交会
ある日、一隻の宇宙船がゆっくりと地球に着陸した。空に浮かんでいた段階からその姿を捉えていた人々が、ワラワラと集まってきて、あっという間に宇宙船を取り囲んだ。
しかし、誰も近づこうとはしない。初めて目にする宇宙船の異様な威圧感に、皆が怯えて立ちすくんでいた。そして、まるで彼らを嘲笑うかのように、宇宙船は突然白い煙を上げ、音を立てて搭乗口が開いた。
「な、なんなんだ……」
「あ、誰か出てくるぞ!」
「あれは……」
「お、おい、誰か行けよ」
宇宙船から現れた宇宙人は、群衆がざわつく中、堂々と立った。どうやら、代表者が出てくるのを待っているようだった。
「お、おれが行くよ。……は、はーい、どうもー、うぶぅ!?」
勇気を出した一人の男が宇宙人の前に進み出た。しかし、宇宙人は無言で持っていた棒を振り下ろし、男を殴り倒した。
「おい、戻ってこい!」
「いったい、どういうつもりなんだ……おれたちを殺しに来たのか?」
「いや、たぶん気に障ったんだろう。あいつの笑顔、なんか不快だったからな」
「じゃあ、次はそこのお前が行け」
「え、はい……あの、こんにちは、うべぇ!?」
「駄目か。この中で一番顔がいいやつを行かせたのに」
「では、女ならどうだ?」
「最初からそうすべきだったな」
「じゃあ、体つきが一番いいそこの君、行け!」
「はぁい、あのー……え? はい、下がります……」
「お、殴られなかったが、首を横に振ったな」
「女はお呼びじゃないって感じだ」
「あ、子供が向かっていったぞ」
「また首を横に振ったな」
「では、俺が行こう……」
そう言って、この中で最も屈強な男が宇宙人の前に立った。
「あの、もしかしてあんたは、か――うがぁ!?」
宇宙人は、彼もあっさり殴り倒し、雄叫びを上げた。すると、群衆は驚きから一転して歓喜の声を上げた。
「強い! 圧倒的だ!」
「やっぱりだあ! あれは神だ!」
「太陽の神が空から降りてきたんだ!」
「宴の準備を始めろ!」
こうして、宇宙人は祭り上げられた。
奇しくもその頃、別の星でも同じように宴の準備が進められていた。
「ああ、なんてことだ……なぜこんな……」
「黙れ……」
「ははは、ははは、はははは!」
「あいつ、狂ったな」
「ああ、しかし笑うしかないだろうな。原始人を狩りに来たら、返り討ちにあって火あぶりにされようとしているとは……」
「やっぱり、もう一つの星に行けばよかったんだ……文明レベルはあまり変わらないが、あっちはもっと弱そうだった。強いほうがいいなんて誰かが言うから……」
「今さら言っても遅いだろ。おれたちの宇宙船が飛び去っていくのを見たか? たぶん、連中がいじって勝手に離陸させちまったんだ」
「逃げられないなら、せめてあの船に乗った奴が向こうの星でひどい目にあっていることを願おう……」