第7話 F級ダンジョン~大縞猫~
放課後を使って、ダンジョンに入る準備を2日で整えた。
プロテクターを買いにモールに足を運んだ際、両親の残してくれたお金を、少しだけ使わせてもらった。
武器を買うには、探索者証が必要だが、防具類は不要だ。
軽くて頑丈な異界の魔木で作られており、鉄の刃も防ぐ。手の甲まで覆ってくれるので、殴りでも活かせそうだ。両手足四ヶ所だけで12万したが、お店のおじさんが2万も値引いてくれた。ありがたい、お礼を言って店を出た。
リープ以外の戦力補充もした。ほとんど大鼠で、索敵に使うつもりだ。1匹、猫の魔獣を見つけたのは幸運だった。従魔は全部で10体になった。
全体は明るい灰色で、黒い縞模様が特徴。雌だが、かっこいい顔立ちをしている。魔物に変化した影響だろうか。体長は70センチもあって、結構デカい。尻尾を含めたら1メートルを超える。
先日の奴かは分からないが、こいつは昼寝していたところを仕留めた。害がない上、昼寝中だったから、少しだけ罪悪感が募る出来事だった。
能力はこの通り。
【種 族】 大縞猫〈魔猫〉雌
【名 前】 ギンコ
【ランク】 —
【レベル】 1
【 力 】 3
【耐久力】 2
【素早さ】 6
【魔 力】 2
【体 力】 4
【知 力】 2
【スキル】 風魔法1 瞬間加速1
ギンコも風魔法が使える上、高い素早さと加速系のスキルまで持ってる。そりゃ逃げられる。明るい灰色がシルバーに見えるので、小さな虎の様な見た目と合わせてギンコにした。
リープも少しだけ強くなった。
【種 族】 リープラット〈魔鼠・特異体〉雄
【名 前】 リープ
【ランク】 —
【レベル】 2
【 力 】 2
【耐久力】 3
【素早さ】 5
【魔 力】 5
【体 力】 3
【知 力】 5
【スキル】 風魔法1 跳躍1
2匹ともランク外だから、F級を倒せたらもっと成長するはずだ。
因みに、俺のステータスは変わっていない。スキルは増えたが...
【スキル】 魔魂術1〈魔魂空間 魔魂供給 魔魂解析〉
魔魂獣は現状、10体がMAXなようだ。術のレベルが上がれば増やせるだろうか?
ゲートが残っているかも確認済みだ。まだ発見されていないらしい。
◆◆◆◆◆◆
木曜日放課後。
19時には帰らないと、先生にどやされるな。今からなら、1時間強はいけるな。本番は土曜日だ。今日明日は、力試しとコボルドの従魔化がメインだな。奥に入る必要はない。
「よし、行くぞ」
「きゅ」「ぐるぅ」
ギンコは、にゃあとは鳴かない。体が大きいから、この鳴き声が似合ってる。
入る前に、リープとの供給はしておいた。ゲートに手をかざすと、体がスッと引き込まれた。
ここがゲートの中...なんというか緊張と興奮を同時に感じる。不思議な高揚感だ。
「まさか中学卒業前に、ダンジョンに入るとは思わなかったな」
ダンジョンは洞窟型のようだが明るい。薄暗さが少しあるくらいだ。入口の広間に敵はいない。広間から通路が、左右二方向に分かれている。通路は3,4メートルはあって、高さも3メートルはあるだろう。俺は左の道を選ぶ。
大鼠を呼び出し、1匹を先に行かせる。
「コボルドを見つけたら知らせてくれ」
言葉は分からずとも、意思は伝わるので問題ない。
まあ、5メートル後ろを歩いてるんだけどな。奇襲は怖い。
『キュキュッ』
敵を見つけたな。
少し開けたT字路に、2体が座り込んでいる。体長130センチ程か。こいつら狗頭なのに鼻は利かないらしい。大鼠にも気づいていない。チャンスだ。
『リープ、1体は任せた。もう一体は俺がやる。ギンコはもしもに備えて、俺の後ろで待機だ』
『ききっ』『ぐるっ』
リープが風の弾を撃ち出し、座っていたコボルドの頭を吹っ飛ばす。気絶か死んだかは分からないが、俺も走り出す。もう一体はすぐに立ち上がり、ナイフをこちらに向けて威嚇してきた。
「グガガァッ」
俺はオーラを全開にし、コボルドに肉薄する。ナイフを左から右に横一文字に切りつける。狙いはコボルドのナイフだ。カーーン!と甲高い音と共に、コボルドの手からナイフが弾かれた。
「ふんっ!」
コボルドが怯んだ隙を逃さず、ナイフを首に突き入れる。そのまま腹を蹴り飛ばし、距離を取る。コボルドは、壁に体をしたたかに打ち付け、動かなくなった。
5秒程か。様子を窺っていると、コボルドの体が霧散し、魔石だけが残された。どうやらリープの方は、一撃だったらしい。
コボルドに止めを刺した時、身体がじわっと熱を帯びた。どうやらレベルが上がったようだ。
※アビス・コントロール ~魔魂術士の異界探訪~ をお読みいただきありがとうございます。
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