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もしも女神になったなら  作者: 雨戸紗羅
第一章 消えた神の剣
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第五話 神の剣と神獣



 

 



 


 改心したソルドが仲間に加わり、俺とラッキーを含め二人と一匹で旅をすることとなった。



 ちなみに、ソルドが連れていた仲間二人は、俺が懺悔パンチを一発ずつお見舞いし、改心させた結果、故郷に帰って奉仕事業に勤しむことになった。



 その二人を見送った俺たち三人は、ひとまずの目的である、俺の武器の調達に向かう。



「そう言えば、なぜソルドさんはハリセンボン山にいらしてたんですか?」


「ああ、俺も貴方と同じで、伝説の武器を探していたんですよ。かつて剣神が使っていたとされる青龍神剣(せいりゅうしんけん)です。青龍の逆鱗から作られたその剣は、どんな岩や金属でも切れると言われています」


「へぇー凄いですね!見つけてみたいです!」


「青龍剣は山の頂上にある祠にあると、伝説では言われています。真偽はわからないですがね」



 ソルドの情報をもとに俺たちは山頂にあるという祠を目指すことになった。



 山の麓の森を抜け、斜面がキツくなってくると、段々と岩の数が多くなりはじめた。まばらにあった武器の残骸も、その数を増やし、本格的に争いの痕跡を感じた。


 そのまま三時間ほど山を登っていくと、とうとう山頂にたどり着いた。山頂はかなり平地があるようで、見上げるほど巨大な武器と、人が使えるような小さな武器が沢山刺さっており、壮大な風景だった。



「ここに、祠があるのでしょうか?」


「うーん、今のところ見当たらないね、武器ばかりだ!」


「やっぱり伝説は伝説だったのか…」


 ソルドは少し落ち込んだように首を垂れる。



「いやいや、祠がなかったとしても、この山頂にある武器は、神々が実際に使っていたものばかりで、中にはきっと使えるものもあるはずだよ!」


 ラッキーは落ち込むソルドを励ますように肩を叩く。



「確かに、山の麓のものよりも、状態が綺麗なものが多いように感じます。なぜでしょうか?」


「それはね、この山の特性に理由があるんだ!」


「特性?」


「そう!ハリセンボン山はね、火山じゃなくて、神の力によって作られた山なんだ!そして、神の力が山頂付近に溜まっていてね、山頂にある神々の武器は、その神の力によって劣化しないんだ!」


「神の力って便利なんだな…。というか、このラッキーとかいう珍獣はなんでそんなこと知ってるんですか?」


「ムキー!!吾輩は珍獣じゃないって!女神様の遣い、妖精獣のラッキーだ!!」


「女神様の…遣い……?」


 ラッキーの抗議を聞いたソルドは、俺とラッキーを交互に見ている。


「な、なんですか?」


「や、やっぱり…そうなんじゃないかって思ってたんですよ…」


 ソルドは俺の方に向き直ると、畏まったように姿勢を正す。

 

「ツバサさん…いや、ツバサ様…!!貴方は、女神様だったんですね!!」


「えっ!いや、私は…」


「俺は…青龍神剣の情報を得るために、古代の書物を読みました…。その時に、女神様の特徴を見たんですが、虹色に光る長い髪、赤く輝く瞳、そして何より…悪人すらも許してしまうほどの優しい心…!間違いなく、貴方は女神様だ…!!」


 ソルドは興奮したように目を輝かせる。



「いや、私は女神様ではありませんよ…。ね!ラッキーさん!」


「うんうん!ここでは女神じゃないことになってるんだったね!」


「ラッキーさん!!??」


「あっ、隠されていたんですね!申し訳ございません!このことは、決して口外致しませんので!!」



 ソルドの真っ直ぐな瞳を見て、これ以上の訂正は無意味と判断した俺は、彼の中では女神様ということになってしまった。あとで女神様に怒られないか心配になる。


「ん?何か聞こえませんか?」



 俺に向き直っていたソルドが、怪訝そうな表情で耳を澄ましながら辺りを見渡す。



 すると間も無く、段々遠くの方から地鳴りのような音が聞こえてきた。



「な、何事ですか!?」


「むむっ!あれは…神獣だ!!」



 少し離れたところで大きな物体が飛び上がる。空を見上げると、その物体がこちらの目の前に勢いよく舞い降りる。


「わわっ!!」


 とてつもない暴風とともに、砂埃が舞い上がり、思わず目を閉じる。そして、少し経ってから目を開けると、そこには狼を思わせるような巨大な猛獣が鎮座していた。



 その銀色の毛並みは刃物のように鋭く、口から見える鋭い牙は、思わず息を呑んでしまうほどに凶暴だった。




「こ、こいつは……ヤバイな…」


「これは、マズイかもね……」




 ソルドのラッキーは、神獣と呼ばれた目の前の存在に気圧されているようだ。しかし、そんな二人とは対称的に、俺の心にあるのは、恐怖や緊張ではなく、むしろ好奇心だった。動物好きの精神が、目の前の神獣がどのような生物なのかという知的好奇心を刺激してくる。



