第9話 成長
「危なかったな。今の、哨戒兵みたいなもんか?」
後方にも1体歩かせよう。倒したコボルド4体を召喚する。
「目覚めろ、コボルドファング」
【種 族】 コボルドファング 雄
【名 前】
【ランク】 F
【レベル】 1
【 力 】 7
【耐久力】 4
【素早さ】 6
【魔 力】 2
【体 力】 5
【知 力】 3
【スキル】 牙襲術1 忍び足1
「名前はわかりやすくキバにしよう。」
「ぐがぁ」
危ないスキル持ってるな、忍び足。確かに音は聞こえなかったし、こいつが吠えなきゃ気づかずやられていたはずだ。
キバには敵を見つけても、声を出すなと指示しておいた。
「ふう...一旦帰るか」
なんかドッと疲れたな。魔力も使ったし、さっきの戦闘が堪えた。
キバを先頭に、入口まで案内させた。道中、出くわしたのは2体だけだ。倒して経験値を積む。5分ほどでゲートに帰ってこれた。1時間も経っていないが大分長いこと中にいた気がする。
まだ外は明るい。若干沈みかけた太陽の光が眩しく感じられた。
「みんなよくやったな。リープとギンコは、このまま護衛頼むぞ」
コボルド達を魔魂空間に帰し、リープ達に結界門近くまで同道してもらう。
ダンジョン1日目の戦利品は、コボルド達と50センチ四方の毛皮が4枚。本来ならここに魔石も加わるけど、それは明日以降だな。
◆◆◆◆◆◆
翌日、学校。
対人訓練にて——
「一条、今日もやろうぜ」
「来たな秋島、やってもいいけど。今日で俺が勝ち越しちゃうかもな」
「ふっ、俺のスキルはレベル3になったんだ。今日は必ず勝つ」
秋島は剣術部部長で、毎日木剣振り回している熱血気味の男。部内で対人戦もしているから学年でもトップクラスの実力だ。...レベル3とか訓練だけでどうやったんだ?
初日に自分といい勝負をしたからか、毎回試合を申し込んでくるようになった。悪感情は感じないし、俺も楽しかったので受けてやっている。
因みに、対人訓練の勝ち負けは成績に関係ない。真面目にやっているかどうかだけだ。
「先生、審判お願いします」
「いいか、一本先取で突きは禁止だ。...はじめ!」
開始直後、秋島がいつものように上段から強烈な真向斬りで仕掛けてくる。やっぱ速攻だよな。俺は剣を横に倒して受け、オーラを上げて上方へと押し返す。
瞬時に押し返されて、体制を崩した困惑気味の秋島に、此方から強襲する。体を秋山の右側へ流れるように移動させ、剣を左から右へと一文字に走らせる。秋山は対応が追い付かない、そのまま胴に一撃が決まる。
「それまで!いい勝負だったぞ、二人とも」
「「おおー!」」
「秋島が負けたぞ」
「いやー、紙一重だろ」
「一瞬すぎてわかんねぇ」
褒める先生と、勝負に感心した生徒の声が重なる。
「絶対勝てると思ったのに、鍛錬不足だったか」
「はっはっは、俺も最近オーラのレベルが上がったんだよ。危なかったぜ」
「いい勝負だった。またやろうぜ一条」
腕を組んで勝ち誇ったのに、熱血爽やかを崩さない秋島。...やるな。
「ああ、また今度な」
普通に戦ったら、剣術レベル3の秋島に勝てないだろう。剣筋が良くなるだけじゃなく、斬撃の威力が増すスキル。俺はキバの力とギンコの速さを借りて、ごり押しするしかなかった。でも、勝てたな。
今回の勝負、勝ち負けに意味はないけど、ここ数日の無茶には意味があったな。少しは強くなったみたいだ。
◆◆◆◆◆◆
放課後。
「...全く危なげなかったな」
コボルドの数も増え、リープとギンコの攻撃はほぼ一撃必殺だ。キバも索敵と奇襲で活躍中してる。俺は今日、一度も戦っていない。
リープとギンコはF級になり、リープの風魔法もレベルが上がっていた。狩りに専念できたおかげ20体近く倒したな。
そういえば、コボルドファング2体を狩って気づいたことがある。
まず、魔石状態でも能力が解析出来たこと。それと、キバは忍び足と牙襲術を持っているが、今日の2体は牙襲術しかなかった。個体によってスキルが多少違うらしい。
明日の本番に備えてこのくらいしておこう。
「みんなよくやった、そろそろ帰るぞ。」
「きゅ」「ぐるぅ」「ぐがっ」
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