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三題噺もどき3

外食

作者: 狐彪

三題噺もどき―ごひゃくはちじゅうに。

 


 妹二人を乗せて、車を走らせている。


 今日は珍しく特に予定もなく家にいたため、三人で昼食を食べに出かけていた。

 次女は後部座席でスマホをいじるのに忙しそうだ。末っ子は助手席に座って音楽をかけている。車のCDのところが壊れているので、携帯で流している。

「……」

 今は会話は途切れた。

 どこに行くかは決まっているので、まぁ切れるには切れる。

 つい数秒前まで末っ子とは会話をしていたのだけど、丁度その切れ目という感じ。

 私の好みではなく、末っ子の好みの音楽が鳴り響いている。ま、スマホの持ち主の音楽が流れているだけだから当然なんだけど。

「……」

 赤信号で停車。

 そのすぐ隣の歩道を、学生が走っていた。

 見た限り同じ学校の生徒だけど……集団でいるにしては少ないような気がする。よくみれば、道の先にもばらばらといるようだけど。

 しかも格好が制服ではなく、明らかに体育服なんだけど。

「……」

 あぁ、もしや持久走とかいうやつで走らされているんだろうか。

 この土曜日に……?いや、部活動かな。そっちの方が現実味はある。

 さすがに土曜授業で体育をすることなんてそうそうないだろう……知らないけど。

「……」

 しかし、可愛そうに……。この寒い中走らされる上に、こんな道路を走るとは。走りづらそうに見えるんだけど、どうでもないのかな。

 そんなに広くない学校だったりすると、そういうことはあるのかもしれないけど。

 ……あぁ、でも私も走らされた記憶がある。

「……」

 冬の体育とか大嫌いだったから、よく覚えている。

 ただでさえ、体育という授業自体嫌いだったのに、冬なんて最悪だった。

 寒いのに、その中をしんどいと思いながらひたすらに長距離走るだけ走らされて。持久走大会何て訳の分からない大会までさせられて。あんなの順位つけるモノじゃないだろう。走るのさえきついのに、その上順位までつられて、数字として結果が出て、最後から数えた方が早いなんて、嫌に決まっている。

「……」

 最近は徒競走でも順位をつけなかったりするらしいが、万年ドベだった私からしたらいい時代になったなと思うんだけど。それはそれで何かを言う人が居るらしい。まぁ、そう言う人たちはきっと野心家なのだろう。これからの人生が楽しそうで何よりだ。

「……」

 信号が青に変わり、走っている学生集団と離れる。

 目的地はすぐそこなので、指示器を出すタイミングをうかがいつつ、車を発進させている。

 妹二人はどうやらもう、携帯をいじるのに夢中らしい。依存症になっても知らないぞ。……もうなっているのかそれ。どこまでが依存でどこからが依存じゃないのか分からない。

「……」

 店の看板が見えたので、指示器を出しておく。

 歩道を挟むので、歩行者や自転車がいないことを確認し、ハンドルを切る。

 地元では有名な店だ。全国的にもここに来たならこの店になんて言われるくらいには有名である。麺類……というか、そばで有名な店なのだが。私はそばではなくて、うどんを食べる。別に蕎麦屋ではないのでうどんを食べても何も問題はない。何なら私は蕎麦屋に行ってもうどんがあればうどんを食べる。……けど少し前にここに来た時に、近くに座っていた観光客らしい人に、ここにきてうどん食べてる…みたいなことを言われた。別にいいだろううどんの方が好きなんだから。

「……」

 まぁ、そんなことはどうでもいいのだけど。いやまぁ、気持ち的には全くどうでもよくないんだけど。そんなことを聞こえる距離で聞こえる声量で言うやつがいるんだなくらいで終わらせてしまっておいて。私なら絶対出来ないなということで置いておいて。

 ……とにかくまぁ、ここは、いろんな観光客が来るくらい有名な店なので。平日だろうと、昼食時間は混んでいる。普通に並ぶ。特に土日はタイミングを間違えると入るのも大変になる。

「……」

 だから、今日は昼前の時間にやってきた。

 休みの日は誰も朝食を食べないので、このぐらいの時間が案外丁度よかったりする。

 駐車場の端の方に空きがあったので、そこにとめておく。ホントは頭から突っ込んだ方が楽なんだけど、出るときが大変なのでバック駐車で。当たり前だと思うかもしれないが、バック駐車苦手なので、割と苦労する。

「……ついたよ」

 エンジンを切り、鍵を抜いても動かない妹二人に、そう声を掛け、降りる。

 大き目のキーホルダーを点けた鍵が、カチャリとなる。

 狼をモチーフにした人形のキーホルダーをつけているのだけど、これがかなり可愛くて気に入っている。割と鍵を無くす方なので、見失わないようにと大き目のこれをつけているんだけど、これはこれで外出先では邪魔だったりする。

 まぁでも、可愛いしいいかなという訳の分からない理由で今日までつけている。帰る予定も今のところない。なんか安くで可愛いのがあったら買えるかもしれない。恐竜のやつとかないかな。

「……」

 その鍵を鞄に入れず、適当にズボンのポケットに突っ込んでおく。

 これはこれで可愛いんだよな。腰下で揺れる可愛めの狼。

 邪魔だけど。

「……はよ降りんかい」

 いつまでたっても降りてこない妹二人を急かし、車から降ろす。

 車が少しずつ入ってきたから、早く入らないと食べれなくなる。

 今日は何食べようかな……。











 お題:狼・冬の体育・麺

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