「フム…神の気配を感じて来てみれば…女神様であらせられたか」



 目の前の神獣がヒトの言葉を喋り出す。



「えっ?」


「女神様、一体どのような要件でこちらに?」


「わ、私!?」


「貴方様以外、どこに女神様がいらっしゃるのですか?」




 どうやら神獣は、俺を女神様と勘違いをしているようだった。その様子を見て、ラッキーが俺の方を見ながら口をパクパクさせている。


 どうやら、「話を合わせて」と言っているようだ。




「え、えっと、私たちは、剣神さんの武器を探しに来たのです。その剣がある祠がこの辺りにあると聞いたので……」


「あーそうでしたか。それならご案内しますよ」


「え?いいのですか?」


「もちろんでございます!ささ、私の背中にお乗りください」



 神獣はそう言うと、三、四メートルはあるその身体をかがめさせ、俺が乗り込むのを待っている。



 俺は本当に乗って良いのか迷い、少し躊躇するも、勇気を出して乗ってみる。すると、鋭いように見えた銀色の毛並みは意外にもふかふかで、座っていて心地よさすら感じた。



「あ、ありがとうございます!…えっと、何とお呼びしたらいいでしょうか?」


「私に名前はございません。お好きなようにお呼びください」


「で、では、そうですね…シルバと呼びますね!」


「シルバ…良い名前ですね!使わせていただきます」


 神獣、もといシルバは、俺がつけた名前を気に入ったのか、少し身体を震えさせると、大きな遠吠えをした。


「な、なぁ、俺達も乗っていいのか?」


「む?何だ貴様は……ふむ、神の血が混じっているようだが、誇り高い私は、神以外を背に乗せないのだ」


 どきり。


 これ俺が本物の女神様じゃないとバレたら、マズイのではないだろうか。


「そ、そうか、じゃあ俺は走ってついていくよ」


「ぼ、僕は飛べるから大丈夫」


「ならば、私に着いてくるといい」


 シルバは私を背に乗せ、悠然と歩き出す。巨大な動物の背中に乗って移動するということは、子供の頃から夢に見ていたことなので、心が躍る。俺に気を遣ってか、速度はそれほど速くなかったので、ラッキーやソルドもしっかり後ろに着いてきている。


「シルバさんは、この辺りに住んでいるのですか?」


「いえ、たまたま散歩していただけです。パトロールついでではありますが」


「パトロール…ですか?」


「ええ、私は神に仕える神獣ですから、神が創りしこの世界を、邪な存在から護ることが務めなのです。神々が帰ってきた時に、快適に過ごして貰いたいですから!だから、女神様がこの世界に来てくださって、嬉しいです!」



 シルバの声はとても優しく、神々のことを想っていることが感じられる。そんなシルバの様子を見て、自分が女神だと嘘を吐いていることに申し訳なさを覚える。


「あの…シルバさん……」


「なんですか?」


「ごめんなさい…私、実は女神様ではないのです……」 



 俺は罪悪感に耐えきれず、シルバに真実を話すことにした。ソルドやラッキーには申し訳ないが、やはり嘘を吐いて手伝ってもらうことは、良いこととは言えない。そして、女神様から頼みを任された者として、これ以上、嘘を吐くわけにはいかないだろう。



「うーん…貴方様が何を思っていらっしゃるかは、私には分かりませんが、貴方様は間違いなく女神様ですよ。貴方様の中にある力…それは間違いなく神様しか持ち得ないものです。そこの神の血を受けづく者とは違い、他者の加護ではなく、内から湧き出る力。それは神様特有のものですから」


「そ、そうですか…」



 シルバの言葉を聞き、ラッキーに言われたことを思い出す。俺は既に人ではないと、ラッキーは言っていたが、もしかしたら、女神様と同じような存在にでもなっているのだろうか。そうであれば、女神と名乗ることは、嘘にはならないのだろうか。


 

 そして、色々考えているうちに、シルバに乗せられて着いた先は、地面に長い剣が何本も突き刺さってできた小さな建物だった。



「これが、祠……」


「ええ、剣神が祀られている祠ですね。この中に、剣神様の剣があるはずです」


 俺たちは、シルバの案内に従って祠の中に入って行くと、中には祭壇のようなものがあったが、剣と思しきものは見当たらなかった。


「あれ?どこにあるのですか?」


「おかしいですね…この祭壇に飾ってあったはずなんですが……」


「もしかして、既に誰かが持っていったとか……」


 ソルドがそう言うと、シルバが辺りのニオイを嗅ぎ出す。


「まだ、私たち以外のニオイが残ってますね。やはり、誰か来ていたようです。ニオイを辿っていけば、居場所がわかるかもしれません」


「なるほど…。シルバさん!すみせんが、また案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」


「もちろんです!」


 俺はシルバにまた乗せてもらい、祠に来ていた人物を追うことにした。

 



 


 

 

 


 

 


 

 


 


 

 


 


 



ここまで読んでいただき、ありがとうございます!!



この作品は、これから二日に一回のペースで投稿していく予定です!


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