、すぐに噴水広場へ向かった。


 噴水広場には、多くの人が集まっていた。噴水の周りにあるベンチには、買い物途中の休憩をしている人や、屋台で買ったものを食べている人が座っている。


「とりあえず、その辺に人たちに聞き込みでもしましょうか」


 クラエがそう言い、手頃な人を探そうとした瞬間、爆発音が周囲に轟く。辺りの人々はザワつき出し、悲鳴を上げる者もいる。


 

「何事ですか!!」


 爆発音をした方向を見ると、そこには二人の黒いローブを着た人物がいた。二人ともフードを被っており、顔は確認出来ない。だが、体つきから判断すると、一人は大柄の男。もう一人は小柄な女ということはわかった。


 爆発によって発生した煙がある程度晴れると、二人は同時に片手を挙げ、語り始める。


「この世界に神などいらぬ」


「我ら滅神教の使徒なり」


「「この場にいる神の末裔は、皆殺し」」

 



 

 


 


 

 


 


 

 


 

 

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