第8話 F級ダンジョン②~コボルド~
「おおー、ダンジョン特有の現象、ドロップ化」
初めて見る現象に感動しながら、魔石を拾い上げる。
『Fランクの魔石を入手しました。能力が強化されます』
コボルドの魔石に反応したな。魔魂術のレベルが上がったぞ。魔石を掌で転がしながら能力を確認する。
【名 前】 一条 暁人
【職 業】 魔魂術士
【ランク】 1
【レベル】 4
【 力 】 10
【耐久力】 8
【素早さ】 7
【魔 力】 15
【体 力】 9
【知 力】 13
【スキル】 魔魂術2〈魔魂空間 魔魂供給 魔魂解析〉
従魔が20体にまで拡張、同時召喚数は5体から10体に、供給は受け渡せる数が2つになり、2体を対象に出来るようになった。
コボルドの毛皮ね、生産スキルなら加工して使えるだろうけど、俺のバックパックは小さめだ。戦利品のことなんて考えてなかった。まあ、一杯になってから考えればいいか。
今まで狩った魔獣は何も残さなかったからな。
「あっ、これ術が発動しないんじゃ...いや」
今までは、再構成に元の体が使用されていたけど、今回は霧散してしまった。試してみるか。魔石からは拒否反応は感じない。いける気がする...
「目覚めろ、コボルド」
「...ぐがぁ」
ダンジョンに霧散したはずのコボルドの気が、何も無い空間から戻ってきた。すぐさま体が再構成され、目の前にコボルドが現れた。ナイフも持っている。
もしかしたらダンジョンの魔物は、エーテルから生まれているのかもしれない。証明はできないが...
「Fランクの実力は...と」
【種 族】 コボルド
【名 前】
【ランク】 F
【レベル】 1
【 力 】 5
【耐久力】 4
【素早さ】 6
【魔 力】 2
【体 力】 5
【知 力】 4
【スキル】 短剣術1
「お?リープ達とそこまで変わらないな」
これならあの2体もすぐに、F級になれるな。
オーラが絶対って訳じゃないけど、高いに越したことはない。
もう1体のコボルドを召喚して、大鼠と役目を交代する。T字路は真っ直ぐ進んでもらう。その背中を見て、ふと頭をよぎる。
「なあ、お前達、もしかして道が分かるんじゃないか?」
「ぐが」
短い返事で首肯するコボルド。やっぱり、ここが住処だもんな。
「どこに行っても入口まで戻れるか?」
「ぐがっ」
自信があるようだ。
F級ダンジョンだから小規模のはずだが、実際の広さなんて知らない。気を抜いて迷子なんて御免だ。でも、コボルドがいるなら話が違う。精神的に大分楽になった。
「よし、行くか。次はギンコも前に出てもらうからな」
「ぐるぅ」
俺は、歩きながら戦術を考える。
リープとギンコは攻撃役、コボルドには盾役をやってもらうか。ギンコには力を7ポイント渡してある。俺の力は今、最低値の1しかない。
今しがた考えた戦術を、念話で四体に伝える。ギンコは近接だから特に詳しく説明した。リープは慣れたものだし、コボルド2体はやる気に満ちてる。
洞窟を進むと横穴があり、覗くと小部屋になっているようだ。コボルドもいる。今度は3体、俺は合図する。
まず、リープの奇襲が棍棒を持った1体を吹き飛ばす。すぐにコボルドが、敵を抑えに向かって、一対一の状況を作り出す。狙い通り。
ギンコが床を這うようにして敵の側面へ回り込むと同時に、鋭い爪で首を描き切った。残りの1体もギンコに任せよう。
難なく処理したギンコ達を労おうとした時だった。
「グガアッ」
「うおっ」
部屋の入口から1体のコボルド襲い掛かってきた。しかも嚙みつきかよ!ガチンッ!耳元から硬質なものがぶつかる音が聞こえた。
何とか横に転がりながら回避し、ギンコから力を回収して立ち上がる。目の前の敵を見る。なんか野性的なコボルドだな。さっきの奴らより姿勢が低く、顎が発達しているようだ。
俺は危険は冒さないぞ。
「コボルド!2人であいつに体当たりしろ!リープはそこを狙え!」
危機的瞬間だったからか、声に力が入ってしまう。
2体の突進を受けて牙コボルドは耐えられず、後方に勢いよく転がった。リープが魔法で狙うが、思いの外牙ゴブリンが転がって外してしまう。まだ俺もいるぞ。
「ふんっ!」
敵が立ち上がる前に、勢いよくナイフを振り下ろす。その一撃で止めが入ったようだ。体が霧散し、魔石を残して消えていった。
1話目の主人公の初期値に矛盾があったので修正してます。
※アビス・コントロール ~魔魂術士の異界探訪~ をお読みいただきありがとうございます。
※面白いと感じてくれた方は是非『ブックマーク』と『いいね』で応援よろしくお願いします。