第6話 ゲート
※ステータス欄の表記が分かりにくかったので修正しました。
「結構、いないもんだな。鳥は一応いるけど、あれじゃあな...」
鳥の魔獣は遠くの空を飛んでいる。いくら何でも遠すぎて、風魔法でも届かない。今のところ、出会ったのは鼠だけだぞ。その鼠も隠れていて、外には出て来ないようだ。夜行性なのか?
リープ達も反応してないし、この辺りにはそもそもいないのかもな。
「ん?どうした大鼠達」
前を歩いていた3匹が足を止めて、少し先の曲がり角の方を警戒している。何かいるっぽいな。
「リープ、あの角に向けて魔法を撃ってくれ」
指示を受けて、リープが風の弾を撃ちこむ。
「キシャアアッ」
突然の襲撃に驚いたのか、悲鳴に加えて、ズザザッと音が聞こえた。逃げたな。声の感じは猫っぽかった。
「追うぞ!みんな」
急いで後を追うが、角を曲がった時には、姿は見えなくなっていた。流石猫の魔獣、すばしっこい。もったいないけど仕方ない。今日は素直に帰るか...
廃墟群の壊れた自販機の横に、俺はあるものを発見した。
「...これってゲートじゃん」
人一人分程の黒い穴が、緩やかに渦巻いている。まだ新しく、開いたばかりで不安定のようだ。
これ、どうしようか...
◆◆◆◆◆◆
「みんなこの空間に入ってくれ」
俺はリープ達の前に白いホールを開く。
こいつらをそのまま連れてはいけない。下の子達が騒ぐだろうし、先生の許可も無いしな。それにリープは見た目がかわいい。揉みくちゃにされたら可哀そうだ。大鼠達もペットって感じではない。
魔魂獣には専用の待機場所がある。この魔魂空間、どうやら俺は入れないらしい。中はどうなってるんだ?白い空間しか見えないが...
便利だな、このスキル。中で回復もするらしいし、これで物も持ち運べたら良かったんだけどな。これ以上は贅沢か?
部屋に向かう途中で美月と武が話しかけてきた。
「あんたどこ行ってたのよ?」
「ああ、結界の外でモンスターと戦ってきたんだ」
「え?そんなことやってたの?危ないんじゃ...」
「ランク外の奴さ。どうせ通らなきゃいけない道だろ。早く経験しておきたかったし、今日は都合が良かったんだよ」
狩りのことはいずればれるし、今のうちに話しておこう。
「ふぅん、ランク外でも魔獣なんでしょ?強かった?」
「大鼠ならかなり弱かったぞ。普通の動物と大して変わらなかったし。たぶん、F級も何とかなると思うぞ」
「そうなの?」
「でも、無茶したらダメだよ、暁人」
「ああ、分かってるって。じゃ、風呂入って来るわ」
湯船につかり、今日の出来事を反芻する。
初日にしては、なかなかの戦果だな。リープを見つけたのはかなり大きい。さっきのは冗談じゃなく、風魔法を使えば、F級でも安全に倒せるはずだ。
リープのように魔魂術を使えば、ランク外でも戦えるモンスターは他にもいるかもな。
収穫はもう一つ、偶然見つけたゲートのことだ。ゲートは簡単に言うと、異世界に繋がってる。30年前に開いた巨大なゲートは、文字通り異世界に繋がっていたそうだ。
日本は5つの内、2つの巨大ゲートの管理に成功して、ゲートの向こうに前線基地まであるらしい。二つのゲートは同じ世界に通じているようだ。いつか行ってみたいな、異世界。
今回見つけたゲートは、ダンジョンだな。地球のダンジョンとは、中の傾向が違うと聞いたことがある。巨大ゲート以外は、ほぼダンジョンに通じているらしい。
ゲートが危険な理由は、安定化した際、中からモンスターが出てくるからだ。早めに核を破壊して、閉じるのがセオリーだ。例外として、資源目的だったり、修練向けと判断されたゲートは、協会が管理している。
因みに、安定化前でもアビスの力で此方からは自由に出入り出来る。
俺が収穫って言ったのは、ゲートに触れた時、またもや能力が解放されたからだ。
1日に何回も、同じメッセージを見て食傷気味だ。能力が解放されても、俺自身が強くなっているわけじゃない。元々備わっていた機能だろ?そんなことを考えていると...
『 【コボルド族の住処】
・ランク・F
・洞窟型
・主な種族:コボルド族
・安定化まで残り 9日‐5時間 』
メッセージが流れてきた。ゲートの情報が分かるだと?事前に危険度やモンスターの傾向が分かるのはかなり有益だ。おまけに安定化の時間まで、不満が一気に吹き飛んだ。
ゲートと魔魂術の関係性は謎だが、ダンジョンに行けば何かわかるかもしれない。
F級は最低ランク。油断しなければ問題ない。
「9日もあるなら、行くしかないよな。俺がダメな時は、安定化前に協会に知らせればいい」
そういえば今日、誕生日だったな。魔魂術、いいものを貰ったな。ありがとうアビス神。
因みに、夕食にも鉄頭の肉が出てきた。武達がお願いして貰ってきたそうだ。みんな大喜びしていたな。2人ともありがとう。
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※アビス・コントロール ~魔魂術士の異界探訪~ をお読みいただきありがとうございます。
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